2015 Fiscal Year Research-status Report
成長軟骨細胞が自ら産生する分泌性蛋白質による分化制御
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26463113
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
日高 聖 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10389421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅哉 植草学園大学, 保健医療学部, 教授 (20446115)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軟骨細胞分化 / 分泌性蛋白質 / IGFBP5 / FGFR5 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分泌型蛋白質のスクリーニング法として極めて有効な手法であるSST-REX法(Signal Sequence Trap based on Retroviral Expression)を応用し、軟骨細胞分化にあずかる分泌性蛋白質因子の網羅的な同定を試みている。マウス肋軟骨成長板軟骨より、本スクリーニング法によってシグナル配列を含むcDNAが導入されたBaF3細胞のコロニーから、collagen type 1 α2 chainとtype 2 α1 chainを除外した313クローンを単離し、塩基配列を決定した。その結果、約70種のシグナル配列を有する分泌蛋白および膜蛋白質を同定した。この中から硬組織形成との関連が示されているInsulin-like growth factor binding protein 5 (IGFBP5) およびFibroblast growth factor receptor 5(FGFR5)に注目し、in situ hybridization解析によって、IGFBP5は増殖軟骨細胞に、FGFR5は増殖軟骨細胞から肥大軟骨細胞にかけてそれぞれ特異的に発現していることを突き止めた。 さらに、軟骨細胞分化モデル細胞株ATDC5の各培養段階の細胞からtotal RNAを抽出し、半定量的RT-PCR法によりIGFBP5およびFGFR5の発現を評価したところ、分化誘導以前の線維芽細胞様の状態ではほとんど認められなかったものが、IGFBP5は培養10-15日目を、FGFR5は培養15-25日目をピークとして発現が上昇していることが明らかとなった。これは先述のin situ hybridization解析で得られた結果と同様の発現パターンであることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SST-REX法による軟骨細胞自身が産生する分泌性蛋白質因子の同定は進んでおり、これらの中から注目したInsulin-like growth factor binding protein 5 (IGFBP5) およびFibroblast growth factor receptor 5(FGFR5)については、in situ hybridization解析により成長軟骨組織中での局在をすでに同定している。続いてモデル細胞株を用いた軟骨細胞分化に与える直接的な影響の評価を試みている。 軟骨細胞分化モデル細胞株ATDC5を用いたin vitro での評価として、(1)IGFBP5をsiRNA法により発現抑制すると、ATDC5細胞の分化は顕著に抑制された(未発表)。培地へのIGFBP5蛋白質の添加によってこの抑制がレスキューされるか、解析を継続している。(2)FGFR5については、分担研究者である山本雅哉教授(植草学園大学)と協力して、FGFR5のshort-hairpin RNAウイルスおよび変異体を含む発現ウイルスを作成した。これらを軟骨細胞分化モデル細胞株ATDC5に感染させ、その影響を解析している。以上から、おおむね当初の計画通りに研究が進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、先述の軟骨細胞分化に与える直接的影響の評価に加えて、その結果を与える原因、つまり分化調節メカニズムの考察を計画している。 つまり、(1)IGFBP5によるIGFシグナル伝達経路の修飾について、IGFRの下流にあるPI3KやSHP-2、ERK-1の活性化を、抗リン酸化抗体を用いたウェスタン・ブロットによって評価する。(2)FGFR1とClothoが結合してFGF23シグナルを伝達するように、共役受容体との結合によって特異的なFGFのシグナルを伝えているという仮説をもとに、FGFR5特異的リガンドおよび共役受容体の特定とシグナル伝達経路活性化機構の検討を行う。この実験も、分担研究者である植草学園大学の山本雅哉教授と共同して行う。
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Causes of Carryover |
本年度は少額の物品の購入と学会出席のための旅費を支出したのみであったため、次年度以降の消耗品購入および研究打合せの旅費のために繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、研究計画として機能解析が計画通りに進まない場合に想定していた推進方策、つまりSST-REX法によるスクリーニングによって得られた約70種の分泌蛋白質・膜蛋白質因子から新たなる候補因子を探索する実験に使用することが可能である。具体的には、硬組織形成との関連が示されているDentin matrix protein 1(DMP1)や、細胞外基質蛋白質との接着を阻害する機能が報告されているSecreted protein acidic and rich in cysteine-like 1(Sparcl1) を新たな候補因子として想定している。実験方法としては、in situ hybridization解析を含めて上記のIGFBP5に関する計画と同様である。
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