2015 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫を薬で治す!~DDS技術を駆使したVEGF-C徐放治療の開発
Project/Area Number |
26462722
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 洋志 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00399924) [Withdrawn]
林 利彦 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432146)
舟山 恵美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10533630)
七戸 龍司 北海道大学, 大学病院, 医員 (30640346)
山本 有平 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70271674)
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 助教 (90706558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / リンパ管新生因子 / 炎症性応答 / 低酸素応答 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス後肢リンパ浮腫モデルにおいては、浮腫の程度に応じてVEGF-CやVEGFR-3などの内在性のリンパ管新生因子の発現が変動していることが確認できた。浮腫組織において拡張したリンパ管の増生を認めるが、上記の内在性のリンパ管新生因子の発現が、実際に鬱滞したリンパ液をドレナージするリンパ管の新生につながっているかは未だ不明である。VEGF-C単体投与のみでは、リンパ浮腫を改善させるための機能的なリンパ管を誘導することが困難であることを示唆する結果が得られている。リンパ浮腫は炎症を惹起し、炎症が慢性化すると浮腫の悪化や浮腫組織における線維化が進行するとされている。リンパ浮腫の基盤にある炎症プロセスの病態的意義については十分明らかとなっていないため、マウス後肢リンパ浮腫モデルを用いて、炎症性細胞の中で特にマクロファージがリンパ浮腫組織において果たす役割について検討した。リンパ浮腫を呈した後肢の皮膚組織を採取し、免疫組織学的染色、ウエスタンブロッティングによってマクロファージ(F4/80)の発現の解析を行った。また、VEGF-CとLYVE-1の発現解析も行い、炎症性病変とリンパ管新生の関連について検討を行った。マウス後肢のリンパ浮腫組織において対照群と比較してマクロファージが多く集積・浸潤していることが確認された。マクロファージが高度に浸潤している浮腫組織では対照群と比較してVEGF-CとLYVE-1の発現が有意に上昇していた。マクロファージはリンパ管新生因子であるVEGF-Cの産生に関与していることは過去報告されている。VEGF-Cによる刺激でリンパ管新生が起こった結果として、局所浮腫・炎症性細胞浸潤の消散や抗原提示細胞の移動が促進するとされている。今回得られた知見から、マクロファージ浸潤を含む炎症応答がリンパ浮腫の病態に大きく関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロファージ浸潤を含む炎症応答がリンパ浮腫の病態に大きく関与していることが示唆される結果を得ている。リンパ浮腫における炎症応答は、低酸素で誘導される因子とも密接な関係にあることを示唆する所見が得られつつある。炎症応答はリンパ浮腫における線維化も進行させる働きがあるため、リンパ浮腫における炎症プロセスを制御することで、鬱滞したリンパ液をドレナージする機能的リンパ管を誘導しやすい微小環境を構築できる可能性がある。上記のように、リンパ浮腫において生じる複雑な病態が解析されつつあり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
VEGF-C単体投与のみでは、リンパ浮腫を改善させるための機能的なリンパ管を誘導することが困難である知見が得られつつある。機能的リンパ管を誘導するためには、炎症応答を基盤とするリンパ浮腫の病態を解析することが、まず重要であると考えられる。リンパ浮腫組織の微小環境におけるマクロファージを含む炎症性応答のメカニズムを解明することで、リンパ浮腫の治療につながる因子を同定していく。炎症に深く関わる転写因子であるnuclear factor-kappaB (NF-κB)の発現についても解析していく予定である。最終的には、機能的リンパ管の効率的な誘導を目標とする。
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Causes of Carryover |
本研究を進捗・遂行させる上で必要な試薬(抗体など)は今後購入予定だが、本年度の予算のみでは最終調整が困難であったため、次年度予算と合わせて使用することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて、研究遂行に必要な機器または試薬を購入する予定である。また、動物実験に必要なマウスの購入を適宜予定しており、実験用動物の維持・管理費にも使用する予定である。
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