2015 Fiscal Year Research-status Report
In vivoミクロイメージングによる唾液腺細胞のCa2+応答と分泌機構の解明
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26462821
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00305913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 久淑 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (00275489)
森田 貴雄 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20326549)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 唾液腺 / Ca2+応答 / 唾液分泌 / Ca2+イメージング / 血流動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、生体内における唾液分泌機構を明らかにすることを目的とし、生きた動物における唾液腺のCa2+応答を細胞レベルで測定するミクロイメージングを試み、Ca2+応答と唾液分泌に加え、血流動態との関係について解析を行った。 1)これまでに我々は、副交感神経系の刺激薬であるアセチルコリン(ACh)が顎下腺全体に特徴的なCa2+オシレーションを起こし、さらにこのCa2+変動と唾液分泌が良く同期することを見出した。当該年度の実験でCa2+応答と血流動態の同時測定を行ったところ、Ca2+オシレーションと腺血流がよく一致することを見出し、この反応にアンジオテンシンIIやトロンボキサン受容体を介した血管収縮が大きく関与することを明らかにした。 2)唾液腺の細胞レベルでの反応をより詳細に調べるため、共焦点レーザー顕微鏡を用いてACh刺激によるCa2+応答のミクロイメージングを試みた。挙上した顎下腺においてCa2+センサーであるYC-Nano50の蛍光変化を捉えることに成功したが、細胞の縮小による形態変化が大きく、細胞局所のCa2+変化を正確に観察することが困難であった。そこで当該年度は、倒立顕微鏡を用いた多光子レーザー顕微鏡による測定システムにより検討を行うため、多光子レーザー顕微鏡で使用可能なCa2+センサー(G-GECO)を用いた検討を試みた。G-GECOはCa2+に対する親和性が低い(Kd=600 nM)ため、AChによるG-GECOの蛍光変化の測定に成功したが、YC-Nano50を用いたときよりも高濃度のACh刺激が必要であった。また、強い刺激のため細胞の形態変化が大きくなり、多光子レーザー顕微鏡でのCa2+イメージングには、よりCa2+に高感度のセンサーが必要となった。現在Ca2+感受性の高いGCaMP(Kd=290 nM)発現ウイルスベクターを作成中で、平成28年度の早い段階でこのベクターは完成する予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物を伏臥位にした状態で顎下腺を固定し、多光子レーザー顕微鏡により測定を試みた。この方法ではより強固に唾液腺を固定できるため、細胞形態変化による影響をさらに軽減できる。また多光子レーザー顕微鏡はより深い部位での観察が可能となり、唾液腺表面でなく、神経終末により近い部位のCa2+測定が期待される。一方で、多光子レーザー顕微鏡の測定系ではFRET型のCa2+センサー(YC-Nano50)が使用出来ないことから、蛍光強度が増大するタイプのセンサー(G-GECO)を使用した。しかし、Ca2+に対する親和性の低いG-GECOでは反応を検出するためにより強い刺激が必要となり、その結果、細胞形態変化が大きくなることから、高倍率レンズを用いた観察が困難であった。この問題を解消するため、より高感受性のCa2+センサー(GCaMP)を現在作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
共焦点レーザー顕微鏡を用いたミクロイメージング法に動的アーティファクトを軽減する更なる改良を行い、顎下腺における ACh刺激によるCa2+オシレーションの発生機構について検討を行う。またファイバー型の共焦点顕微鏡をこの実験系へ応用をすることで顎下腺深部でのCa2+応答の観察を試みる。 さらに、GCaMPを使った多光子レーザー顕微鏡によるミクロイメージングにより、生きた動物の唾液腺における腺房細胞のCa2+応答の時間・空間的変化の可視化を試みる。 また神経刺激(舌神経、顎下腺の副交感神経)による顎下腺のCa2+応答と血流動態変化マクロイメージング法は、共同研究者の石井とともに既に確立した。今後は、舌神経や副交感神経の直接刺激に加え、中枢への直接刺激によるCa2+応答と唾液分泌の関係についても検討を行う。 これらの解析により、神経刺激と薬物刺激による顎下腺Ca2+応答の違いを明らかにするとともに、さらに細胞レベルでの反応性を比較解析することで、薬物と神経刺激による唾液分泌のメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度は中枢刺激用電極の挿入に用いる脳固定装置(468千円)を導入する予定であった。しかし、多光子レーザー顕微鏡を用いたミクロイメージングに問題が生じたことから、この機器の購入を当該年度では見送った。その分、実験に使用するウイルスベクター作成に必要な消耗品等ならびに国際学会への発表の際の旅費として使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、脳固定装置に加え、試薬、プラスチック製品等の消耗品の購入費として使用する。また今年度は2~3回の学会(国内学会および国際学会)での発表を予定しており、研究費はこれらの学会参加の旅費等としても使用する。
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Research Products
(7 results)