2014 Fiscal Year Research-status Report
インプラントの細胞骨格制御能に注目したオッセオインテグレーションへのアプローチ
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26462924
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荻野 洋一郎 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50380431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熱田 生 九州大学, 大学病院, 助教 (30423487)
古谷野 潔 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50195872)
鮎川 保則 九州大学, 大学病院, 講師 (50304697)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インプラント / 表面性状 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究の前提となるチタンディスクの作製法の確立とその表面の特徴を解析した。今回使用したチタンは、タイプⅣのもので、表面を研磨、硝酸処理を行ったものをスムース(S)とし、研磨後、サンドブラスト処理を行い、塩酸で処理したものをマイクロサーフェイス(M)、同じくサンドブラスト後、過酸化水素+硫酸で処理したものをナノサーフェイス(N)とした。この表面をSEMで解析したところ、表面性状が明らかに異なっていることが確認できた。また、粗さをレーザー顕微鏡で測定、粗さはM>N>Sという順になり、それぞれの粗さで統計学的な有意差を認めた。また、表面の化学的性質として、親水性を計測したところ、N>M>Sであり、これもまた各群間で有意差が検出された。これにより、各表面性状の特徴を把握できたといえる。 使用する細胞について、研究開始当初は、セルライン、あるいは動物より採取した細胞の2種類を検討していたが、動物実験の倫理審査に時間を要したことから、まずは、セルラインを購入し、細胞の各種の挙動を検索した。今回、使用したマウス由来の間葉系幹細胞株と前骨芽細胞株は、今回の実験条件では、接着能、増殖能には問題がなかったものの、骨芽細胞への分化能は期待したものは得られなかった。しかし、現段階では、本細胞株での実験を継続していく予定である。 上記細胞を各種チタン上に播種し、細胞形態の観察を行った。播種後、24時間で免疫蛍光染色下で観察すると、どの細胞も伸展しており、良好な接着が観察された。そのために、接着初期の段階では、表面性状の影響が顕著に出る可能性を考え、播種後、2時間、6時間で観察したところ細胞形態に違いが認められ、特にSと粗い表面性状を持つM、Nでは異なった細胞形態が観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初の予定では、材料学的な点において、チタンディスクの作製法の確立、その特徴の解析が目的であった。今回、複数回のディスク作製において、SEMでの観察では、各回でそれぞれ同様の表面性状を獲得できたため、本手法は確立できたといえる。さらに当初、予定にはなかった表面の化学的性質の解析も行い、この点において有意差が検出できたことは、研究を行う上で非常に有益であったと考えている。 細胞に関しては、動物実験の倫理審査に時間を要し、また、購入したセルラインが期待したほどの挙動を示さずに、細胞の培養条件の設定に時間を要したが、現状では、実験の遂行が可能な状態にはなっている。これらの細胞を使用し、処理したディスク上での細胞培養を開始できたこと、また、細胞の形態観察を免疫蛍光染色で行えたことは、手法が確立できたことでもあり、今後の研究の遂行にとってポジティブな期間であったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究機関で各種チタンディスクの作製は確立できたといえるために、今後は各チタンの表面性状に対する細胞反応に主眼点をおく予定である。特に細胞骨格を制御するといわれているGタンパクであるRhoAの発現機構やRhoAの各種細胞機能におよぼす効果を検討することを目的に実験を行う。 本研究の遂行に際し、RhoAの発現の解析キットの購入、リアルタイムPCR等に必要なたんぱくなどの購入が必要となる。細胞に関しては、本研究費で購入した細胞株の使用を予定しているが、場合によっては動物から採取した細胞の使用も検討する。 また、最終年度の実験に向けて、現在確立している表面の改造法に加え、新たな処理を検討する。これまで、我々の研究室で取り組んできた手法に加えて、現在、インプラントメーカーで公表されている手法に取り組むことも考慮している。新たな手法を用いた場合には、これまで同様に改変された表面に対する材料学的、理工学的な解析をさらに続ける予定である。
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Research Products
(2 results)