2014 Fiscal Year Research-status Report
上皮幹細胞維持機構(幹細胞ニッチ)の機構解明とその再現
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26462685
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 竜平 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄付講座准教授 (70535278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 角膜上皮 / 幹細胞ニッチ / N-cadherin / Nrf2 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに角膜上皮幹細胞の特性に関して研究を行ってきたが、細胞間接着分子のN-cadherinが角膜上皮幹細胞に特異的に発現することを見出し、N-cadherinの幹細胞維持機構(幹細胞ニッチ)への関与を示唆した。一方で近年、我々は生体防御機構を制御するNrf2-Keap1システムを介した生体防御機構が、角膜創傷時における角膜上皮再生過程に、深く関与することを示してきた。そこで本研究においては、N-cadherinならびにNrf2を介した生体防御機構の角膜上皮幹細胞ニッチにおける役割を解明することを目的とした。本年度においては、角膜上皮幹細胞の培養環境がN-cadherin発現へ及ぼす影響ならびに、Nrf2ノックダウンによる角膜上皮幹細胞マーカーの発現への影響について検討を行った。角膜上皮培養において、従来法の3T3フィーダー細胞と血清培地を用いた共培養系においては、N-cadherinは3-5日以内に速やかに失われた。また、フィーダーを用いない無血清角膜上皮培地(CNT20培地)を用いた場合においても同様にN-cadherinが失われた。一方、特定の無血清培養条件においては、N-cadherinの発現を培養皿上で再現可能な条件を見出すことに成功した。さらに、この培養条件においては、角膜上皮の分化マーカーであるK12やK3の発現が同時に上昇した。本培養系の最適化に並行して、N-cadherin発現に寄与する因子の特定および分化マーカー発現増加との関連性についての詳細な検討を行っている。Nrf2ノックダウン実験に関しては、Nrf2のノックダウンにより角膜上皮幹細胞マーカーのdelta-N p63発現量が低下することを確認した(N=3)。一方、N-cadherinは検出できなかった。今後、Nrf2とN-cadherinとの関係について、新たな培養系を用いた方法等を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通り順調に進んでいる。当初予定していたN-cadherin発現を指標とした角膜上皮幹細胞の培養系の検討ならびに、Nrf2が及ぼす幹細胞マーカー発現への影響について調べることができた。特に培養系に関しては、これまで再現することが困難であったN-cadherin発現の保持に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
N-cadherin発現を指標とした角膜上皮幹細胞維持のための培養系検討に関しては、順調に検討が進められている。今後、検討する因子をECM、酸素濃度、サイトカイン、低分子阻害剤などを対象として検討を行う予定である。Nrf2ノックダウンの評価系に関しては、細胞株の場合は十分なノックダウンが可能であるが、初代培養細胞においては不十分であることが分かった。N-cadherin発現を検討するためには、初代培養細胞を使うことが望ましいため、この条件設定に関して再検討が必要と考えている。
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Causes of Carryover |
Nrf2ノックダウン実験において、当初の予定よりプラスミド導入効率が低く、それ以降の遺伝子発現解析の実験の一部を次年度に実施することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Nrf2ノックダウン後の角膜上皮幹細胞関連遺伝子の発現解析(q-PCRおよび免疫染色)を検討する。さらに、N-cadherin発現を指標とした培養実験に関しても、新たな知見が得られているため、培養実験および発現解析実験への使用を行う予定である。
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