2015 Fiscal Year Research-status Report
超高齢社会に貢献する風味形成機構解明への基礎的アプローチ
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26463192
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
溝口 尚子 明海大学, 歯学部, 助教 (00548919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 准教授 (00300830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 風味 / 脳神経科学 / 光学計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
全世代を通じて「食」は生命維持に欠かせない要素であり、QOLを高める上でも重要である。食に関する’満足感’の源は「おいしさ」を感じることである。「おいしさ」とは風味すなわち’味・匂い・舌触り’であり、とくに「味覚」と「嗅覚」が重要と考えられている。けれども中枢神経系において味覚と嗅覚の統合機構については未だ不明な点が多い。 本研究の最終目的は、味および匂い刺激に対する応答を指標に、味覚野であり嗅覚情報を含めた多様な情報を統合する領域の1つと考えられる島皮質と、嗅覚野である梨状皮質を観察し味覚と嗅覚の情報統合機構を明らかにすることである。 本年度は、全脳動物標本を作製し、鼓索神経と主嗅球からの入力に対する島皮質および周辺領域の応答について、光学計測し検討を行った。鼓索神経は味覚情報を伝達する末梢神経である。主嗅球は匂い情報を主に外側嗅索を経て梨状皮質などの大脳皮質領域へ伝える部位である。 鼓索神経と主嗅球それぞれに対し単独または同時に電気刺激(50 Hz、5回連続刺激)を行い以下の知見を得た。鼓索神経を単独で電気刺激すると顆粒皮質と不全顆粒皮質を中心とした島皮質に応答が得られ、梨状皮質には応答は認められなかった。主嗅球を電気刺激した場合には逆に、梨上皮質全体に応答が得られたが島皮質の無顆粒皮質に弱い応答が認められた他はほとんど応答を認めなかった。鼓索神経および主嗅球に対して同時に電気刺激を行うと、島皮質の一部である無顆粒皮質の応答強度が増加する傾向が認められた。以上の結果から、大脳皮質においては嗅覚情報が味覚情報に対し影響を及ぼす方向で統合が行われていると考えられる。 また、本年度は実際の匂い刺激実験にも着手した。来年度は本年度得られた知見に対し、解析を進めるとともに適宜、実際の味および匂い刺激を同時に用いた研究に移行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究初年度に実施した神経経路に対する電気刺激に関する術式では、鼓索神経束刺激時に、味覚野のみならず体性感覚野にも広く応答を認めていた。当初、舌寄りの鼓索神経線維を刺激していたために、鼓索神経線維束に含まれる味覚以外の神経(冷刺激や機械刺激に応答する神経)線維も同時に高い割合で刺激していたためと考えられた。その後、より近心に位置する鼓室付近の鼓索神経線維を刺激すると島皮質に限局した応答が得られることを確認し、この術式で実験を追加したので、当初の予定よりやや遅れている。現在、この条件で実験を重ねデータ解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である味覚と嗅覚の情報統合機構をシンプルに解明するために、鼓索神経を刺激して皮質味覚野にほぼ限局した応答が得られるようになった。その結果について現在解析を行っている。今後は、解析に平行して実際の味および匂い刺激を用いた実験を行う。
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Causes of Carryover |
本研究の進捗状況がやや遅れているため、消耗品の購入もやや遅れている。また参加を予定していたが、研究の進行の関係で参加しなかった学術大会があったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究に関する物品費および学術大会参加の旅費等に充てる計画である。
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Research Products
(3 results)