2015 Fiscal Year Research-status Report
個体別力学的シミュレーションに基づいた補綴装置デザインの最適化
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26462921
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田地 豪 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (80284214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二川 浩樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10228140)
小川 匠 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20267537)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 咬合接触 / 咬合力 / 3次元歯列モデル / 有限要素解析 / 補綴装置設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
補綴装置の設計は、術者の経験や技術・感覚に委ねられることが多く、補綴装置の脱離、破損、支台歯の破折などの問題が生じていた。この問題の解決には、支台歯に加わる力を定性的・定量的に評価する必要があるが、これまでの研究では評価が断片的であり、客観的・総合的評価には至っていない。本研究では、歯や補綴装置の形態、咬合接触や咬合力などの口腔内情報を正確に再現した高精度3次元再構築画像を用い、力学的シミュレーションを応用することにより評価を統合し、患者個別の補綴デザインの最適化を目指す。 本研究では、研究期間内に以下の3点について明らかにする計画を立てた。すなわち、①咬合接触定量化システムの開発、②3次元歯列モデルへの咬合データの統合、③力学的シミュレーションを用いた補綴装置の最適設計システムの開発、である。 昨年度は、咬合接触定量化システムを開発した。本システムは、印象材の写真画像を取得する咬合接触計測装置と、その写真画像から印象材の厚さおよび咬合接触面積を求める基準からなる。本システムの開発により、一定の撮影条件下で異なる咬合採得材を簡便に撮影でき、印象材を用いた咬合接触の定量化が可能となった。また、咬合紙を用いた評価法と比較した結果、本評価法は咬合接触状態をより詳細に観察することが可能であった。 本年度は、3次元歯列モデルを構築し、咬合データを統合できるようにした。まず、咬合採得材料を用いて記録した咬合面形態をコンピュータ内に3次元モデルとして取り込むことにより上下顎歯列形態および位置関係を再現する方法を構築した。次に、その精度について検証した。昨年度開発した咬合接触定量化システムで得た咬合接触を示す画像の空間的位置を3次元歯列モデルに対して規定し、咬合接触を正しい位置に投影することで3次元歯列モデルに咬合接触のデータを統合することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3次元モデルの構築と咬合接触・咬合力の計測を行うことで、3次元歯列モデルへ咬合データを統合することを計画していた。計画に基づき、咬合採得材料を用いて記録した咬合面形態をコンピュータ内に3次元モデルとして取り込むことで歯列形態を再現する方法を構築し、その精度について検証した。具体的には、非接触式3次元形状計測装置を用いて咬合記録体(シリコーンバイト)の3次元形状データを取得し、咬合面形態の陰型である咬合記録体の法線を反転させ、歯冠形態を再現した。また、咬合記録体から再現した歯冠形態の3次元モデルは、頬舌側領域が欠損しているため、歯列石膏模型の3次元モデルの歯冠部分を抽出し、咬合記録体から再現した歯冠形態を補完することにより歯列形態を再構築した。このように、咬合記録体をデジタル化することにより、コンピュータ内に歯列形態を再構築することが可能となった。 歯列形態の再現システムの精度検証は、歯列石膏模型の3次元モデルをコントロールとし、本システムにより製作した歯列形態に対して、歯冠ごとのモデル間誤差を算出することにより行った。シリコーンを用いた歯列の再現精度は、平均0.058±0.035 mmであり、臨床応用可能な範囲であると考えられた。また、歯列の上下顎間、左右側間、および上顎の前歯・小臼歯・大臼歯間において、誤差に有意差は認められなかった。一方、下顎前歯部においては、やや大きな誤差が認められた。この部位は重ね合わせを行う歯冠表面面積が少ないため、重ね合わせの精度に影響を及ぼした可能性がある。 本年度開発したシステムで得られた3次元モデルに、昨年度開発した咬合接触定量化システムで得た咬合接触を示す画像の空間的位置を規定し、咬合接触を正しい位置に投影することで、3次元歯列モデルに咬合接触のデータを統合することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、補綴装置の最適設計システムの開発を目指し、3次元モデルの構築や咬合データの統合、有限要素解析を行う予定である。3次元モデルに応力分布を表示させることにより、応力集中部位と補綴装置の破損、歯根破折などの部位を比較し、力学的シミュレーションの結果の妥当性を検証したい。さらに、これらを総合し補綴装置の最適設計システムの開発につなげていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
三次元解析ソフトや画像処理ソフトなどのソフトウェアの購入が遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にソフトウェアを購入する予定である。
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Research Products
(6 results)