2014 Fiscal Year Research-status Report
難治性頭頸部癌に対する腫瘍溶解性センダイウイルスによる治療効果
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26462626
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
山下 拓 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 准教授 (00296683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨藤 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (80327626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、甲状腺未分化癌株、舌扁平上皮癌株に対しrSev/dMFct14(uPA2)-GFP(バイオナイフ)の抗腫瘍効果およびそのメカニズムについてin vitroで検討した。まずバイオナイフの抗腫瘍効果発揮の前提となる腫瘍細胞株のuPA活性の確認のため、甲状腺未分化癌細胞株KHM-5M, 8505c, 8305c、頭頸部扁平上皮癌細胞株Fadu、HSC-3、HSC-3-M3、OSC-19について、uPA activity assay kit を用いてuPA 活性の測定を行った。FaduにおいてはややuPAが低かったが、それ以外のすべての細胞株において高いuPA活性を示し、バイオナイフの良いターゲットとなりうることが確認された。この結果をもとにバイオナイフのin vitroでの抗腫瘍効果をWST-8assayを用いて検討した。甲状腺未分化癌細胞株全て、頭頸部扁平上皮株のuPA活性の低かったFaduを除くすべての細胞株において、バイオナイフによる著明な殺細胞効果が証明された。またバイオナイフの殺細胞の機序について、位相差顕微鏡観察、蛍光顕微鏡観察およびタイムラプス撮影により理論通りの癌細胞細胞融合、巨細胞化が確認された。次に甲状腺細胞株KHM-5M, 8505c, 8305cを用いてuPA阻害剤PAI-1投与下に細胞培養を行ったところ、バイオナイフの殺細胞効果が著しく低下することも確認され、バイオナイフの効果発現でのuPA活性の重要性が確認された。さらに汎caspase 阻害剤z-VAD-FMKの投与下に細胞培養を行ったところ、バイオナイフによる殺細胞効果に著しい低下がみられた。このことからバイオナイフの抗腫瘍作用の一機序として、直接の癌細胞破壊のみならず、アポトーシス誘導の機序もあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、癌治療の新しい手段として期待される、悪性腫瘍に選択的に強発現しているuPAをターゲットとした抗癌作用を有する組換え腫瘍溶解性センダイウイルス(バイオナイフ)の頭頸部癌に対する前臨床段階での有用性をin vitroおよびin vivoで検討し、そのメカニズムの検討や、効果的な投与方法、投与量を決定することにある。3年計画の初年度である本年度はin vitroでの有用性やメカニズムの検討を終了することを目標としていた。今回、甲状腺未分化癌および頭頸部扁平上皮癌に対するin vitroでの強い抗癌細胞効果、uPAを介した腫瘍選択性、殺細胞のメカニズムである腫瘍溶解・巨細胞化およびアポトーシス誘導についていずれもpositiveな結果を得ることができた。これにより研究計画の初年度の目標(in vitroでの検討)はおおむね達成したと考えられ、この結果をもとにin vivoでの検討に速やかに移行できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度以降はバイオナイフのin vivoでの効果発現を、甲状腺未分化癌および舌扁平上皮癌のヌードマウス同所移植モデルを用いて検討したい。バイオナイフの投与量、投与方法、投与間隔、回数などを検討し、抗腫瘍効果、体重維持や生存期間延長効果を確認することを目標とする。センダイウイルスは一般に宿主ゲノムに組み込まれることがなく、全身への副作用が極めて少ないことが知られているが、ヌードマウスモデルにおいても副作用の発現がないか、全身へのセンダイウイルスベクターの播種がないか、マウスの行動観察や血液データ、各種臓器のでのPCRによるセンダイウイルスの検出を通して、臨床応用を前提とした副作用の評価も行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に、甲状腺未分化癌のin vitroでの結果は報告した。頭頸部癌扁平上皮癌でのin vitroでの成果についてまとめたものについても本年度報告予定であったが、結果が得られたのが年度末にまでずれ込んだため本年度報告まで至らず、その分の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、頭頸部扁平上皮癌についてのin vitroの結果について電子顕微鏡写真の撮影を追加した上で、次年度に発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てたい。
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