2014 Fiscal Year Research-status Report
ケイ酸カルシウムを添加したフルオロアパタイト形成セメントに関する基礎的研究
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26462898
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
林 誠 日本大学, 歯学部, 准教授 (00301557)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯内療法用セメント / リン酸カルシウムセメント / フルオロアパタイト / ケイ酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
歯内療法に使用する代表的なセメントとして,Mineral Trioxide Aggregate(MTA)が挙げられる。MTAは高い辺縁封鎖性と生体親和性を持つことから国内外で広く使われているが,硬化時間が長い,臨床的充填操作が困難である,生体に及ぼすメカニズムが不明である,などの事項が指摘されている。そこで本研究の目的は,これらの問題点を改善するためCalcium Phosphate Cement(CPC)に着目し,本材料にフッ化ナトリウム(FA)およびケイ酸カルシウム(TCS)を配合することによって,高い辺縁封鎖性と生体親和性を持つフルオロアパタイト形成を特徴とした新しい歯内療法用セメント(FA-CPC with TCS)を試作し,実用化に向けて検討することである。 平成26年度では,新規セメントの開発に必須である,理工学的な特性を調べるとともに生体親和性および辺縁封鎖性試験を行った。その結果,FA-CPC with TCSの理工学的特性は代表的な歯内療法セメントのMTAより有意に硬化時間が早く,高い結晶性を有するFAがアルカリ環境下で形成されることが確認できた。また,生体親和性試験ではラットの背部にFA-CPC with TCSを埋入した際の組織反応,および骨芽細胞とFA-CPC with TCSの共培養による細胞反応を検討し,MTAと同等な生体親和性が示された。さらに,抜去歯を用いた封鎖性試験でもFA-CPC with TCSとMTAの辺縁封鎖性に有意差はなかった。 以上の成績から,FA-CPC with TCSは歯内療法用セメントとして有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると考えられる。本研究の目的は,現在歯内療法領域で広く使用されているMTAの問題点を改善するため,Calcium Phosphate Cement(CPC)にフッ化ナトリウム(FA)およびケイ酸カルシウム(TCS)を配合した新規歯内療法用セメント,FA-CPC with TCSの開発である。 本セメントの臨床応用に際し,十分な理工学的特性を有し,生体内で高い親和性を示しながら生体安全性を考慮した材料が求められる。そのため,理工学的な解析と生体親和性試験は必須であり,研究開発の基盤となる事項である。さらに歯内療法用セメントとしては,高い辺縁封鎖性も必要になってくる。 これらの観点から,初年度の平成26年度内に基本的なこれらのデーターを取得し,本材料の有用性が示唆されたことは大きな成果と考えられる。また,これらの結果の一部を国際学術雑誌に掲載し,本材に関する情報を広く提供できたことも大きな進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,平成26年度内に行っていた研究の一部を継続するとともに,生体に及ぼすFA-CPC with TCSやMTAのメカニズムの解析を遂行する予定である。すでに骨芽細胞を用いたFA-CPC with TCSの細胞培養実験は,本年度の生体親和性試験として実験系は確立していることから,この系を応用して硬組織形成細胞に及ぼす影響をさらに詳細に検討する。各種細胞がFA-CPC with TCSやMTAによって硬組織形成を促すように分化誘導されることは,歯内療法用セメントとして重要な要件であり,そのメカニズムを明らかにすることは臨床応用に必須と考えられる。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究内容に関する達成度としては,前述したように概ね順調に進展しているため,研究費をほぼ予定通り使用した。しかしながら,物品費とくに消耗品に関しては予定より安価に購入でき,次年度(平成27年度)に向けて,9,477円の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に関しては,平成26年度からの繰越金9,477円と合わせて研究費として使用する予定である。物品費として各種歯内療法用セメントの購入,細胞培養,遺伝子解析などに必要な試薬,薬品などを購入する。また,得られた研究成果に関しては,本研究費を使用して関連学会での発表や国際学術雑誌などへの投稿を行う。
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