2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26463032
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
吉田 博昭 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40260624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 要 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (80632083)
森田 章介 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (90148461)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 唾液腺 / 転写因子 / 再生医療 / 器官培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液腺再生の方法には唾液腺幹細胞の分化誘導や転写因子による唾液腺細胞への分化転換などが考えられ,これらの方法を確立するための重要なステップは唾液腺の幹細胞や各構成細胞を分離して解析することである. 初年度に続く研究では,唾液腺形成過程で発現している転写因子の同定と機能解析を進め,上皮の分化を制御している転写因子Grainyhead-like 2(GRHL2)についてマウス顎下腺における発現と機能を解析した.本研究では,マウス胎仔顎下腺におけるGRHL2の発現は,E-cadherinとの二重免疫染色法により共焦点レーザー顕微鏡で解析した.顎下腺形成におけるGRHL2の関与を調べるためにGrhl2遺伝子に対するsiRNAおよびネガティブコントロールsiRNAの存在下で胎仔顎下腺を培養して,腺房数を計測した。また, Grhl2および上皮細胞接着関連因子E-cadherin, Cldn3,ZO-1のmRNAとタンパク質の発現をリアルタイムPCR,ウェスタンブロット法で解析した.結果として,顎下腺におけるGRHL2の発現はE-cadherin陽性細胞だけで認められた.Grhl2 siRNA存在下の顎下腺では,コントロールに比べて成長が著しく抑制され,また腺房数およびGrhl2 mRNA量が有意に減少していた.E-cadherin,Cldn3,ZO-1のmRNAおよびタンパク質の発現も有意に減少していた.以上のことから,マウス顎下腺ではGRHL2は上皮で発現し,上皮組織の形態形成と分化に関わっていることが示唆された. これらの研究成果は,第60回日本口腔外科学会総会と,さらに第70回日本口腔科学会総会で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
唾液腺上皮組織での唾液腺形成に必要なものを選別し,成体マウスから顎下腺を摘出し組織切片と単一上皮細胞標本を作製した.CD117,CD66a,E-cadherin,AQP5,CLDN4,NKCC1およびCK5に対する抗体と蛍光標識2次抗体を用いて染色し,共焦点レーザー顕微鏡で観察した.結果として,唾液腺を構成する腺房,介在部,線条部および排出部導管の各細胞,基底・筋上皮細胞はCD66aとCD117の発現量の違いによって区別できることを示し,FACSを用いて各細胞に特異的な遺伝子の同定や幹細胞の濃縮が可能となり,唾液腺再生医療の確立に貢献することが期待される. 続いて,マウス胎仔顎下腺の器官培養系を用いてsiRNA による発現阻害実験を行っている. マウス胎仔顎下腺の形成過程で発現レベルが上昇する転写因子について,発現データベースの解析を行い,唾液腺上皮組織で発現しているものを選別し,転写因子について発現阻害実験および転写因子ネットワーク解析を行い,マウス胎仔顎下腺の成長・形態形成・細胞分化に影響を与える転写因子を選別した.そして選別した転写因子をマウス線維芽細胞に強制発現させ,唾液腺細胞への分化誘導能を持つものを同定し,さらに,唾液腺細胞への分化転換能を持つかどうかを検証した. 形態学的には,概ね予測した器官培養の結果を得られてきているが,実験の手技と行程がきわめて複雑であり,高い成功率での再現性がなかなか獲得できない.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究計画により唾液腺上皮組織での唾液腺形成に必要な転写因子の選別・発現を確認した転写因子の中から,唾液腺形成に必要なものを選別する.具体的には,マウス胎仔顎下腺の器官培養系を用いてsiRNA による発現阻害実験を行い,次に,ヒト唾液腺細胞への分化転換能を持つ転写因子の同定を行う. 同定した転写因子のヒトホモログが唾液腺で発現していることを確認するために,口唇部の生検試料を用いてin situ ハイブリダイゼーション解析を行う.さらに,これらのヒト転写因子が唾液腺細胞への分化転換能を持つかどうかをヒト培養線維芽細胞に発現させて検証する.
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Causes of Carryover |
研究に必要な試薬などが安価に購入できた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿費として使用する.
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