2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26462676
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
石子 智士 旭川医科大学, 医学部, その他 (10250565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロービジョン / PRL / 照明 / LED |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、黄斑に障害を有するロービジョン患者の視覚機能に及ぼす光の影響を明らかにすることを目的としている。 本研究全体における対象者は、ロービジョンケアが必要な黄斑疾患を有する患者であるが、今年度は主に加齢黄斑変性を有する患者に関して研究をまとめた。対象となる者は39名(平均年齢78.6±7.6歳)であった。読書能力は、読書視力、 臨界文字サイズ、最大読書速度で評価した。光量が視機能に及ぼす影響の解明のため、500, 2000, 5000, 7500luxの4種類の明るさを検査の際の照度条件とした。この結果、読書視力のみが照度の上昇に伴い有意に向上した (p<0.01)。500luxでは他の照度に比べ有意に低下していた(p<0.01)。次に、照度と黄斑部機能による読書能力の差を検討するため、これらをマイクロペリメトリーの結果から中心暗点群と非中心暗点群に分類したところ、読書能力は全ての照度で中心暗点群が非中心暗点群に比べ有意に低下していた(p<0.05)。読書視力のみが両群ともに照度間で有意差を認め(p<0.05)、照度上昇に伴い向上傾向を認めた。また非中心暗点群では500luxとそれ以外の照度で有意差を認めた(p<0.05)。さらに、加齢黄斑変性の病型による読書能力の差を検討するため、眼科画像検査の結果から滲出型と委縮型に分類したが、すべての読書能力において両群間で有意な差は認めなかった。 加齢黄斑変性患者では、照度を一般的に読書に推奨されている500luxよりも上昇させることで読書視力は上昇し、その変化は2000lux以上で頭打ちになったことから、加齢黄斑変性患者の読書の際には、2000lux程度の照度が好ましいことが示唆された。また、照度による読書能力の変化は黄斑部機能の違いが影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を始めるにあたり、研究初年度に旭川医科大学眼科外来に特殊検査のための予約枠を新たに設け、主に黄斑疾患専門外来と連携した体制を構築した。その結果、加齢黄斑変性を有する患者だけでも、従来の旭川医大病院眼科におけるロービジョン外来での年間症例数から想定される対象者数を上回る対象者を得ることができた。光量が視機能に及ぼす影響の解明に関しては、加齢黄斑変性を有する患者においては、十分な対象者数を確保でき、検査結果をまとめることができた。 光源の波長特性が視機能及びロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、光量が視機能に及ぼす影響検討に目途がついたため、計画通り、明るい光量を確保できるLED光源と従来のハロゲン光源を用いて予備実験を開始したところである。 一方、光量が偏心視域に及ぼす影響の解明の研究目標に関しては、従来の眼底カメラを改良を断念し、デジタルカメラを用いて検査中の動画を撮影し、視線の動きから評価を試みる方法を一時的に採用していた。しかしながら、視線評価が現実的には困難であった。現在、視線キャプチャリングが可能なスクリーンベースのアイトラッカーを用いて、偏心視域の評価が可能か検討を行っている。 本研究の本年度の計画では、初年度計画に引き続き微調整を行いながら症例数を増やすことであった。研究の主体となる検討については当初の計画以上に進展している一方で、当初の計画より遅れているものがあるため、達成度の総括として、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
光量が視機能およびロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、今年度までに加齢黄斑変性に関する症例を十分確保することができた。そのため現在、近視性網脈絡膜変性など他の黄斑疾患を有する症例を中心に評価を行っており、疾患における視機能変化の特徴と疾患ごとの違いについて検討を加える予定である。旭川医大病院眼科外来に新設した特殊外来によって研究協力体制が確立しており、このまま症例数を伸ばしていけると考えている。 光源の波長特性が視機能及びロービジョンエイド処方に及ぼす影響の解明に関しては、LED光源と従来のハロゲン光源を用いて予備実験を開始したところである。実験条件と評価方法の検討が終わり次第、ロービジョン患者を対象として評価を始める予定である。 光量がPRLに及ぼす影響の解明の研究目標に関しては、種々の検査結果から検討の結果、眼底カメラを改良した装置での限界があることが判明し、走査レーザー検眼鏡を基盤とした装置を用いるアイディアを出したものの、具体的な開発は困難であった。そこで、外部からの評価を行い、網膜上の位置を推定する方法に切り替え、検討を行っている
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Causes of Carryover |
初年度に繰り越した資金、データを解析するための物品購入は済んでおり、この発表のための準備は整えることができた。しかしながら、光源の異なる照明器具は予備実験段階であったため、限られた種類の照明装置しか購入しておらず、その購入が遅れている。また、本研究の内容は発表する段階であり、論文執筆はまだ着手し始めたところであるため、論文執筆関連の予算が使われていない。さらに、謝金が発生することもなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費に関しては、データ解析、管理のための物品を購入する予定で、さらに、現在行っている予備実験の結果から比較する光源の条件が決まり次第、照明器具を購入する予定である。 次年度以降は、研究発表を精力的に行う予定であり、また、論文執筆にかかわる経費も支出が必要となる予定である。
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Research Products
(1 results)