2014 Fiscal Year Research-status Report
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26463371
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
國清 恭子 群馬大学, 保健学研究科, 講師 (90334101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常盤 洋子 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (10269334)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 出産体験 / 心理的健康 / アセスメントツール / 有効性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、次年度以降の調査のための準備段階として、出産体験における「満足」という概念について改めて検討するとともに、「尺度の有効性」に関して文献検討を行った。 満足について、顧客満足や患者満足を扱う研究を参考にその概念について整理した。実際の満足は感情に属するものであるが、満足とは問われてはじめて意識される包括的な評価であり、「認知による評価」と「感情に基づく反応(情動的反応)」に基づいた相対的なプロセスとも定義されている。また、患者満足調査における問題点として、反応バイアスの問題が指摘されており、本研究においても満足か否かを答える場合、対象者がケア者にネガティブな意見表明をすることへ躊躇し、認知や判断が働いて実際の感情が反映されない可能性が考えられた。国内外の出産体験の満足度を問う尺度を概観すると、多くは認知を測る評定表現であったが、心理的援助を検討するためには、出産体験に対する情動的反応つまり感情に焦点を当てることがより重要であり、理論的にも支持されていることである。以上を検討した結果、満足という概念からのアプローチではケアの保証ができず、したがって満足という概念では尺度の有効性を十分担保することは難しいと考えられた。 また、尺度の点数化という側面から有効性を検討すると、下位尺度項目は心理的アセスメントに有用であるが、尺度得点の大小のみでケアの要・不要は区別できず、総合得点にはあまり意味がない。臨床においては援助者が母親の出産体験についてアセスメントの仕方が分からないことが課題であり、母親が何にわだかまりを持っているかがわかればケアにつなげることができるため、尺度よりもアセスメントツールとする方が、より臨床において使いやすい可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、研究者が取り組んでいる出産体験の満足感尺度(仮)開発の研究を基盤として、発展的に行う継続研究であるが、所属部署において新たな大学院教育課程の設置に向けた申請業務とそれに伴う大学院担当授業の大幅な増加のため教育に関わるエフォートが予想外に多くなり、研究を進めるための時間が確保できなかった。そのため、現在尺度の完成まで至っておらず、後続の研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の文献検討等により、尺度ではなく、アセスメントツールとする方がより臨床現場の活用に適合する可能性が見出され、さらに満足という評定についても再考する必要があるため、まずは対象者が負担なく回答でき、感情をとらえることが可能な指標について検討する。 さらに、ツールの有効性を示すひとつのデータとして、ツールを使用した援助者の前後の変化を示すために、使用前の臨床現場における出産体験の振り返りの実態調査を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は教育業務の増加等により研究計画より遅れており、研究のベースとなるツールの完成まで至らなかった。そのため、質問紙調査にかかる費用や旅費、データ入力作業を依頼するための謝金等の予算が執行できていないため、研究費の未使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、質問紙調査を実施する予定であるため、印刷料や郵送料、記録メディア、質問紙回収後の資料整理やデータ入力を依頼する研究補助者への謝金等に充てる予定である。また、本年度開催される研究テーマに関連の深い国際学会および国内学会に参加するための旅費を使う予定である。
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