2014 Fiscal Year Research-status Report
医療現場の暴力防止に寄与する怒り感情マネジメント教育プログラムの構築
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26463284
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
田辺 有理子 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20448616)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護管理学 / 暴力 / 感情マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医療者の感情に着目して、不安や怒りへの対処に有効なアンガーマネジメントの技法を用いて教育プログラムを開発実施、その有用性を検証し、医療者自身の感情マネジメントの獲得によって、円滑な対人援助に基づいた安全な医療の推進することを目的としている。 初年度は、患者からの暴力による看護師の感情に影響する場面を精査・加工し、研修用教材事例を検討した。暴力による感情面の影響について、平成21年度から継続して実施してきた聞き取り調査の結果をもとに、患者から暴言や暴力を受けた際の同僚や上司への報告、同僚や上司からの支援などの事例を加工し、具体的にイメージを描き、感情面の安定に必要な知識の習得のための教材事例を検討した。次に、医療者の感情面の影響に着目した事例を教材として、怒りや不安の感情が生じるメカニズム、自身の感情へ適切に対処するアンガーマネジメント技法を講義と、グループによる事例検討、身近な体験を題材とした演習を組み合わせて教育プログラムを検討した。 今年度は院内研修など、教育プログラムのニーズを探りながら研修内容を紹介し、医療現場における医療者の感情マネジメントの必要性について啓発するため、看護系の学会等において主に看護管理者向けに情報提供をおこなった。院内研修の企画やニーズに応じて依頼を受け、精神科領域の看護師を対象とした研修会、総合病院のリーダー層や管理職向けの研修等を行いながら教育プログラムの構築に向けて情報収集を行った。 感情マネジメントを現任教育の一環として取り入れる必要性を認識している病院は増えつつあるが、医療安全に関するニーズよりも、医療者のストレスマネジメント、離職予防や職場内のコミュニケーションの円滑化などへのニーズが高い状況があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度は、教育プログラムの構築と教材事例の検討、教育プログラムの実施のための準備を計画し、おおむね予定通りに進行したと考える。教育プログラム実施の準備の一環として看護管理者向けに学会の交流集会で情報提供を行ったところ、プログラムへのニーズが高く、年度内の研修開催の依頼があり、教育プログラムの評価の準備が整わないうちに教育プログラムの実施を開始することとなった。次年度は、教育プログラム実施後の評価を計画していることから、評価準備を進め、実施と評価を並行して進められるようにしたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目からは、受講者の知識の定着や感情マネジメントに関する行動変容、医療安全の強化に向けて、教育プログラムの評価について検討する。教育プログラムの提供とともに、臨床の教育担当看護師と協働して現任教育における感情のマネジメント技術の定着を評価する。 医療現場の暴力・暴言を教材とした感情マネジメントについて、構築したプログラムを用いた研修を実施する。新人研修、中堅、管理職など、看護師の職位別に細分化し、あるいは各医療専門職および事務職などニーズに応じて対象者を広げることを検討する。安全な医療環境の確保に向けた暴力対策の知識教育とともに、医療者自身の感情マネジメントの必要性を啓発する。 患者や同僚・上司への感情表現と行動の変化を評価指標として、教育の有用性を検討する。得られたデータをもとに教育プログラムに修正を加え妥当性を高める。初年度の研修のニーズを踏まえ、暴力に限定した事例だけでなく「怒り」や「不安」といった感情を捉えた対処技術を加えるなど、教育プログラムの実施と評価および改善を繰り返しながら進めていく。
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