2014 Fiscal Year Research-status Report
チタニアナノチューブへの可視光応答性付与による高機能漂白材料の創製
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26462906
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
山本 一世 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50288776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
吉川 一志 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (30309182)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノチューブ / チタニア / 歯の漂白 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめにTNTの光触媒活性を見るためにUV照射を行いながらESR法にてラジカルの測定を行った。測定にはESR装置(ESP350E、BRUKER社)を用い、1分ごとに10分間測定を行った。次に、メチレンブルー(MB)溶液にTNT粉末(非加熱、加熱処理)を加え、UV照射下にて攪拌を行い、規定時間ごとに紫外可視分光光度計(UVmini-1240、島津製作所)をもちいてMB溶液の吸光度を測定した。漂白効果の検討として市販のハイドロキシアパタイトペレット(APP-100、PENTAX)をMB溶液に2週間浸漬し着色させたものを変色歯モデルとし、3種類(TiO2粉末、TNT:非加熱・加熱処理)の粉末をそれぞれ3%の過酸化水素水に添加し、変色歯モデルに塗布した。そして、歯科用LED照射器(コスモブルー、GC)にて5分間照射した。この操作を3回繰り返し、歯科用色彩計(シェードアイNCC、松風)にて測色を行った。色彩表示はCIEL*a*b*表色系を用い、漂白の程度は色差ΔE*abとL*,a*,b* 値で評価した。 UV照射下において、酸化チタン、非加熱のTNTと加熱処理を行ったTNTともにラジカルの発生が確認できた。また、加熱処理を行ったTNTは非加熱のTNTより大きなMB濃度の変化がみられた。これは加熱処理によりTNTの結晶性が向上し、触媒効率が上がったと考えられる。また、測色の結果、TiO2粉末の試料と比較し、TNTを用いた試料では漂白効果は有意に増大した。これは、過酸化水素水で処理することにより、非加熱のTNTが歯科用LED照射器の光をより効率よく吸収しやすく変化したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
化学合成法によるTNTの生成メカニズムの解明については、研究分担者の関野らが発見した、鋳型などは用いずに自己組織化によって形状がほぼ一定な TNT を作製することができる化学合成法を用いた。TNTの合成原料には、アナターゼ構造のTi-OH基が高いアパタイト形成能を示すことから、アナターゼ型TiO2粉末に限定した。合成するに当たり、・反応時間・塩基の種類・反応温度・洗浄および酸処理の方法について条件を変え反応させた。TNTの合成は、概ね連携研究者である西田が各作業過程においてサンプリングを行い、合成プロセスすべてにおいて相関関係を検討し、生成メカニズムを明確にする。また、形態制御が可能かどうか検討し、サイズ制御因子を抽出する。そして、最適な材料が創製される条件を確立できた。 しかしTNTへの可視光応答性の付与については現在、検討中であるので評価をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度も引き続きTNTへの可視光応答性の付与について検討を行う。酸化チタンはアナターゼ型3.2eV、ルチル型3.0eVのバンドギャップエネルギーを持っており、紫外線を利用して光触媒として利用されている。しかし、歯科治療で用いられている光源は可視光領域であり光触媒特性を最大限発揮できない。そこで、歯牙漂白治療へ応用させるために、硫黄ドープによる可視光応答型酸化チタンナノチューブ(S-TNT)の作製を行う。 TNT作製の化学合成プロセスに準じて、原料に硫黄源としてチオウレアを加えてS-TNTを作製する。チオウレアの添加量は2 mol%とする。微細構造評価では、走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する。また蛍光X線(既存設備)およびXRDにて硫黄が修飾されているか確認する。そして、様々なサイズのTNTにおいて修飾を試み、結果のフィードバックを行ない、TNTサイズと硫黄ドープの相関関係を明確にし、制御条件の指針を得る。また、可視光応答型TNTの作製には、カチオン状態の化合物として格子間に導入する方法だけでなく、硫黄原子を酸素と交換する手法も検討する。また、この実験では、研究分担者であるナノ材料工学が専門の関野の知見が必要である。
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