2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26462676
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
石子 智士 旭川医科大学, 医学部, その他 (10250565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロービジョン / PRL / 照明 / LED |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、黄斑に障害を有するロービジョン患者の視覚機能に及ぼす光の影響を明らかにすることを目的としている。 光量が視機能およびロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明のため、ロービジョンケアが必要な黄斑疾患を有する患者を対象として研究を行っている。この研究を始めるにあたり、旭川医科大学眼科外来に特殊検査のための予約枠を新たに設け、主に黄斑疾患専門外来と連携した体制を構築した。この特殊検査外来において、一般的な遠方視力検査、近見視力検査に加え、次の検査を行っている。読書視力、最大読書速度、臨界文字サイズといった読書の評価はMNREAD-Jを用い、明るさの異なる4条件下で評価を行っている。明るさは、一般的に読書に推奨されている500luxを基本として、それよりも明るい条件の2000, 5000, 7500luxとしている。なお、これらの検査の最中の動画を撮影し、視線の動きからPRL(preferred retinal locus)の評価を試みている。自覚的読みやすさの評価は、以上の検査終了後に行っている。この他、マイクロペリメトリーによるPRLと微小視野の評価、カラー眼底写真撮影による眼底像の評価、光干渉断層撮影による病変部断層像の評価を行っている。基礎的な準備実験を経て、年明けから特殊外来での検査を始めているが、現在までに、すでに10名(男性6名、女性4名、平均年齢76.2±9.21歳)に検査を施行した。症例数が目標に達した後、光量の違いにおける視機能の変化を検討する予定となっている。この検討により、ロービジョンエイド処方時の光に関する適切な条件、ならびに日常生活をおくる上で適切な光の環境条件が明らかになれば、ロービジョン患者の生活の質の向上に寄与するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光量が視機能およびロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、従来のロービジョン外来に加え、特殊外来を新設したことにより、すでに10名に検査を施行しており、従来の旭川医大病院眼科におけるロービジョン外来での年間のロービジョンエイド処方症例数と本研究開始後のこれまでの期間における対象者数から考えると、当初の計画以上に進展していると思われる。 光源の波長特性が視機能及びロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、現在明るい光量を確保できるLED光源のみで行っており、近日中にハロゲン光での光源下での評価を開始する予定である。 一方、光量がPRLに及ぼす影響の解明の研究目標に関しては、評価装置を開発するため、従来の眼底カメラにNDフィルターを用い、光量の測定方法の検討と撮影方法を検討した。しかし、赤外光による評価が不可欠であり、赤外光の光源を有している眼底カメラでは、構造上目的とした検査をするためには大幅な改良が必要であることが判明し、評価装置の開発に遅れが生じた。そのため研究を開始するにあたり、検査中の動画を撮影し、視線の動きからPRL(preferred retinal locus)の評価を試みる方法を一時的に採用している。 以上、本研究の初年度計画では3つの目標があるが、研究の主体となる目標については当初の計画以上に進展している一方で、当初の計画より遅れているものがあるため、達成度の総括として、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
旭川医大病院眼科外来に新設した特殊外来によって研究協力体制が機能し始めており、光量が視機能およびロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、次年度もこのまま症例数を伸ばしていきたいと考えている。 光源の波長特性が視機能及びロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、新しくハロゲン光源装置が届き次第、評価を開始する予定である。 光量がPRLに及ぼす影響の解明の研究目標に関しては、種々の検査結果から検討の結果、眼底カメラを改良した装置での限界があることが判明し、評価装置の開発に遅れが生じた。しかし、走査レーザー検眼鏡を基盤とした装置では、これらの評価ができると考えられ、この方式による評価装置の開発に取り組んでいる。その装置が完成するまでは、一時的に採用している方法で、PRLを評価していく。 症例数が目標に達した後、光量ならびに光源の違いにおける視機能の変化を検討する予定となっている。
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Causes of Carryover |
光量がPRLに及ぼす影響の解明の研究目標に関して、PRLの評価装置を開発するため、その装置の開発とデータ保管ならびにデータ解析に関わる物品費を計上していた。しかし予備実験の段階において、従来の眼底カメラにNDフィルターを用い、光量の測定方法の検討と撮影方法を検討したところ、赤外光による評価が不可欠であり、赤外光の光源を有している眼底カメラでは構造上目的とした検査をするためには大幅な改良が必要であることが判明し、評価装置の開発に遅れが生じた。そのため、評価装置の開発は継続しながらも、研究開始にあたり、当初の計画とは異なった評価法を一時的に選択することとした。 初年度としては、これらの費用は翌年度に繰越し、現在進めている新しい評価法の開発費用に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光量がPRLに及ぼす影響の解明の研究目標に関して、計画していたPRLの評価装置の開発に遅れが生じた。そこで、初年度に計上していたデータ保管ならびにデータ解析を含めた装置開発に関わる経費は次年度に繰り越すこととし、次年度使用額に組み入れて使用する予定である。 さらに、現在、研究に用いている光源とは波長特性の異なる光源の購入に使用し、光源の波長特性が視機能及びロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に取り組んでいく予定である。
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