2015 Fiscal Year Research-status Report
妊婦の「低体重(やせ)」が乳幼児の発達に与える影響とその予防
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26463432
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
大島 隆一郎 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (50263679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (20362189)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 妊婦 / 体重増加 / BMI / 乳幼児 / 発達 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多目的出生コホート研究 Hamamatsu Birth Cohort (HBC) Study にエントリーした妊婦のBMI、ならびに、妊娠期間中の体重増加量を説明変数とし、0~4歳までに採取された、児の身体発育(体重、身長、頭囲)と発達(粗大運動・微細運動・視覚受容・受容言語・言語表出)の5つの発達指標値との関連を明らかにし、その結果をもとに「妊婦の低体重(やせ)」に関する啓発パンフレットを作成することを目指すものである。 平成27年度の研究の進行状況であるが、測定に関しては、平成26年度に引き続き、40ヶ月以降の測定と、結果のデータ入力を実施した。 データ解析に関しては、平成26年度の結果を踏まえ、妊婦とその子どもの発達との関係を直接統計解析せず、1.妊婦とその子どもの出生時の身体発育との関連、2.出生時の子どもの身体発育と5つの発達指標との関連、の2つに分割し、それぞれ統計的解析を実施した。2の解析では、目的変数を1・4・6・10・14・18・24ヶ月の粗大運動、微細運動、視覚受容、受容言語、言語表出の5つの発達指標の素点ではなく、T-scoreを用いた。説明変数には、出生時の身体発達を5つの指標(体重のみ、身長のみ、頭囲のみ、頭囲÷体重、頭囲÷身長)に設定して統計解析を行った。その結果、体重、身長、頭囲の発育と発達との間には正の相関の傾向があり、頭囲÷体重の値と発達との間には負の相関の傾向があることがわかった。また、頭囲÷体重の値が>1SDの群(不均衡に頭部のサイズが大きい群)とそれ以外の群の2群で5つの発達との関連を調べた結果、前者の群は後者の群と比較して発達が遅れる傾向にあることがわかった。さらに1においては妊婦の出産直前のBMIの値と「頭囲÷体重」との値とが関連傾向にあることはわかった。しかし、これについてはさらなる検討の必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
測定、データ入力に関しては順調に進んでいる。データの解析については、目的変数に5領域の素点ではなく、T-scoreを用いた。またそれに加え、解析手順を (1)妊婦とその子どもの出生時の身体発育との関連と、(2) 出生時の子どもの身体発育と5つの発達指標との関連の2つに分けて実施した.このことにより,「頭囲÷体重」で示す頭部のサイズの不均衡さを示す指標が,子どもの生後24ヵ月までの発達との間に関連性があることがわかった. (1)については、妊婦の出産直前のBMIの値と「頭囲÷体重」との値とが関連する傾向にあることまではわかった.しかし、胎児の成長に影響を与えるといわれている、喫煙、アルコール摂取等の交絡因子との関連まで考慮に入れていなかったため、BNMIと子どもの成長の関係を明確に示すためには、それらの因子も考慮に入れて解析を実施する必要があると考えている。また、出生直前のBMIだけでなく、妊娠中の体重増加等との関連についての検討も行ったが、それらについては関連性が見いだされていない。したがって、さらなる解析を実施していく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、測定に関しては、平成27年度に引き続き、40ヶ月以降の測定と、結果のデータ入力を引き続いて実施していく。 また、解析について、平成27年度は、1.妊婦とその子どもの出生時の身体発育との関連、2.出生時の子どもの身体発育と5つの発達指標との関連、の2つに分けて実施した.2については,「頭囲÷体重」で示す頭部のサイズの不均衡さを示す指標が,子どもの生後24ヵ月までの発達との間に関連性があることがわかった.ここまでの成果に関しては論文にまとめ投稿する予定である。しかし,それ以降の発達との関連性はわかっていないので、今後は生後32週までのデータを用いて、より広範な期間における発達との関連について検討を行っていく。 1については、出産直前のBMIの値と「頭囲÷体重」との値とが関連する傾向にあることまではわかったが、胎児の成長に影響を与えるBMI以外の要因(喫煙、アルコール摂取等)まで考慮に入れた結果ではなかった.したがって、今後はそれらの交絡因子を考慮に入れ、さらなる解析を実施していく必要があると考えている。またそれ以外に、妊娠中の体重増加等の関連性についても解析していき、妊婦への保健指導に役立てられる結果を出すよう努力していきたい。 さらに、今までは1と2に分け、マルチレベル混合効果モデルの統計手法を用いて解析を行ったが、これらの解析結果では,1と2との関連についての明確な説明ができない。したがって、この問題を解決するために、平成28年度は、1と2を同時に解析できる共分散構造分析という統計手法を用い、当初の目的である妊婦の「低体重(やせ)」が乳幼児の発達に与える影響について検討を行い、その予防法についての検討まで実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、物品費については、予定していた機材を購入できたため、予算額通りに支出を計上できた。しかし、旅費と人件費・謝金等については支出がなかった。その理由は、旅費については、請求に必要な領収証や旅券を紛失してしまったため、支出請求ができなかったことが大きな原因であった。また、人件費については、データ入力が現状の人員体制で順調に処理できたことに加え、統計解析に時間がかかったことや、論文作成に時間が割かれてしまい、妊婦とその子どもの出生時の身体発育との関連を検討する解析や、妊婦の「低体重(やせ)」を予防するための保健指導に活用するパンフレットの作成が遅れてしまったことが理由としてあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成26・27年度に積み残した研究課題の達成に向けて努力する。統計解析の検討を綿密に実施するため、浜松医科大学への訪問を増やし、年度の早い段階に統計的解析を終えたい。また、その後の妊婦の「低体重(やせ)」の予防に向けた検討を保健師とするため、三郷市への訪問も増やしていく。さらに、パンフレットの原案を作成し、妊婦に配付できるようにパンフレットの印刷まで到達したいと考えている。 機材等については、平成28年度より所属大学が変わり、セキュリティの関係で今まで使用していたデスクトップパソコンやプリンター等が使用できなくなってしまったため、新規にパソコン関連の機材を購入し、統計解析が円滑に実行できるようにしていく。また、「Microsoft office」の新規購入、統計ソフト「STATA」の新バージョンへの更新、共分散構造分析のための「M-plus」も購入する。
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