2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌のECFシグマ因子を利用した新たな歯周病予防法の開発
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26463171
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
菊池 有一郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30410418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
柴山 和子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60408317)
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯周病原細菌 / Porphyromonas gingivalis / 環境ストレス / シグマ因子 / ECFシグマ因子 / バイオフィルム / 薬剤感受性 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.PGN_1740が直接転写調節しているバイオフィルム形成増加因子の同定 PGN_1740変異株におけるバイオフィルム形成増加に関係すると予測されるタンパク質Xについて、PGN_1740が直接そのタンパク質をコードする遺伝子のプロモーター領域に結合するかEMSA解析を行うことにした。最初にPGN_1740の組換えタンパク質(ヒスチジンタグ)を大腸菌にて発現・精製した。次に5'-RACE法によりタンパク質X遺伝子の転写開始点を同定した。次に予測されるプロモーター領域のオリゴを合成し、EMSA解析を行った。その結果、PGN_1740はタンパク質X遺伝子のプロモーター領域に結合することが判明した。よって、PGN_1740はあるタンパク質Xの転写を調節し、菌のバイオフィルム形成をコントロールしていることが判明した。
2.ECFシグマ因子と薬剤感受性との関連性 Porphyromonas gingivalis (P. gingivalis)の薬剤感受性とECFシグマ因子との間の関連性の有無について解析を試みた。実験方法としては、抗菌薬(細胞壁合成阻害剤:アンピシリン、タンパク合成阻害剤:テトラサイクリン、核酸合成阻害剤:オフロキサシン)を用い野生株とECFシグマ因子変異株のMICを測定することで比較検討した。その結果、テトラサイクリン、オフロキサシンに対する感受性に顕著な変化は認められなかったものの、アンピシリンに対する感受性はPGN_0274変異株で増加、PGN_0450, PGN_1740変異株で低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画にて当初予定していた「PGN_0274, PGN_1740支配下遺伝子群のプロモーター解析」の、PGN_1740に関しては計画通り進み、結果も得ることができたからである。PGN_0274については、連携研究者の中山浩次教授の教室にて解析が進み今年度学術論文として報告をしている。(Kadowaki T. et al., Sci Rep. 2016 Mar 21;6:23288)またこの論文にて、前年度の研究計画に挙げていた「ジンジパイン分泌および酸化ストレス回避におけるPGN_0274, PGN_1740支配下遺伝子群の解析」の研究のPGN_0274に関しては、P. gingivalisのPor分泌システムに属する二成分制御系PorX, PorYのPorXとPGN_0274が連動してジンジパインの膜外輸送を行っていることが報告された。
以上の実験と同時に行う予定であった、「PGN_0274, PGN_1740支配下タンパクに関するプロテオーム解析」は行うことができなかった。この理由として、「PGN_0274, PGN_1740支配下遺伝子群のプロモーター解析」に予想外の研究期間がかかったためである。PGN_1740の組換えタンパク質を大腸菌にて発現する時、可溶性画分に発現が増加する条件の検討に時間を要したことが一番の原因である。このことより実験計画の遅れを予想したため、来年度の予備実験になり実験準備にあまり時間がかからない薬剤感受性試験を今年度行い、P. gingivalis の病原性とECFシグマ因子との関連性について解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
「TEM観察によるECFシグマ因子変異株の表層構造解析」 薬剤感受性試験の結果にて、細胞壁合成阻害抗菌薬を作用させた時だけ、野生株と比較しECFシグマ因子変異株PGN_0274, PGN_0450, PGN_1740変異株において感受性に差が認められた。つまり、これら3種類の変異株は野生株と比較し細胞壁構造に変化が生じている可能性が高い。よって透過型電子顕微鏡TEMにより野生株、ECF変異株を観察し表層構造に違いが認められるか解析を行う。もし変化を認めた場合は、自己凝集反応、膜疎水性解析も行い、前年度の研究結果を裏付けることにする。 「ECFシグマ因子とジンジパインとの関連性に関する解析」 ECFシグマ因子PGN_0274に関しては、ジンジパインの膜外輸送に関するとの報告があったので、それ以外のシグマ因子変異株と野生株を用いてqRT-PCR法にてジンジパイン関連遺伝子の転写量の検討を行う。 「ECFシグマ因子がP. gingivalis の病原性発現に及ぼす影響の検討」 マウスを用いたin vivo実験を、P. gingivalisを皮下注射し接種部位や遠隔部位にておこる膿瘍の形成を評価する方法(Yoshimura M. et al., Oral Microbiol Immunol.23:413, 2008)や、敗血症モデル、口腔内に直接P. gingivalisを感染させ歯槽骨吸収の程度を測定する方法(Wilensky A. et al., J Clin Peiodontol. 40:924, 2013)にて行う。
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Causes of Carryover |
PGN_1740ECFシグマ因子が直接調節をしているタンパク質の遺伝子プロモーター解析(5-RACE法)をambion社の試薬キットを用いて行い、その後のEMSA解析もロシュ社の試薬キットを用いて解析した。計画当初予定していた2つの試薬キットの見積もりに対し、実際の購入金額が低かったので、次年度の研究予算として残しておくことに決定した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している「ECFシグマ因子とジンジパインとの関連性に関する解析」の中で、qRT-PCR法にてジンジパイン関連遺伝子の転写量の検討を行う予定だが、この時のqRT-PCRのTaqman primer/probeの購入に使用することにする。
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