2014 Fiscal Year Research-status Report
デンタルバイオフィルムにおける病原因子の分子遺伝学的解明に関する研究
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26462801
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20247315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊介 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60206810)
渡辺 清子 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (70148021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Actinomyces naeslundii / 通性嫌気性グラム陽性桿菌 / バイオフィルム / 共凝集 / サイトカイン / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
破骨細胞分化誘導能および骨吸収能はBALB/cマウス骨髄細胞と破骨細胞分化支持細胞(MC3T3-G2/PA6)を共培養したものをペプチドグリカン添加群、Escherichia coli LPS添加群および無添加群 (コントロール) に分けて行い、破骨細胞分化誘導能は1週間培養後のTRAP陽性細胞数を、骨吸収能は象牙片入りプレート上に形成された骨吸収窩の面積を評価した。 炎症性サイトカイン産生能はチオグリコレート培地刺激で得たBALB/cマウス腹腔マクロファージに1 μg/ml、 10 μg/mlのペプチドグリカンまたは1 μg/ml LPSを添加してRT-PCR法によりInterleukin-1β (IL-1β)、Interleukin-6(IL-6)、Tumor necrosis factor(TNF-α)の発現を解析した。実験的歯周炎は3週令、Wistar系雄性ラット口腔内にA. naeslundiiまたはP. gingivalis菌液とカルボキシルメチルセルロースの混合菌液を接種し、最終感染日から34日後に上顎骨を採取して実体顕微鏡を用いた歯槽骨吸収量の測定と連続切片を用いたTRAP染色法による病理組織学的検索により評価した。 その結果、A. naeslundiiのペプチドグリカンはE. coli LPSと同様にコントロールに比べて有意な破骨細胞分化誘導能と骨吸収能が認められ、さらにマクロファージを刺激してIL-1β、IL-6、TNF-αの産生を誘導した。また実験的歯周炎においてもA. naeslundii接種群はP. gingivalis接種群と同様に顕著な歯槽骨吸収量の増加が認められ、TRAP染色像においても多数の破骨細胞とその直下に明瞭な骨吸収窩が確認された。 バイオフィルム形成にA. naeslundiiの果たす役割は大きく、線毛欠損株変異株の作製を行っている。菌体よりDNAを抽出し、PCRにて線毛遺伝子のクローニングを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、グラム陰性嫌気性菌であるP. gingivalisのLPSの構造解析と生物学的活性について検討を重ね、一方で、本菌の付着因子である線毛欠損変異株を作製し、P. gingivalisの線毛を介した付着性と歯槽骨破壊を指標にしたラットを用いた動物実験の確立に成功している。数種の口腔内細菌について、ラット口腔へ生菌を接種したところ、Actinomyces naeslundiiにP. gingivalisと同程度の骨吸収能が認められた。口腔感染症である歯周病は、単一感染でなく、多菌種による複合感染であり、特定のグラム陰性細菌だけでなく骨吸収誘発能を有するグラム陽性細菌が存在することが予備実験で明らかになった。歯周病はグラム陰性菌とグラム陽性菌とが混在して形成されるバイオフィルム感染症であり、その形成にグラム陽性菌が重要な役割を果たしていると考えられている。中でもActinomyces naeslundiiはバイオフィルム形成において共凝集活性を有し、グラム陰性菌の定着を補助する働きがあることが明らかにされた。また、実験的歯周炎においてもA. naeslundii接種群はP. gingivalis接種群と同様に顕著な歯槽骨吸収量の増加が認められ、TRAP染色像においても多数の破骨細胞とその直下に明瞭な骨吸収窩が確認された。今後、バイオフィルム形成にA. naeslundiiの果たす役割は大きく、線毛欠損株変異株の作製を行うと共に本菌の歯槽骨吸収に係わる役割と菌体成分について検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
外膜タンパク質やペプチドグリカン等の菌体成分を精製、骨吸収因子を明らかにすることと特異抗体を作製して、阻害実験によりその成分の重要性を確立する。また、相同組み換えを用いて、遺伝子変異株を作製し、ラットを用いた歯周炎モデルにより親株と欠損株での比較検討を行うと共に他菌種との凝集活性と骨吸収誘導能やサイトカイン誘導能について検討する。 今後、他菌種との共凝集能、菌体の表層解析、歯肉上皮細胞や唾液タンパク質への付着能といった線毛の機能解析を行うとともに、実験的歯周炎モデルラットを用いた感染実験により、線毛欠損株と親株を口腔内接種により感染させ、歯槽骨吸収量と破骨細胞の出現誘導について評価および検討を進める予定である。
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Research Products
(8 results)