2014 Fiscal Year Research-status Report
α2-アンチプラスミンのNaked DNA直接注入法による口腔癌遺伝子治療の開発
Project/Area Number |
26463044
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浜名 智昭 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (40397922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
林堂 安貴 広島大学, 大学病院, 講師 (70243251)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | α2-アンチプラスミン / プラスミン / E-カドヘリン / Naked DNA / 口腔癌遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミンは細胞外基質蛋白に対し強い分解活性を示すほか,他の不活性型蛋白分解酵素を活性化し,がんの浸潤・転移を制御していると報告されている.本研究者は,プラスミンが,細胞間接着分子であるE-カドヘリンを切断し,がん細胞の分散能を亢進することを報告し,さらに,プラスミンが癌細胞の増殖能を亢進することを示してきた.したがって,プラスミンは,細胞外基質蛋白分解系の中心的な役割を果たすほか,E-カドヘリンをプロセシングすることで,がん細胞の分散能と増殖能を亢進させ,がんの浸潤・転移を促進していると推測している.本研究では,プラスミン阻害物質であるα2-アンチプラスミン蛋白の発現を誘導し,扁平上皮癌の蛋白分解活性のみならず細胞分散能と増殖能を低下させることで,口腔癌の浸潤・転移を抑制することを目的としている. 実験には口腔扁平上皮癌細胞株と,その細胞株にα2-アンチプラスミン遺伝子を導入した細胞を用いた.α2-アンチプラスミンの発現誘導が,扁平上皮癌細胞の細胞増殖に与える影響について検討するために,まずプラスミノーゲンを含む培地で各細胞を培養し,経時的に増殖細胞数を算定した.α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞は低い増殖能を示し,培養7日目の増殖細胞数は親株の約1/2であった.つぎに1000万個の各細胞を0.1mlの培地に浮遊させ,4週齡ヌードマウスの背部皮下に接種し,経時的に腫瘍の大きさを測定した.遺伝子導入細胞は腫瘍を形成するものの増大を認めず,親株にくらべ増殖能が著しく低下していた.これらの結果は,α2-アンチプラスミン蛋白の発現によるプラスミン活性の低下が口腔扁平上皮癌細胞の浸潤増殖を抑制している可能性を示唆している.したがって,α2-アンチプラスミン蛋白発現誘導は口腔癌の浸潤・転移を抑制する,新しい遺伝子治療の開発につながることが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度はα2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞をヌードマウス背部皮下に移植し,形成した腫瘍組織中のE-カドヘリンおよび細胞増殖関連蛋白の発現を免疫組織化学染色およびWestern Blotにて検索することとしていた.遺伝子導入細胞によるヌードマウス形成腫瘍は,親株での形成腫瘍と比較し,細胞膜上でE-カドヘリンの高い染色性を認めた.さらに,E-カドヘリンの裏打ち蛋白であるβ-カテニンの細胞膜での発現が,遺伝子導入細胞による形成腫瘍では亢進していた.しかしながら,細胞増殖関連蛋白の発現についてはまだ確認できていない.また,α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞のリンパ節転移能を検討するために,遺伝子導入細胞をヌードマウス足蹠皮下に移植し,膝窩リンパ節への転移の有無や転移巣の大きさおよび数を測定するとしていたが,現在進行中でまだ結果は得られていない.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,α2-アンチプラスミン遺伝子を,病原性のない安全なプラスミドDNA すなわちNaked DNA の形状で腫瘍組織内へ直接注入することにより,α2-アンチプラスミン蛋白のin vivo での発現を誘導し,扁平上皮癌における蛋白分解活性のみならず細胞分散能と増殖能を低下させることで,口腔癌の浸潤・転移を抑制する,新しい遺伝子治療の開発を目的としている. H26年度の実験で,α2-アンチプラスミン遺伝子細胞によるヌードマウス形成腫瘍で,細胞膜でのE-カドヘリンの発現亢進を認めたことから,α2-アンチプラスミンが癌細胞の分散能を低下させることが期待される. 今後は,In vivo でのα2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞の転移能の検討する.また,α2-アンチプラスミン遺伝子をNaked DNA の形状でヌードマウスの正常組織に注射し,この直接遺伝子注入法によるin vivo でのα2-アンチプラスミンの遺伝子および蛋白発現効率を検索する.その後,ヌードマウスに形成させた口腔扁平上皮癌にα2-アンチプラスミンのNaked DNA を直接注入し,腫瘍組織中でのα-2 アンチプラスミンの発現を解析する.さらに,α2-アンチプラスミン遺伝子導入による扁平上皮癌のin vivo における転移抑制効果を検討する.
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Causes of Carryover |
平成26年度は遺伝子導入細胞によるヌードマウス形成腫瘍における細胞増殖関連蛋白の発現を免疫組織化学染色およびWestern Blotにて検索することを予定していたが,計画が遅れている.また,蛋白発現のシグナル検出のためブロットスキャナーを購入予定としていたが,まだ購入していない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では,蛋白発現を免疫組織化学的に解析するための試薬.また,細胞培養に関連する器具と試薬,プラスミンインヒビター遺伝子導入の効果判定のための試薬および目的遺伝子の導入効率判定や腫瘍抑制の効果判定に使用する実験動物が必要である.これらの購入費と,成果発表のための旅費,印刷費等を必要な経費として使用する予定である.
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