2015 Fiscal Year Research-status Report
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26462976
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
見明 康雄 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (00157421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体材料 / ヒドロキシアパタイト / 結晶合成法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、多量の単結晶ナノチューブアパタイトを合成する方法を検索した。 合成方法としては、リン酸2水素アンモニウム1.38gを200mlの蒸留水に溶解し、80度に加温して炭酸アンモニウムでpHを8.0に調整したものに、酢酸カルシウム3.53gを200mlの蒸留水に溶解したものを滴下して合成した。滴下中のpHの調整には10%炭酸アンモニウムを用いた。滴下時間は150分前後で、滴下終了後30~60分間80度・pH8.0を保ち400ml当たり0.8mlのフッ化水素を滴下した。フッ化水素添加後10~30分間放置し、合成された粉末を数回水洗し乾燥した。脱灰による結晶中央部の穿孔を効率よく行うため、得られた粉末をさらに細かく粉砕し、0.1MでpH2.5に調整した乳酸、塩酸、ギ酸による脱灰穿孔像を比較した。脱灰条件は50度3日間である。その結果、乳酸と塩酸ではほぼ同様の穿孔像が観察されたが、ギ酸では穿孔像はほとんど見られなかった。なお、フッ化水素を添加せず、合成時間をやや延長した合成系も作製し穿孔を試みたが、この結晶では脱灰後の中央穿孔像はほとんど見られず、むしろ結晶周囲から溶解されている像が多くみられた。 なお、年度の始め頃に攪拌装置が故障したため、既存の装置を代用品として使用したところ、穿孔像が全く形成されなくなった。原因を突き止めるのに時間がかかったが、結論として、合成初期から中期の段階で合成中の溶液の攪拌が不十分だと、結晶性の悪いアパタイトがほとんど出来ないことが判明した。そこで、購入予定にはなかったが、既存のものよりかなり強力なトルクを持つホットプレートスターラーを購入した。この装置の導入により、攪拌力や温度調整が安定し、より合成条件が均一になった。 今年度の研究結果より、単結晶ナノチューブアパタイトの合成条件を一つに決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験装置が故障したので既存の装置を利用して結晶合成を行ったが、結晶穿孔像が観察されなくなった。回転力などは見た目にはそれほど低下しておらず、また合成初期の攪拌が結晶性にこれほど大きく影響することを想定していなかったので、原因追及に時間がかかってしまった。今年度予算では備品の購入予定もなかったため、脱灰液の濃度やpHの調整で穿孔像が得られると考え、かなり多数の条件を設定して実験を行ったが、結局脱灰条件の変更では結晶穿孔像を形成することは出来ず、やむを得ず強力ホットプレートスターラーを購入して解決した。また、単結晶ナノチューブアパタイトの合成条件は今年度の研究で決定したが、気孔率を上げるための条件設定がなお不十分であり、その研究に時間が取られている。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶ナノチューブアパタイトの気孔率を上げるための条件設定を検索する。脱灰溶液中には結晶脱灰時に遊離したカルシウムやフッ素イオンにより新たな結晶が出来たり、脱灰を抑制しているような像も一部みられるので、これまでの条件に加え、カルシウムとフッ素が同時に存在しても結晶成長を抑制するものを添加して気孔率が上がるかを検討する。この材料と条件は全く別の研究で明らかになったものであるが、本研究に利用できるか検討する。 現在ある単結晶ナノチューブアパタイトの応用実験を行う。実験は牛歯に窩洞形成を行い、単結晶ナノチューブアパタイトと複数の材料を混ぜて硬度の高い自己硬化型アパタイトを合成し、エナメル質における無機材料のみの充填剤としての利用を検討する。
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Causes of Carryover |
研究機器の故障により用いた代替機器が性能を満たしていないことが解明されるまでに時間がかかり、研究が次の段階に進まずに遅れたため実験材料の購入が予定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の残金は、次年度使用額と合わせ研究計画に沿って使用する。特に気孔率の上昇のために添加する材料と、牛歯を用いる自己硬化型アパタイトの研究に重点を置き研究を行う。
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