2014 Fiscal Year Research-status Report
新規歯科材料としての熱応答性ポリウレタンの基礎的研究
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26462889
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
富田 浩一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20315427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳田 雅行 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20253891)
蟹江 隆人 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70152791)
塚田 岳司 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70236850)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱応答性ポリウレタン / 機械的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱応答性ポリウレタンが、歯科材料として口腔内で暫間修復物に応用可能な機械的性質を有するかを研究した。 まず、熱応答性ポリウレタンを購入し、60℃、80℃、100℃で加温し、直径6mm、高さ10mmの円柱状の試料を作製し、その後、室温で24時間放冷して硬化させた群と4℃で急冷して硬化させた群にわけて試料を作製した。この試料を用いて、硬さ試験、圧縮弾性率試験、応力緩和率試験の3種類の機械的性質試験を行った。さらに、口腔内での再利用(再軟化)を想定して、60℃で加温軟化した試料については、前述の機械的性質試験の1回目終了後に、再度60℃で再軟化し、同様の機械的性質試験の2回目を行った。対照として、常温重合レジンを使用した。 実験結果として、硬さについては、常温重合レジンが最も高く、80℃軟化で24時間放冷して硬化させた群、100℃軟化で24時間放冷して硬化させた群、100℃軟化で4℃急冷して硬化させた群が、60℃軟化で24時間放冷して硬化させた群より硬さが高かった。また、60℃で再軟化した群の硬さは、1回目に軟化した群とは差がなかった。圧縮弾性率については、常温重合レジンが最も高かったが、熱応答性ポリウレタン群の中での差はなかった。応力緩和率については、全ての群で差はなかった。 これらの結果から、熱応答性ポリウレタンは、(1)軟化温度を調整することで硬さを変化させることができること、(2)常温重合レジンより低い硬さと弾性率を持つことから、咬合圧の負担軽減と暫間修復物のアンダーカット部分での撤去が可能となること、(3)応力緩和率が常温重合レジンと差がないことから、粘弾性的性質が近似していること、(4)再軟化しても機械的性質が変化しないことから、再利用が可能なことがわかった。 以上のことから、熱応答性ポリウレタンは、口腔内で暫間修復物として応用可能な材料であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、熱応答性ポリウレタンが歯科材料として、口腔内の暫間修復物に応用可能な機械的性質を有するかを検討する予定であった。熱応答性ポリウレタン試料を作製し、硬さ、圧縮弾性率、応力緩和を調べ、歯科材料として口腔内で暫間修復物に応用可能な機械的性質を有することが示唆された。一方、歯ブラシ摩耗試験機による摩耗試験、表面粗さ試験、封鎖性試験が終了しなかった。しかし、すでに摩耗試験、表面粗さ試験については歯ブラシ摩耗試験機の調整を終了し、予備実験が終了している。したがって、次年度より実験開始ができる準備ができているため、おおむね予定は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
機械的性質実験の歯ブラシ摩耗試験、表面粗さ試験、封鎖性試験を継続して行うとともに、今年度の目的である生物学的安定性試験である細胞毒性試験、DNA合成への影響を調べる試験、細菌付着性試験をおこなうための予備実験と本実験の実施を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、歯ブラシ摩耗試験機の購入時の低価格化で大幅な費用削減ができたこと、熱応答性ポリウレタンの試料作製、機械的性質試験のうち硬さ試験、圧縮弾性率試験、応力緩和率試験を行ったが、歯ブラシ摩耗試験機による摩耗試験、表面粗さ試験などが予備実験段階までの進捗だったため、熱応答性ポリウレタン、歯ブラシ、ガラス器具などの消耗品購入が予定より比較的少なくなったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、生物学的安定性試験(細胞毒性、DNA合成阻害など)を行う予定と、機械的性質試験(歯ブラシ摩耗試験、表面粗さ試験、封鎖性試験)を継続実施する予定なので、今年度にあまり購入しなかった熱応答性ポリウレタン、ガラス器具、培地、薬品などの消耗品を大量に使用する予定であること、歯ブラシ摩耗試験機のメンテナンスなどに費用を要すると思われる。
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