2015 Fiscal Year Research-status Report
国際糖尿病連合と連携した糖尿病ピアサポート組織化とピアリーダー養成に関する研究
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26463302
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
森川 浩子 福井大学, 医学部, 講師 (10313743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
任 和子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40243084)
黒江 ゆり子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (40295712)
大橋 健 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (40376463)
岡崎 研太郎 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90450882)
安田 宜成 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432259)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖尿病 / ピアサポート / 自己管理 / ストレス / エンパワメント / 対処行動 / 慢性腎臓病 / 国際糖尿病連合 |
Outline of Annual Research Achievements |
【本研究の目的】国際糖尿病連合と連携し、医療機関でなされる「知識・技術伝達型教育」を補完するために、医療機関との調整を得て、患者(当事者)による自己管理行動支援(ピアサポート)を開発・評価することを目的とする。 1) 糖尿病ピアサポートに関するシンポジウム開催:平成27年9月5日13:30~17:00 名古屋大学医学部第4講義室において開催した。このシンポジウムでは、国際糖尿病連合が研究推進する“Peer Support Around the World”の活動について紹介した。さらにわが国の疾病構造・医療経済・糖尿病ピアサポートについて検討した。糖尿病は自己管理が求められる疾患であるが、不規則な生活やストレスなどにより、困難な状況にある患者は多い。個人レベルで対処するだけではなく、同じ経験のある仲間の支援を受けることの重要性が討議された。 2)『なごやか腎臓病教室春季特別講演会』にむけて準備:平成28年4月10日13:30~ 16:00、名古屋大学附属病院講堂において、教育講演とともに、『劇場 家族・友人と糖尿病について話し合おう』を開催した。『劇場』開催に向けて、シナリオ作成・アンケート作成・患者用テキスト作成(腎臓にやさしい生活)を行った。『劇場』には、患者・医療職者が190名参加し、アンケート回収率は76%であった。アンケートは、ARCS-Vモデルを用いた。アンケートは、福井大学医学部研究倫理審査委員会の承認を得て行った。さらに『劇場』を視聴覚教材業者によりDVD録画し、アンケート用紙・患者用テキストとともに、糖尿病性腎症の研究者らに送付し、多くの意見を得た。 3)国際糖尿病連合と連携した糖尿病ピアサポートにむけて活動:平成28年10月27~30日、台湾において第11回 国際糖尿病連合西太平洋地区会議が開催される。それにむけて2)の活動を演題応募することにつなげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【現在までの進捗状況】糖尿病ピアサポートの要素を盛り込んだ糖尿病劇場が、アンケートによって、患者の高い関心度と満足をもたらしたことが示された。 1)糖尿病ピアサポートの要素を盛り込んだ春季特別講演会の成果:国際糖尿病連合から研究助成を受けている『Peers for Progress Investigators' Publications & Presentations』(2014年発行、全470頁)をもとに、糖尿病ピアサポートの理念・運営方法・多様性について、研究班で共通認識した。さらにCKD with Diabetes (糖尿病合併した慢性腎臓病)に注目し、名古屋大学医学部CKD地域連携システム講座(研究分担者:安田宜成)と協力して、糖尿病劇場を試みた。糖尿病劇場では、医療職者の役割はファシリテーター(促進者)であり、参加者(患者・家族)が中心になって、「ともに体験を語り合う仲間」として積極的に発言された。アンケートでも、「早期腎症のときにもっとできたはずだ。楽しい講義だった」など記載が多く、当事者意識の重要性が示された。 2)国際糖尿病連合との連携のステップ:平成28年10月27~30日に開催される国際糖尿病連合西太平洋地区会議に、本研究班の成果報告として、CKD with Diabetes をテーかに、糖尿病劇場という方法で伝えることの段階を踏めた。国際糖尿病連合は、開発途上国における糖尿病患者の激増と重症化に積極的に取組んでいるが、ヘルスリテラシーが低い傾向にあり、生活習慣改善が困難であり、また感染防御において脆弱である。地域の特性にあった方法で、糖尿病教育の質と量を高めなければならない。糖尿病劇場は、日本糖尿病学会年次集会などでワークショップとして多くの参加者を得ることができ、有効性が高いと評価されているが、西太平洋地区の諸国においても効果的であるか、予測できない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)糖尿病ピアサポートの効果判定:平成28年9月予定『なごやか腎臓病教室秋季特別講演会』において、平成28年4月に開催された『劇場 家族・友人と腎臓病について語り合おう』の続編として、「自己管理にピアの力を得ましたか?」(仮題)を糖尿病劇場で行う。また患者が主体性をもって、自分の健康維持のために、ピアサポーターとともに取組んだか?考えてもらう機会にする。 2)糖尿病劇場を他の医療機関で展開:わが国では、慢性腎臓病の患者は1340万人存在するが、自覚症状が乏しいため重症化することがあり、末期腎不全に至る患者も多い。慢性腎臓病と診断されても「患者会」に入りたがらない患者が多くおられ、患者会の存続が困難な施設も多い。他の医療機関の担当者の要望を伺い、対象者の特性にあったものに、糖尿病劇場のシナリオを柔軟に変化させる必要がある。 3)糖尿病ピアサポートの普及:平成28年10月27~30日、第11回国際糖尿病連合西太平洋地区会議 において、研究成果報告として、糖尿病ピアサポートの重要性・糖尿病劇場を用いた展開・患者家族の反応について発表する。また、国際糖尿病連合が「Peer Support Around the World」を世界各国で展開しているが、ピアサポート研究を立ち上げる施設が米国・ヨーロッパ・中近東に偏り、アジア・アフリカは少ない。糖尿病ピアサポートが成立するためには、医療職者と患者(当事者)の問題意識が一致することが求められているので、わが国での実践例を増やし、糖尿病教育の三要素(構造・プロセス・アウトカム)を検討し、Diabetes Care で報告する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、国際糖尿病連合の助成研究「Peer Support Around the World」の総括責任者であるエドウイン・フィシャー教授(ノースカロライナ大学公衆衛生学部)を招聘し、糖尿病ピアサポートに関するシンポジウムを開催する予定であった。しかし、京都大学医学部にエドウイン・フィッシャー教授の下で、ピアサポートについて共同研究した西垣准教授がいることがわかり、西垣准教授に糖尿病ピアサポートに関する講演を依頼した。そのため、糖尿病ピアサポート活動に対する認識を高めつつ、経費削減に繋がった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1 )国際糖尿病連合西太平洋地区会議において糖尿病ピアサポート活動の拡大を図る。 平成28年度は、国内での糖尿病ピアサポートの普及と、国際糖尿病連合西太平洋地区会議での発表を通じて、糖尿病ピアサポート拡大を目指し、実践例を具体的に示す。糖尿病劇場は、西太平洋地区の医療職者には、斬新な教育方法であると思われ、シナリオ作成やアンケートも英文に翻訳し、アジア各国の医療職者にとって利用可能なものにするために、印刷物作成に伴う経費が必要である。2)Diabetes Care にむけて討議を重ね執筆する。 わが国では、高齢単身者や老老介護の増加がおこり、家族機能の低下に対応したピアサポートという新たな枠組み(サポート)が必要である。糖尿病劇場では情報提供とともに、「ともに語り合う」場をつくることができる。研究班全員の討議を重ね、Diabetes Care に執筆・投稿するための経費が必要である。
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