2015 Fiscal Year Research-status Report
後発白内障における水晶体上皮間葉系移行と水晶体再生制御機構の解明
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26462672
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
久保 江理 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10262619)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水晶体上皮細胞 / 上皮間葉系移行 / トロポミオシン |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス水晶体上皮細胞(LEC)は、TGFβ投与によりTpm発現は上昇し、EMTが誘導され、細胞内にストレスファイバーを形成する。このTpmの、細胞のストレスファイバー形成および遊走能との関与を証明するために、以下の実験を施行した。GFP-Tpm1αまたは2βプラスミドのマウスLECへのトランスフェクションによりTpmを過剰発現させ、細胞内ストレスファイバー形成を観察した。GFP- Tpm1αまたは2βの過剰発現のみではマウスLECのストレスファイバーの形成は見られず、同実験系にTGFβ2を添加した場合ストレスファイバーが誘導され、TGFβ2±FGF添加した場合ストレスファイバーは抑制された。また、マウスLECのGFP-Tpm1αまたは2βの過剰発現により、TGFβ2添加による細胞遊走が増加することが観察された。 前年度、作成したCPSPR-CAS9システムゲノム編集技術によるTpm2βノックアウト(KO)マウスの実験を開始した。ホモのTpm2βKOは胎生致死であったため、ヘテロのTpβmKOマウス(Tpm2β+/-)を使用した。このTpm2β+/-の後発白内障(PCO)モデルとして、水晶体に針で穿刺をして上皮間葉系移行(EMT)を誘導する創傷治癒モデルを用いた。Tpm2β+/-の水晶体では、穿刺部位における線維芽細胞様増殖変化、EMTがワイルドタイプ(WT)に比べて少なく、その部位でのTpm2βとα平滑筋アクチン(EMTマーカー)の発現も減少していた。 Tpm2β+/-の水晶体では、16週齢以降より水晶体上皮下の表層線維細胞の膨化と配列の乱れ、空隙が観察され、週齢が上がるにつれてその変化が進行した。 Tpm1αは、現在水晶体特異的コンディショナルKO作成中で、現在産仔が2匹得られたため、次年度より解析を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画より、多少の変更部分はあるがおおむね順調に研究計画が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
Tpm2β+/-の水晶体組織変化をより高齢のマウスで観察し、Tpm2βの正常水晶体線維細胞への分化との関わり、線維のヘキサゴン形成との関係などN-カドヘリン組織染色などを用いて観察する。現在56週齢まで確認しているが、今後より高齢の水晶体の変化を継時的に観察していく予定である。創傷治癒モデルのみではなく、実際に水晶体摘出術を行い、PCOの変化を観察する。 Tpm1αコンディショナルKOマウスのジェノタイピング、解析を進める。Tpm2β KOマウスと同様に創傷治癒モデル、PCOモデルにおけるEMTの抑制効果を解析する。水晶体の組織像も観察する。これによりTpm1αとTpm2βの水晶体での機能解析及び後発白内障発症との関与が明らかになる。 FGF2のTpm発現抑制機構の解明を行うために、培養マウスLECとヒトLECをもちい、FGF2刺激(0-10ng/mL)によるRas-ERK, MAPK経路の活性化を抗ERK,p-ERK抗体を用いたプロテインブロット法により確認する。10分-24時間までの活性化の経時変化を観察する。活性化される因子を選定の後、各種インヒビター(FR180204 など)によるTpm発現抑制効果を、プロテインブロット法にて確認する。この結果を踏まえてFGF2シグナルのTpm抑制の原因となる下流の因子を発見し、LECにおけるEMT抑制因子を解明し、PCO抑制因子となる可能性を探索する。
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Research Products
(6 results)