2014 Fiscal Year Research-status Report
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26462697
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
渡邊 交世 杏林大学, 医学部, 講師 (90458901)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、18-25塩基からなるmicroRNA (miRNA)が標的mRNAの発現を制御することで発生・分化などの様々な生命現象を制御していることが明らかとなってきた。最近、我々はぶどう膜炎の病態におけるmiRNAの役割について検討するためヒト難治性ぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 (EAU)を用いてEAUの発症初期、炎症極期、消退期におけるmiRNAの発現について検討を行った。その結果、炎症極期ではmiR-223、miR-142-5p、miR-146aなどのmiRNAの発現上昇がみられた。一方で、miRNA-181a、183、124、331の4つのmiRNAの発現が免疫後14日目で低下していることを確認した。 そこで本研究課題ではEAUの病態を抑制的に制御することが予想されるmiRNA-124とmiR-146に着目し、これらのmiRNAをEAUを発症したラットの眼内に投与することでEAUの抑制効果が得られるか検討することを目的とした。 平成26年度はEAUの発症初期にmiR-124を硝子体内に投与し、EAUの臨床スコアを評価した。実験群として1)EAU誘導のみの群(無処置群)、2) EAU誘導+control miRNA投与群、3) EAU誘導+miR-124投与群の3群を作成し、炎症初期である免疫後11日目で硝子体内投与を行った。免疫後13日目、15日目においてEAUの臨床スコアを評価したところ、3群間に有意差は認められなかった。また免疫後17日目の臨床スコアでは無処置群は平均2.25点、control miRNA投与群で平均2.20点、miR-124投与群では平均1.40点と低い傾向はあったものの有意差は認められなかった。今後はmiR-124の他に抗炎症効果が期待されるmir-146aやmir-181aの硝子体投与によりEAUの炎症抑制効果がみられるか検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実験計画では難治性ぶどう膜網膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を用いて1) 定量PCR を用いたmiRNAの発現解析の検討、2)miRNA-124の硝子体内投与後の眼内組織内におけるmiR-124の局在の検討、3) miRNA-124の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討、4) miRNA-146の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討の4点について予定した。 1) についてはマイクロアレイの実験で免疫後14日目で発現低下が確認されたmiRNA-181aのmiRNAの発現 について検討を行った。その結果、免疫直前の発現量を1とした場合、免疫後7日目で発現比が0.2と著明な低下がみられたが、14日目には0.4、21日目には0.6とEAUの経過に伴い、徐々に増加がみられた。miRNA-181aはマクロファージ、単球、アストロサイト、 T細胞に発現し、IL-1やTNF-αを標的とすることが知られており、miRNA-181aをEAUの炎症極期に眼内に補充することで炎症の進展が抑制できる可能性が考えられる。 2) についてはmiRNA-124をCy3で標識し、硝子体内投与24時間後に眼球を摘出、パラホルムアルデヒドにて固定後、miR-124の局在をconfocal microscopy用いて検討した結果、網膜外層、特に視細胞層や、水晶体嚢に強く染色がみられた。 3)についてはmiRNA-124をKOKEN社のアテロコラーゲンと混合し、抗原接種11日目にラット硝子体内に投与し、炎症抑制効果を検討したところ、投与後2、4、6日目のいずれの時期においてEAUの臨床スコアの有意な低下はみられなかった。そこでmiRNA-124の投与ポイントを抗原接種10日目に変更し、同様の検討を行ったが、EAUの臨床スコアの低下が認められなかった。 4)は上記1)から3)までの実験に時間を要したため施行できなかった。以上の結果より今年度予定していた実験の7割程度達成できたと考える
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の実験計画では26年度と同様に、実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を用いて1) miRNA-146の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討、2) miRNA-181の硝子体内投与によるEAUの抑制効果について検討する予定である。 1) について我々は以前にラットEAUの炎症極期の網膜においてmiRNA-146の発現が、免疫前のラット網膜に比較して4倍程度上昇していることを確認した。これまでの報告では単球やマクロファージに発現しているToll like receptor 4 (TLR4)からの刺激によって誘導されたmiRNA-146がNF-kBの細胞内シグナルを抑制的することで炎症反応を制御することが知られている。そこで抗原を接種後9-10日目にアテロコラーゲンと混合したmiRNA-146を硝子体内投与、細隙灯顕微鏡にて臨床スコアを評価する。また炎症抑制効果を確認後は眼球を摘出し、網膜におけるIL-1、IL-6、TNF-α、MCP-1の発現をELISA法、定量PCR法にて解析する。 2)については今年度の実験にてmiRNA-181がEAU発症初期から低下していることを定量PCRにて確認した。miRNA-181aはマクロファージ、単球などの細胞に発現し、IL-1やTNF-αを標的とすることが報告されており、miRNA-181aを眼内に補充することにより、EAUの抑制効果が期待される。そこで抗原を接種後9-10日目にアテロコラーゲンと混合したmiRNA-181aを硝子体内投与、細隙灯顕微鏡にて臨床スコアを評価する。また炎症抑制効果を確認後は眼球を摘出し、網膜におけるIL-1、IL-6、TNF-α、MCP-1の発現をELISA法、定量PCR法にて解析する。
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Causes of Carryover |
平成26年度の実験計画では1) 定量PCR を用いたmiRNAの発現解析の検討、2)miRNA-124の硝子体内投与後の眼内組織内におけるmiR-124の局在の検討、3) miRNA-124の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討、4) miRNA-146の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討の4点について予定した。 特に2)のmiRNA-124の局在の確認、また3)の投与実験においてEAUの十分な抑制効果が得られなかったため結果の追試に時間を要した。そのため4)の実験を施行できず、当初予定していた使用額に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の実験計画では26年度と同様に、実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を用いて1) miRNA-146の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討、およびmiRNA-146の局在について免疫組織染色にて検討、2) miRNA-181の硝子体内投与によるEAUの抑制効果の検討、およびmiRNA-181の局在の検討を行う予定である。また両方の実験系において眼局所における炎症性サイトカイン、ケモカインの発現について定量PCR、ELISA法を用いて検討する。上記実験計画施行のため動物(ラット)の購入、各種試薬、ELISAキットなどを購入予定である。
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Research Products
(8 results)