2014 Fiscal Year Research-status Report
小児抗癌剤障害歯の長期保存の可能性―歯根障害モデルを用いた予後の解析―
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26463110
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三富 智恵 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00313528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 芳朗 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60303129)
河野 承子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10397127)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯の形成障害 / 抗がん剤 / 歯根 / ヘルトビッヒの上皮鞘 / 象牙芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根形成期におけるアルキル化抗がん剤による歯根形成障害の機序を形態学的に解析した。H26年度は歯根形成障害の経時的変化の解析を行う事を目的に、実験モデルとして生後15日齢のラットにBusulfan7.5ml/kgを腹腔内投与し、投与後1日、3日、5日、9日、12日後の組織像を免疫組織学的に、特にヘルトビッヒの上皮鞘、骨様象牙質の形成機序に焦点を当てて観察した。 Bu投与群では、投与後3日目に根尖部の象牙芽細胞の配列にわずかな乱れが認められ、5日目に骨様象牙質の形成がみられた。9、12日目では顕著な骨様硬組織形成が観察され、根尖部の閉鎖傾向が認められた。Nestin免疫染色では、投与後5日目の骨様象牙質の細胞成分が免疫陽性を示し、9、12日目には多数のNestin陽性細胞が骨様象牙質に埋入されている像が観察された。サイトケラチン14(CK14)免疫染色では投与後3日目にヘルトビッヒの上皮鞘の配列の乱れが観察され、5、9、12日目では細胞数の著しい減少を認めた。しかしながら、connexinの発現はヘルトビッヒ上皮鞘の崩壊後も持続していた。Laminin免疫染色では、5日目まで基底膜構造は断裂することなく存在していたが、9日目には細胞数の減少とともに萎縮していた。歯根長は、1、3、5、9日目でコントロール群に比較して短く、根尖孔の幅は全ての日齢においてコントロール群に比較して狭小化していた。また歯根象牙質の厚みは、1、3、5、9日日でコントロール群に比べて小さかった。 これらの結果から、Busulfan投与後5日以内にヘルトビッヒ上皮鞘に何らかの異常が起こり、その崩壊が始まり、その後、象牙芽細胞の配列が乱れ、骨様象牙質の形成によって、根尖孔の早期縮小が生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度では歯根形成期の抗腫瘍薬投与が歯根形成に与える影響について経時的な観察を行い、臨床的に認められる歯根短縮に相似する組織的な変化を観察することが出来た。象牙芽細胞マーカーとしてNestin、およびヘルトビッヒの上皮鞘マーカーとしてCK14を用い、歯根発生において重要な役割をすると考えられるこれらの細胞成分が、抗腫瘍薬投与後5日以内に、何らかの障害を受けて正常な細胞分裂、および細胞の配列の乱れが生じることを組織的に明らかにすることが出来た。また骨様象牙質形成が経時的に進み、根尖孔の早期縮小と歯根短縮をもたらすことを明らかにし、内容の一部をH26年日本小児歯科学会大会で発表し、当初の目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度の実験結果を基に、ヘルトビッヒの上皮鞘の消失がどのように起こるのか明らかにするためにTUNNEL 法を用いてアポトーシスの有無を明らかにする。骨様象牙質に関しては、象牙芽細胞の分化に焦点を当て、象牙芽細特異的マーカーを用いて、基質形成(象牙質基質タンパク)の発現および局在、細胞極性の変化をGolginの発現を解析することによって明らかにする。さらに、ヘルトビッヒの上皮鞘の消失がセメント芽細胞の分化にどのような影響を及ぼすのか解明するために、セメント芽細胞特異的マーカーを待いて解析する。 歯根膜でもマラッセの上皮遺残(ERM)が顕著な障害を受けるため、ERMが正常に機能していない可能性が示唆され、障害歯の口腔内での長期保存に悪影響を与える可能性が予測される。本年度は、根尖部異常骨様象牙質、及び、ERMが障害を受けた歯根膜の恒常性に焦点をあて、抗がん剤による異常根尖構造、及び、ERM傷害歯根膜を正常歯と生理的機能条件下(成獣時)で免疫組織化学的及び組織形態学的に長期観察・比較し、障害歯の長期的な機能維持・保存に関する知見を得る。具体的には、マラッセの上皮遺残の消失の影響を連続切片上で歯根膜パラメータ(骨芽細胞数、破骨細胞数、線維芽細胞数、歯根膜細胞数、歯槽骨吸収面、歯槽骨形成面、上皮細胞数)を計測して、正常歯根膜の加齢変化によるパラメータと比較して統計的に解析する。
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Causes of Carryover |
研究はほぼ順調に進んでいるが、当初の予定より組織形態学的検索に時間を要し、予定していたヘルトビッヒ上皮鞘の消失にかかわるTUNNEL法を用いたアポトーシスの有無の検索および象牙芽細胞特異的マーカーを用いた基質形成の発現検索が実施途中である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度より継続中のアポトーシスの有無の検索や象牙芽細胞特異マーカーを用いた基質形成検索を進めるとともに、本年度研究目標となる、障害歯歯根膜の長期的予後観察(歯根膜の加齢変化)に、H26年度に未使用であった研究費とH27年度研究費が充てられる。 以上で得られた成果については、小児歯科学会北日本地方会(福島)での発表を予定しており、研究費の一部は旅費として使用する。また、英文雑誌への投稿も予定しており、投稿に関わる英文校正、投稿料、印刷費等も予定される。
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Research Products
(1 results)