2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌による動脈硬化発症における先天性免疫因子gp-340の関与
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26463166
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50160940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00304816)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / 動脈硬化症 / gp-340 |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptococcus mutansによる動脈硬化誘発に関与するgp-340の作用を調べるために、前年度はヒト動脈内皮細胞(HAEC)を用いた。その結果、数株のS mutansは、HAEC におけるgp-340のmRNA発現レベルを上昇させたが、タンパクレベルでの発現は十分に確認できなかった。そこで本年度は、別種類の内皮細胞としてヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)を用いて同様の実験を行った。 1.まずS. mutans の各血清型(c, e, f)およびStreptococcus sobrinusの各血清型(d, g)2株ずつを用いて研究を行った。それぞれの菌株をHCAECとMOI=1で48時間共培養した後、HCAECを回収し、gp-340のmRNA発現レベルを調べた。その結果、対照に比してS. mutans OMZ175は3.4倍、MT3940は3.9倍、B14は3.2倍の発現を示し、S. sobrinus P1は3.1倍の発現を示した。次に他の口腔レンサ球菌5株を用いてMOI=1、24時間またはMOI=1,000、2時間の共培養を行ったところ、Streptococcus oralis ATCC10557が最も高い2.6倍の発現を示した。さらに、歯周病細菌Porphyromonas gingivalis 381を用いたところgp-340のmRNA発現レベルは1.8倍であった。 2.gp-340のmRNA発現レベルが高かったS. mutans、S. sobrinus、および他の口腔レンサ球菌やP. gingivalisを用いて、HCAECと共培養した後、HCAECを回収し、gp-340のタンパク発現レベルを網羅的に調べた。抗gp-340抗体を用いた共晶点レーザー顕微鏡観察では、いずれの菌株も対照に比して蛍光強度に顕著な差は認められず、十分なgp-340のタンパク発現は認められなかった。 3.以上の結果から、S. mutansおよび他の口腔細菌との共培養によりHCAECにおけるgp-340の発現は、mRNAレベルでは上昇したが、タンパクレベルでの発現はHAECと同様に十分ではないことが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
S. mutansによる血管内皮細胞からのgp-340の発現誘導を確認し、S. mutansの内皮細胞への付着・凝集に及ぼすgp-340の作用を検討する予定で研究を行ってきた。これまで動脈硬化症の発症部位を想定して、まず大動脈血管内皮細胞(HAEC)を用いたが、gp-340のタンパクレベルでの発現が弱かったため、他の内皮細胞として心臓の冠状動脈内皮細胞(HCAEC)を用いて実験を行った。gp-340のmRNAレベルの発現上昇は認められたものの、タンパクレベルでの発現はやはり弱く、その機能を調べるに至らなかった。 さらにS. mutansに限らず、これまで動脈硬化病巣から検出されている他種口腔レンサ球菌や歯周病細菌を用いて同様の実験を行ったが、gp-340のタンパクレベルでの発現は十分ではなかった。 これらの理由から、達成度としては半ばであり、使用する血管内皮細胞、刺激に用いる口腔細菌についてさらなる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
gp-340のタンパクレベルでの発現を十分に認められる系を確立する必要がある。これまでの報告で、gp-340タンパクの発現がヒト静脈内皮細胞や末梢の微小血管内皮細胞において認められている。末梢の微小血管において発症する閉塞性の動脈硬化症は近年増加傾向にあり、研究対象としては意義があるので、この微小血管内皮細胞を用いる計画である。 また実験の手技的な面では、微弱なタンパク発現を示すgp-340の検出法についての検討が必要である。現在行っている蛍光抗体を用いた検出法は感度の高い方法であるが、用いる抗体の種類、細胞の前処理法など染色・検出する方法の工夫が必要である。 さらに一方でgp-340の機能面の解析として、血管内皮細胞と菌体を共培養する際の菌体凝集塊のでき方を菌体のみの場合と比較しながら経時的に顕微鏡観察する。その際の培養上清や菌体を回収し、それらに含まれるgp-340を定量することにより、gp-340のタンパクレベルでの発現を調べることができる。
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Causes of Carryover |
当初計画で明らかにする予定であった冠状動脈内皮細胞におけるgp-340タンパクの発現が、十分に示されなかった。従って、その次に予定していたgp-340の機能分析へ進むことができなかった。当該研究に用いる予定の消耗品費を使用しなかったため、次年度使用額を生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、微小血管血管内皮細胞を用いてgp-340タンパクの発現を検索する。その後、gp-340の機能分析を進め、この費用を使用する予定である。
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