2015 Fiscal Year Research-status Report
人工呼吸関連肺炎予防のための経口気管挿管患者に対する最適な口腔ケア方法の確立
Project/Area Number |
26463083
|
Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
岸本 裕充 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30291818)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 口腔ケア / 口腔清掃 / 人工呼吸 / 肺炎 / CPIS / ランダム化比較試験 / 汚染物の回収 / 気管挿管 |
Outline of Annual Research Achievements |
集中治療領域において,人工呼吸器関連肺炎(VAP)は頻度の高い院内感染症の一つであり,死亡率や入院期間・医療費を増大させる.経口気管挿管患者では、気管チューブに沿って口腔細菌が咽頭部を経由して誤嚥しないように,口腔・咽頭の汚染物を確実に吸引・回収することを重視すべきである.ところが,従来の口腔ケア方法では歯面や舌背部に付着していた細菌を咽頭部に落下させている可能性を否定できない.一方,米国CDC「医療関連肺炎予防のガイドライン2003」で推奨されている「包括的口腔衛生プログラム」を容易に実践できるようキット化された「Q・Care」は,ディスポーザブルの吸引歯ブラシと吸引スワブ,抗菌性を有する湿潤ジェルがパッケージされており,口腔ケア中に生じた汚染物の回収に有用と考えられる.そこで本研究では,VAPの予防を目的とし口腔ケア方法の介入研究(前向きランダム化比較試験)を行った. 当院に救急搬送され,経口気管挿管となった患者を対象とした.1日の口腔ケア回数は3回で,介入群の口腔ケアにはQ・Careを使用し,対照群は従来通りの口腔ケア(市販歯ブラシとスワブで清掃した後に精製水10mlで洗浄し吸引)とした。CPIS(Clinical Pulmonary infection Score)スコア6 点以上をVAP と診断した. 有効症例数のうちVAP発症は,介入群では20例中3例,対照群では16例中9例であり,介入群でVAP発症が有意に減少した(p<0.01) Q・Careを用いた口腔ケアは従来の方法よりも看護師の負担を軽減し,VAP予防にも有効であったが,さらにVAPの発症を少なくするには,ケア回数を増やすなどの追加介入が必要と思われる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
救命救急センターに緊急搬送され,気管挿管を受ける患者を対象としているため,人工呼吸器関連肺炎(VAP)を発症する患者が多く,対照群(従来までの当院での口腔ケアを実施)に比較して介入群(ディスポーザブルの口腔ケアキットを使用)で,VAPの発症を有意に抑制できている.これは非常に意義深いことであるが,長期の気管挿管となる患者のみを対象とするため,短期間で抜管となる症例が脱落例となることから,症例の集積が予想よりも,やや遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
VAPの発症を少なくするには,ケア回数を増やすなどの追加介入が必要で,追加のプロトコールを倫理審査委員会に提出するための準備中.
|
Causes of Carryover |
平成26年度に購入した消耗品の一部が在庫として残っており、平成27年度末に購入予定であったものを平成28年度へ繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に口腔ケア用品を購入予定。
|