2014 Fiscal Year Research-status Report
揮発性麻酔薬の虚血心筋保護作用におけるユビキチン・プロテアソーム系の役割の解明
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26463081
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
宮前 雅見 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (20298821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 元三 朝日大学, 歯学部, 教授 (40283311)
金田 一弘 大阪歯科大学, 歯学部, 講師(非常勤) (90533886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ubiquitin / volatile anesthetics / ischemia / reperfusion / heart |
Outline of Annual Research Achievements |
Ubiquitin proteasome system (UPS) はリソゾームを介さない細胞内の異常タンパク質を処理する経路である。オートファジーがミトコンドリアなどの大きな細胞内器官をリソゾームを介して貪食するのに対して、小さいタンパク質はUPSにより修飾を受け分解される。近年、ユビキチン修飾がエンドサイトーシス・DNA修飾・翻訳調節・シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わっていることが判明している。本研究の目的は、臨床で用いられる揮発性麻酔薬の心筋保護作用におけるUPSの役割を明らかにし、全身麻酔時における周術期心筋保護に最も有効な麻酔方法の確立を分子生物学的手法を用いて解明することである。今年度は以前よりのテーマである揮発性麻酔薬の虚血心筋保護作用におけるオートファジーの役割と心筋保護にアデノシンを介して関与するdipyridamoleに関しての研究を継続して行った。Ubiquitin proteasome system はオートファジーと密接な関係があり、まずオートファジーの役割を詳細に解明する必要があった。その結果、セボフルランはオートファジーを増強することにより細胞の生死に大きく関与するmitochondrial permeability transition pore (MPTP)の開口を阻止することが判明した。また、dipyridamoleの心筋保護効果は投与中止後も3日間は持続し、この効果にはAktおよびendothelial nitric oxide synthaseのリン酸化増強が関与することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的である揮発性麻酔薬の虚血心筋保護におけるUbiquitin proteasome system (UPS)の役割を解明する前に、以前の研究テーマであるオートファジーの役割およびアルコールとの関係の解明に予想よりたくさんの時間を割かなければならなかった。また、研究代表者の宮前の所属機関が変更となったため、種々の手続きが必要となり、研究目的の達成に遅れを生じている。今後は研究速度を加速させ遅れを改善する所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のこれまでの研究でオートファジーが虚血心筋に対して保護的に作用することが明らかになった。また、この作用は揮発性麻酔薬の虚血心筋保護作用にも関与していると考えられる。Ubiquitin proteasome system はオートファジーと密接な関係があり、今後は UPSの関与の解明に全力を注ぐ予定である。このメカニズムが解明されれば冠動脈疾患を有する患者の周術期の管理に大きな戦略の一つとなる。これまで調べたオートファジー関連蛋白に加えcathepsin B, Beclin-1など、アポトーシス関連酵素であるMAP kinases, caspaseの発現をwestern blotと免疫組織化学染色で検討する。これらの発現と梗塞サイズの関係を明らかにする。さらに、これまで提唱されている心筋保護のメカニズムの中で特にミトコンドリアを中心に研究を進めて行く予定である。細胞の生死に大きく関与するmitochondrial permeability transition pore (MPTP)の開口に関して詳細に検討する。特にオートファジーがMPTP開口にどのように関与するのかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者の宮前の所属機関が変更となったため、種々の手続きが必要となり、実験計画に遅れが生じ、予定通りに予算の使用ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モルモットを使用して心筋組織を採取する。これらの動物の購入(約100匹、1匹;6000円)に研究費を使用する。再灌流後の心筋を用いwestern blotにてfree ubiquitinの発現を調べセボフルランのUPSへの影響を検討する。また、Western blot,免疫組織化学染色でアポトーシス関連蛋白、オートファジー関連蛋白がどのように変化するかを明らかにする。一方、心筋細胞分離を行い、これらの細胞を用い、セボフルランの投与でUPSがどのように影響を受けるかをATP-dependent proteasomal activity、ubiquitin-conjucated proteinsを測定して検討する。これらの試薬などに研究費を使用する。また,その成果を国内学会(日本麻酔科学会)で発表する旅費や資料作成、研究補助に研究費を使用する。
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