2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎で誘導されるインフラマソーム活性化が動脈硬化に及ぼす影響とその制御
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26463145
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
落合 智子 (栗田智子) 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (20130594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯周炎 / インフラマソーム / 動脈硬化 / 酸化ストレス / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. ApoEshlマウスへのA. a.感染は4-hydoroxynonealやox-LDL, phospholipase A2の大動脈組織での発現増加、血清中のox-LDL, 8-oxo-2’-deoxyguanosineおよびmyeloperoxidaseレベルの増加、NADPHオキシダーゼ、calveolin-1, receptor for advanced glycation endoproducts の大動脈での遺伝子発現増加等の結果から、LDL酸化を促進した。P. g. においてもまたLDLの酸化変性増強作用(4HNE, ox-LDL, PLA2, MPO, CD36の大動脈組織での発現増加や心臓組織におけるLOX-1やNADPHオキシダーゼの発現増強)が認められた。In vitro実験において、P. g.及びP. g. LPSは菌数依存的に単球及び血管内皮細胞からの活性酸素(ROS)産生を増強した。 更に、P.g.は抗ox-LDL抗体と反応することが確認され、この反応性はジンジパイン阻害剤やジンジパイン欠損株で有意に抑制された。従って、P.g.はox-LDLと共通エピトープを有し、P. g.による直接の酸化作用のみならず、分子相同性による炎症増強にも関与している可能性が示唆された。 2. 酸化LDL刺激未熟樹状細胞の確立と制御性T細胞への誘導を試みるべく、骨髄から単離した未熟樹状細胞を酸化LDLと共にマウスへ移入した。移入後、2, 4, 6, 8, 10日目にレシピエントマウス脾臓からCD4+T細胞を単離し、CD25+Foxp3+陽性率を検討した結果、8日目で最大となった為、移入8日目のCD4+CD25+Foxp3+ T細胞を実験に供した。現在、CD4+CD25+Foxp3+ T細胞の増殖能や抗原特異性を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周病原性細菌P. ginigivalis(P. g.)の経口感染は、種々のインフラマソーム(NLRP3, ASC, Caspase-1)を活性化して炎症性サイトカイン産生を誘導し、その結果Th17細胞の誘発、IL-17の増強により慢性炎症が持続する可能性が示唆された。またApoEshlマウスへのP. g.又はA. a.感染はLDLの酸化変性増強作用(4HNE, ox-LDL, PLA2, MPO, CD36の大動脈組織での発現増加や心臓組織におけるLOX-1やNADPHオキシダーゼの発現増強)を誘導した。In vitro実験において、P. g.及びP. g. LPSは菌数依存的に単球及び血管内皮細胞からの活性酸素(ROS)産生を増強した。更に、P.g.はox-LDLと共通エピトープを有し、P. g.による直接の酸化作用のみならず、分子相同性による炎症増強にも関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周病原菌感染で生じる歯肉の炎症や歯槽骨吸収および内皮細胞の炎症や動脈硬化に、インフラマソームを介した炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-18)の産生やLDLの酸化変性増強作用、およびTh17細胞やIL-17の増強による慢性炎症が深く関与していることが示唆されたので、今後はこれらの慢性炎症の予防に抗炎症、抗酸化作用を有するプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)やプレバイオティクス(オリゴ糖)の胃内投与がどのように口腔内環境や動脈硬化を改善できるか検討する。更に感染により誘発されるインフラマソームの活性化と慢性炎症及び動脈硬化の発症との因果を明らかにし、予防・治療の効果的戦略について総合評価を行う。
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Causes of Carryover |
Apoeshlマウス供給元の感染事故により供給が一時的にストツプしてしまった為、実験計画が延期になってしまった。昨年末にApoeshlマウスの供給が開始されたが、匹数が制限されている為十分な実験が出来ていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、Apoeshlマウスにプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)やプレバイオティクス(オリゴ糖)を事前投与後、P.g.菌を経口感染し歯肉の炎症状態を免疫組織染色により明確にし、更に歯肉の樹状細胞やリンパ球の細胞動態をフローサイトメトリーにて解析する。また歯槽骨吸収量をデジタルHDマイクロスコープにて計測する。更に代表的歯周病原菌による、又は自然発症的に誘導される動脈硬化が、プロバイオティクスやプレバイオティクスによる口腔内環境の改善により制御されるか否かをOil-red O染色による動脈硬化面積測定、炎症性サイトカイン、酸化ストレス、酸化LDLやLOX-1の定量により検討する。
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Research Products
(30 results)