2015 Fiscal Year Research-status Report
プロテインホスファターゼPP2Aによる骨形成と間葉系細胞分化機構の解明
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26462786
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡村 裕彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (20380024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽地 達次 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (50156379) [Withdrawn]
吉田 賀弥 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (60363157)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / 蛋白質脱リン酸化 / PP2A / 間葉系細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な計画目標は、脂肪細胞におけるPP2A Cαの役割について調べることであった。前年度までにPP2A Cα発現が骨芽細胞の分化において重要な役割をもつことを明らかにした。そのためPP2A Cαが骨芽細胞以外の間葉系細胞である脂肪細胞の分化に関与するか調べた。マウス間葉系前駆細胞 (C3H10T1/2) にレンチウイルスベクターを用いてPP2A Cα特異的shRNAを導入し、その発現を恒常的に抑制した細胞株を樹立した。作製した細胞を脂肪細胞分化誘導培地で培養し、Oil red O染色を行った。分化誘導した細胞からRNAを抽出し、脂肪分化マーカーの発現を調べた。これらの結果をコントロールの細胞と比較し、間葉系前駆細胞から脂肪細胞への分化におけるPP2A Cαの役割を調べた。その結果、PP2A Cαの発現およびPP2A活性は脂肪細胞の分化に伴って低下した。shPP2A 細胞ではPPARγ, C/EBPαおよびAdiponectin等の脂肪分化マーカーの発現が増加し、脂肪細胞分化能が亢進していた。PPARγの発現抑制によりshPP2A細胞の脂肪細胞分化能が抑制された。shPP2A 細胞では、Wnt10b発現の低下、GSK-3β活性の増加、β-cateninの活性低下が認められた。GSK-3β阻害剤はshPP2A細胞における脂肪分化マーカーの発現と分化能を抑制した。以上の結果から、PP2A Cα は、PPARγを含む転写調節因子の発現とWnt/GSK-3β/β-catenin経路を介して脂肪細胞の分化を調節する重要な因子であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画における本年度の主な計画目標は、脂肪細胞と軟骨細胞におけるPP2A Cαの役割について調べることであった。前年度は計画どおりに、骨芽細胞の分化におけるPP2A Cαの役割をを明らかにしたので、PP2A Cαが骨芽細胞以外の間葉系細胞の分化に関与するか調べた。マウス間葉系前駆細胞 (C3H10T1/2) にレンチウイルスベクターを用いてPP2A Cα特異的shRNAを導入し、その発現を恒常的に抑制した細胞株を樹立することに成功した。また、作製した細胞を脂肪細胞分化誘導培地で培養し、脂肪細胞への分化におけるPP2A Cαの役割を調べることができた。その結果、PP2A Cαの発現およびPP2A活性は脂肪細胞の分化に伴って低下すること、shPP2A 細胞では脂肪分化マーカーの発現が増加し、脂肪細胞分化能が亢進することを明らかにできた。また、当初の計画以上に、その分子機構についても調べ、PPARγの発現抑制によりshPP2A細胞の脂肪細胞分化能が抑制されること、shPP2A 細胞では、Wnt10b発現の低下、GSK-3β活性の増加、β-cateninの活性低下が認められ、GSK-3β阻害剤はshPP2A細胞における脂肪分化マーカーの発現と分化能を抑制することなどを解明できた。しかし、軟骨細胞分化におけるPP2A Cαの役割については、分化誘導条件などの設定に時間がかかってしまったことから、引き続き検討が必要である。そのため、区分は、おおむね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進んでいるため、大きな変更点はない。引き続き、軟骨細胞分化におけるPP2A Cαの役割について調べる。次年度の主な計画は、骨芽細胞のPP2A Cαが脂肪細胞分化に与える影響を調べる。shPP2A-Ob細胞およびコントロールの細胞とC3H10T1/2細胞または脂肪前駆細胞3T3-L1と共培養を行い、Oil red O染色を指標に脂肪細胞分化について検討する。また、骨芽細胞-脂肪細胞の直接の接触以外に骨芽細胞から分泌される因子が脂肪細胞分化に関与する可能性を確かめるため、共培養プレート (BD Falcon社) を用いる。このプレートではウェルの上方に 0.1 マイクロメーターの孔を有するインサートウェルが付属されている。インサート部に播種した細胞はこの孔を通り抜けることはできないため、直接接触による影響を排除できる。分泌される液性因子は孔を通り抜け、メディウムを介して下部の細胞に作用することが可能である。インサート部に骨芽細胞を、下方に脂肪前駆細胞を播種し、Oil red O染色を指標に脂肪細胞分化について検討する。また、細胞からRNAを抽出し、リアルタイムPCRを用いてPPARγやAdiponectinを含む脂肪細胞分化マーカーの発現を調べる。PP2A Cαの発現を抑制した骨芽細胞での遺伝子発現をマイクロアレイ解析したところ、脂肪酸結合蛋白Fabp3など脂肪代謝に関与する遺伝子グループが大きく変化していたので、骨芽細胞のPP2A Cαが脂肪細胞の分化に影響を与えることを示唆している。予想外の結果が出た場合は、他のサイトカインによる影響についても検討する。以上の実験により、骨芽細胞のPP2A Cα発現が脂肪細胞の分化・機能に与える影響について明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画で予定していた軟骨細胞の分化におけるPP2Aの役割についての解析が条件設定に時間がかかり、次年度にかかることとなったため。また、当初予定した実験がスムーズに進行したため、経費が一部節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
軟骨細胞の分化におけるPP2Aの役割についての解析をおこなうための培養用消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(12 results)