2015 Fiscal Year Research-status Report
抗菌剤がポリマイクロバイアルバイオフィルムの代謝および群集構造へ与える影響の解析
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26462900
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
富山 潔 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (90237131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40247317)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリマイクロバイアルバイオフィルム / タンニン / 柿 / クロルヘキシジン / 抗菌剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、今日まで培養が極めて困難であると考えられていた、口腔内の全菌種を含有するバイオフィルムであるポリマイクロバイアルバイオフィルムに対して、従来 の抗菌剤に比較し、安全でなおかつ、バイオフィルムの増殖および代謝を抑制する抗菌剤を開発し、そして、その抗菌剤が群集構造へ与える影響を分析することである。 私達は、ポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルを用いて、安定した初期齲蝕病巣を繰り返し再現可能な初期齲蝕病巣モデルを開発し、このモデルは、バイオフィルムによる脱灰抑制や再石灰化療法の開発に役立つことした研究成果がAmerican Journal of Dentistry 28: 13 – 17, 2015に掲載された.また,渋柿から抽出した縮合型タンニンを成分として加えた食品添加剤が,24時間および72時間培養したポリマイクロバイアルバイオフィルムに対して顕著な生菌数の抑制効果を発揮することをCFU/mlおよびSEMにて示し,BioMed Research International article ID 5730748, 7 pages, 2016に掲載された.柿タンニンは,天然由来で,副作用の報告があるクロルヘキシジン(CHX)などに比べて安全である.また,すでに形成され,成熟したバイオフィルムに対して生菌数の抑制や構造破壊を示した点は注目すべき点であると考えている.柿タンニンがノロウィルスなどに効果的であるとする方向はあるが(Ueda Kら, Plos One 8, e55343, 2013),唾液由来の口腔内細菌をすべて含むバイオフィルムを口腔外で形成し, その効果を分析した論文は現在までに,認められない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私達は,平成27年度以降の研究計画である“口腔内における固相の違いがポリマイクロバイアルバイオフィルムの細菌叢に及ぼす影響およびバイオフィルム細菌叢の回復の検討”,“ポリマイクロバイアルバイオフィルムによる表層下脱灰病巣形成の抑制および形成された表層下脱灰病巣の回復に有効な治療法の検討”を達成するために,まず,研究に必要な表層下脱灰病巣形成モデルを発明し,アメリカの英論文に掲載され,次に,バイオフィルムを効果的に破壊し,生菌数を抑制する生体に安全な抗菌剤を発見し,ヨーロッパの英論文に掲載された.次の段階として,すでに,持続的に酸の産生および生菌数を抑制し,バイオフィルム中に存在し,その形成に深くかかわるFusobacteriumを顕著に抑制することまでをも,real time 定量PCR法により発見した.すでに次世代型パイロシークエンス法による細菌叢の分析に着手し,加えて,異なった固相に形成したバイオフォルムとの比較分析も行ない,すでに柿由来タンニンの抗菌効果のメカニズムを解明するのに必要な膨大なデータをデータを得ており,今後,International Association for Dental Research (Korea) において発表後,国際論文の執筆に着手する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
私達は,平成27年度以降の研究計画に基づき,バイオフィルムの形成および代謝を効果的に抑制する柿タンニンの抗菌メカニズムを解明するために,real time 定量PCRによりバイオフィルム中のどの病原菌について有効かを分析するとともに,パイロシークエンス法により,バイオフィルム菌叢の群集構造に対する効果を分析した. 今後は,2つの方向に研究を推進していくつもりである.一つ目は,柿由来タンニンが硬組織疾患のみならず,インプラント周囲炎や歯周病にも効果的かどうか,疾患としてのターゲットを広げて,場合によっては,高齢者の誤嚥性肺炎の予防効果,舌上の菌叢を改善することによる食道癌、咽頭癌などの発症リスク抑制に効果がるのか,など,臨床的な効果も探る方向で検討している. 2つ目は,抗菌性を有する抗菌材料の開発である.天然由来抗菌剤の発見が重要であることは当然のことながら,歯科では,う蝕治療用材料に優れた抗菌効果を付与できれば,国民の健康を増進することにつながる.そこで,複数種のイオンを溶出するフィラーを歯磨剤に混入させ,ポリマイクロバイアルバイオフィルムに対する抗菌効果を検討していきたいが,すでに予備実験で,この歯磨剤が,バイオフィルム中の菌による口腔内pHの下降を顕著に抑制するという結果を得ていることから,この結果に対する検証実験を繰り返し行う予定である.
Dental Research (Korea) において発表後,国際論文の執筆に着手する予定である.
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Causes of Carryover |
本年度の実験計画のうち、カキタンニン処理後のバイオフィルム中の特定病原菌種のリアルタイム定量PCRにより、興味深い結果が得られたため、異なった固相で形成されたバイオフィルム中の菌叢の次世代型シークエンスよりも前に、カキタンニン処理後のバイオフィルム中の菌叢の次世代型シークエンスによる分析を優先したため、実験にかかる物品費が変わり、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、異なった固相で形成されたバイオフィルム中の菌叢の次世代型シークエンスによる分析を行うため、バイオフィルムを形成する固相として、ガラスディスク、ウシエナメル質および象牙質試片、インプラント上部構造体、バイオフィルム形成にかかる消耗品として、培地作成用材料、緬羊血液、カキ抽出縮合型タンニン、クロルヘキシジン、緑茶抽出縮合型タンニン、パイロシークエンス分析用消耗品、TMRフィルム、乳酸側的キット、Live/Dead染色キット、アンモニア測定キットの購入のために使用する予定である。
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