2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー照射部温度のインプロセスモニタリングによるハイブリッド歯冠形成法の確立
Project/Area Number |
26462877
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古本 達明 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (60432134)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザ / Additive Manufacturing / ハイドロキシアパタイト / 粉末 / かさ密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯質上に形成した窩洞内部にハイドロキシアパタイト粉末を選択的にレーザ結合する技術を確立する前駆として,粉末形状(球形,いびつ),粒径(4μm~1.7mm),化学式が異なる4種類のハイドロキシアパタイト粉末を用い,アルミナ基板上に薄く堆積させた各種粉末に対してレーザ照射実験を行った.波長が異なるNd:YAGレーザ,Ybファイバレーザ,CO2レーザ,Er:YAGレーザを用いて照射実験を行ったが,自重のみで基板上に堆積させた粉末では,充てん密度が十分に得られない事から各粉末で良好な結合を得ることが難しいことが分かった.そこで,堆積させた粉末のかさ密度を大きくするため,アルミナ基板上で圧粉処理を施してレーザ照射実験を行った.その結果,Ybファイバレーザを用い,歯根用材料や骨充てん材として用いられるβ-TCPタイプのハイドロキシアパタイト粉末を基板上に100μm程度堆積させた場合,レーザ照射に応じた結合物が得られることが分かった.また,得られた結合物の幅や高さを3次元表面粗さ計で評価した結果,レーザ出力や走査速度に依存したレーザエネルギ密度で統一的に整理できることが分かった.さらに,結合されたβ-TCPの断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で評価した結果,内部に気孔が無い良好な結合物が得られることを明らかとした.その他,得られた条件を用いて粉末を面状に結合できることも確認した.しかしながら,結合物表面にレーザ照射に起因した変色部位が確認されたため,レーザ条件を更に検討し,熱変質の無い結合ができる条件最適化が必要である. 次年度の準備として,粉末結合の様子をインプロセスで監視するため,InAs/InSb/MCT素子を用いたファイバ導光型赤外線輻射温度計を製作した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画したハイドロキシアパタイト粉末のレーザ結合技術の確立は概ね達成できた.しかしながら,結合物表面の変色に関して,変色の無いレーザ条件最適化が必要であることから,継続した実験が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,ハイドロキシアパタイト粉末のレーザ加工性を最適化するため,ファイバ導光型赤外線輻射温度計を用いてインプロセスによる温度監視システムを構築する.温度計測は,赤外線導光ファイバと3種類の赤外線検出素子を組み合わせた輻射温度計を用いる.3つの素子の中から2つの素子の出力比を取ることで,ハイドロキシアパタイト粉末表面からの輻射率に影響されない高精度な測定が可能となる.また,熱電対などによる測定と異なり,本温度計の応答速度は1μsと速い.この温度計を用いて,インプロセスで照射部温度を監視しながら,ハイドロキシアパタイト粉末の最適なレーザ条件を見いだす. また,レーザ照射に起因して生じた熱が歯質の形態学的変化に及ぼす影響を調べるため,歯質裏面に細穴加工して温度計測ファイバーを埋め込み,熱伝導によって伝わる内部温度も計測する.このとき,有限要素法解析ソフト「ANSYS」を用いて,計測した表面温度と歯質の熱伝導率から算出される計算結果と比較しながら,測定された内部温度の妥当性を評価する.そして,歯質内部に形態学的変化を及ぼさず,かつ,HAP粉末を効率的に結合できるレーザ照射条件を求める.
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Causes of Carryover |
計画に対して324円の残額が生じたが,ほぼ計画通りの執行を行ったと考えている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,ハイドロキシアパタイト粉末のレーザ加工性を最適化するため,ファイバ導光型赤外線輻射温度計を用いてインプロセスによる温度監視システムを構築するが,前年度の残額「324円」は,これらの技術を確立するための物品購入に充てる.
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