2015 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来フィブロサイトと口腔癌細胞との相互作用による癌の悪性化機構の解明
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26462823
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
客本 齊子 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90118274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
衣斐 美歩 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (30609665)
三上 俊成 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (40405783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マクロファージ / 間葉系幹細胞 / M2マクロファージ / 創傷治癒 / 接着因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の悪性化には癌局所におけるニッチの影響が重要な因子の一つである。癌ニッチを構成する細胞には間葉系幹細胞(MSC),CAF,フィブロサイトやマクロファージ(Mφ)などが存在し、これらの細胞が相互作用しながら癌細胞に働きかけを行い癌の悪性化に関与しているとされる。我々は昨年よりフィブロサイトに変わる細胞としてMφに注目し研究を行ってきた。我々が独自に開発したマウス骨髄組織からMSCと血球性細胞を同時に増殖させる初代培養系では、MSCによりもう一方の細胞である未分化単球・Mφ系細胞の増殖が促進されるとともに免疫抑制性(創傷治癒促進性)Mφ(M2-Mφ)に分化誘導されていることが明らかになった。そこでこれら両細胞の相互作用によるMφのM2化について検討を行った。td-Tomato蛍光強発現TGマウス骨髄組織を採取し二週間培養後、Lineage (Lin) Cell Depletion Kitと磁気細胞分離装置を用いてMSC(Lin-)と血球系細胞(未分化単球・Mφ系細胞/Lin+)とに分離し、Lin+細胞の増殖とM2-Mφ分化に影響を与える因子について調査した。この結果、 共培養されたMSC(Lin-)から分泌され、他方の未分化単球・Mφ系細胞(Lin+)の増殖を促進する液性因子Aを同定した。また液性因子Aは未分化な骨髄単球細胞に対して強いMφM2化作用を有した。共存培養の結果、Lin+細胞は共培養されたLin-によりM2-Mφへと分化誘導されたが、両者の細胞間接着は非接着共存培養に較べM2化をより強く誘導した。そこで、接着に関わるタンパク質発現を調べたところ、Lin+細胞に、MSC(Lin-)細胞に発現するICAM1の受容体であるインテグリンαMβ2やαLβ1の発現を認めた。このことから、Lin+のM2化にはこれら分子を介する接着シグナルの関与が示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、フィブロサイトを単離して実験を行う予定だったが、末梢血からフィブロサイトの充分量を調製することができなかった(昨年度の進捗状況にて報告済み)。そこで、細胞を変更したため、細胞の培養やcharacterization等に関わる基礎実験に時間がかかった。特に、共培養した細胞からLin-とLin+細胞を分離する際に、残った他方の細胞が次の培養に入り込みさらに増殖してくるといったことから、きれいな分離の条件やコツを見いだすのに時間がかかってしまった。また分離後の細胞の充分量を得るための条件設定にも時間がかかった。 さらに、細胞の変更に伴い実験内容にも多くの変更を生じることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、1. 我々の確立したMSCと血球系細胞の共存培養系からそれぞれの細胞を分離して発現マーカー解析により細胞のcharacterizationを行った。2. MSC(Lin-)側の分泌する因子の質量分析による解析を行い、Lin+細胞の増殖と分化に作用する因子を見いだした。3. Lin-細胞によるLin+細胞の増殖と分化(M2化)の解析を行い、特に、M2化への両細胞の接着の関与が明らかになった。4.両細胞の接着に関与する、接着因子ーレセプターの組み合わせが示唆された。 そこで、次年度は、1. 上述4で示唆された分子が実際にLin+のM2化に関与しているかを阻害剤やそれら分子の中和抗体を用いて検討する。M2化はこれまでどおりフローサイトメトリー、定量的RT-PCR法やELIZA法によりM2マーカー(IL10,CD206)の発現により調べる。2. 炎症下(癌細胞ニッチ)においてこれらの分子の発現が変動するかを、TNFα、IL1β、LPS処理、あるいは癌細胞の培養上清等を用いてインビトロで検討する。方法としては定量的RT-PCR法、ウエスタンブロット法による。3. 癌細胞とのこれら細胞の相互作用を検討する。特に、癌細胞のニッチでのこれら細胞の相互作用と癌悪性化について癌細胞の細胞増殖、遊走能、マーカー発現に注目してインビトロで検討を行う。また、可能であればヌードマウスを用いて細胞の移植実験を行い、インビボにて細胞間の相互作用を検討する。
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Research Products
(14 results)