2015 Fiscal Year Research-status Report
二次口蓋癒合におけるTGF-β superfamily シグナル伝達経路の解明
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26463100
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中嶋 昭 日本大学, 歯学部, 助教 (50297842)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TGF-β / 口蓋裂 / 二次口蓋 / 分子生物学 / 成長・発育 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】TGF-β受容体(TβR)は3種の異なるisoformが存在し、二次口蓋癒合上皮(MEE)ではそれらの強い遺伝子発現を認めることが明らかとなっている。しかし、3種いずれのknockoutマウスでも、胎生期の口蓋癒合前に死亡することが報告されている。そこで、siRNAにて各受容体をknockdownさせた際の二次口蓋癒合過程を観察し、さらにMEEに強い発現を認めるTGF-β下流遺伝子Smad2のリン酸化への影響、およびTGF-β3 knockoutマウスでMEEにおける発現が減少するMMP-13についても検討を行った。【試料および方法】胎生13日のマウス口蓋の器官培養にて、それぞれ受容体のsiRNA (siTβR-I, -II, -III)をtransfectし、72時間培養した。Control群については、control siRNAをtransfectした。口蓋癒合については顕微鏡下で観察した。マウス口蓋MEEを採取後、p-Smad2の発現量の相違についてはSDS-page Western blot法にて、MMP-13の遺伝子発現についてはreal time RT-PCR法にてcontrol群とsiTβR群との比較を行った。【結果および考察】300 nM siTβR-I, -II, -III群では、control群と比較し、target受容体の発現を85%以上抑制した。口蓋癒合については、control群が癒合完了している72時間後で、いずれのsiTβR群においても癒合不全が生じており、siTβR-Iおよび-II群はsiTβR-III群に比べて癒合不全を生じる率が高かった。p-Smad2の発現は、control群に比較して、いずれのsiTβR群も有意に減少し、さらにsiTβR-I群および-II群の方が、siTβR-III群より有意に減少していた。一方、MMP-13発現も、siTβR-I群および-II群ではcontrol群と比較して有意に減少し、siTβR-III群では影響は少なかった。以上より、二次口蓋癒合には、TβR-IIIよりも、TβR-IおよびTβR-IIが下流遺伝子に及ぼす影響が大きかった。【結論】口蓋癒合には、すべての受容体の機能が関与しており、特にTβR-IおよびTβR-IIの影響が大きいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.TGF-β inhibior (LY2109761)を添加(10n M, 25 nM, 50 nM)処理下における二次口蓋成長発育の観察:胎生13日目のマウス口蓋突起のみ摘出し,フィルター上に試料をのせ,濃度50nMのTGF- receptorのinhibitorをBGjb medium (Gibco) 溶液に入れorgan cultureを72hまで行う。 2. MEE細胞の単離およびreal-time RT-PCRによるmRNA発現の定量解析:MEE細胞を単離を行った後、mRNA extraction kit(Quiagen)を使用し,MEE細胞のmRNAの抽出を行う。抽出したmRNAより1 st strand RT-PCR法でcDNA合成を行う。PCR primerを設計合成し,Quantitative real time RT-PCR法により上記遺伝子の増幅を行い,遺伝子発現を検討する。 3. Western blot法によるTGF-β receptor遺伝子タンパク発現の定量解析:胎生13日目のマウス二次口蓋をinhibitor処理し,organ cultureしたsampleを,lysis bufferにてhomogenizeを行い,SDS-page Western blot 法にて,Target遺伝子タンパク発現量をコントロールと比較し確認を行う。また,濃度依存性であるかどうかについても検討を加える。 4. HE染色による二次口蓋の組織学的観察:上記の手法にてinhibitorを含有したmediumにて二次口蓋のorgan cultureを行い、E13+24h, E13+48h, E13+72hの培養時間で4% paraformaldehydeで固定した後,凍結切片を作製し,HE染色を行う。それぞれのreceptorをinhibitした際の二次口蓋の癒合状態について光学顕微鏡にて観察を行なう。 以上1~4に記載した「研究の目的」について、マウス胎児E13の二次口蓋についてTGF-βのsiRNAを反応させ、72時間まで培養を行い、Western blot法にてそれぞれのreceptorの発現が抑制されているか確認し、inhibitorの濃度依存的にreceptorのタンパク発現は減少し、50nMの濃度のinhibitor条件下で、両receptorを約80%の発現抑制することを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26および27年度に得られた結果を基にして,平成28年度以降はinhibitor処理した際の,二次口蓋の免疫染色にてdown stream遺伝子の観察を行う。リン酸化タンパク発現量についてはWestern blot (SDS-page)法にて調べ,転写因子の遺伝子発現についてはQuantitative real time RT-PCR法にて検討を行う。 1. 免疫染色:siRNAでtransfectしたorgan cultureにて得られたサンプルを4% paraformaldehydeで固定した後,凍結切片を作製し,Zymed immunohistochemistry kit にてdown stream 遺伝子の免疫染色を行い発現を観察する。 2. Down stream遺伝子のタンパク発現:siRNAのtransfect確認後,Smad2およびSmad3等のSmad-dependent遺伝子のphosphorylation,TAK/MLK3/MEKK1からJNKおよびp38のsignaling pathwayもしくはERK1/2に代表されるMAPK等のSmad-independentのsignaling pathwayについても観察を行う。 3. Down stream遺伝子の遺伝子発現:siRNAのtransfect確認後,二次口蓋の成長に関与しているとされているMsx, Tbox, Runx等のTranscription factorの遺伝子発現について、TGF-βのreceptorがそれぞれknock downした際、どのように影響するかについて、real time RT-PC法にて調べ,二次口蓋癒合時のTGF-β signalingの全容について明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
平成27度に申請した予算のうち、各種抗体および実験器具ついて購入業者等の変更を行った結果、予定より多少の減額となったが概ね予定額であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降は、inhibitor処理した際の、Smad-independent遺伝子のphosphorylationの発現を観察する。さらに、二次口蓋上皮MEEおよび間葉組織のcell proliferationについてはBrdU法、およびapoptosisについてはin situ TUNEL染色法にて観察を行う。Smad-independent遺伝子の発現分布および定量解析については、Downstreamである、TAK/MLK3/MEKK1およびERK1/2遺伝子、さらにp-38およびJNKのphosphorylationに与える影響について定量解析を行う。Target遺伝子のdistributionについては、前述した凍結切片にて免疫染色を行う。統計処理による総合評価については、得られた総合的に評価し、western blotおよびreal time RT-PCRにおけるtarget遺伝子とstandard遺伝子とのrelative amountを算出した後、有意差検定を行う。以上、実験動物や試薬等の物品費、成果発表するための旅費や学会参加費、そして論文作成時の英文校正料や投稿料に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)