2014 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知症者への前頭葉機能活性効果の検討~マルチタスクトレーニングによる効果~
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26463456
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Research Institution | Ishikawa Prefectural Nursing University |
Principal Investigator |
清水 暢子 石川県立看護大学, 看護学部, 助教 (20722622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 千恵 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (10336604)
梅村 朋弘 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10401960)
平井 一芳 福井県立大学, 看護福祉学部, 准教授 (90345679)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体機能 / 前頭葉機能 / 軽度認知障害者 / Movement Music Thrapy / 近赤外線光脳機能イメージング装置 / マルチタスクトレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】この研究の目的は身体機能の向上と前頭葉機能の活性化を目指して、打楽器を使用したMovement Music Therapy(MMT)によるマルチタスクトレーニングを、軽度認知障害者(MCI)を対象に実施し、その効果をシングルタスクトレーニング(STT)と比較検証することである。 【方法】自治体の介護予防教室参加者を会場別にMMT群とSTT群に設定し、STT群には音楽と鳴子(打楽器)なしの指導者によるカウントのみで、MMT群と同じ動きを行ってもらった。前頭葉機能の活性については、前頭葉機能検査(FAB)または、近赤外線光脳機能イメージング装置(fNIRS)での脳血流量測定を、身体的指標としては循環器系、心肺機能、握力、平衡性、脚筋力・持久力、巧緻敏捷性・移動能力について介入前後で測定し介入効果を比較検証した。 【結果】MMT群(34名 75.35±4.53歳)とSTT群(11名 72.36±6.10歳)それぞれの群内で対応のあるt検定を行った結果、MMT群では、身体機能の4項目(握力、歩行筋力、巧緻・敏捷性、脚筋力・持久力)で有意な向上(p<0.05)が見られた他、FABにおいても、有意な改善(p=0.008)がみられた。一方STT群ではすべての項目で有意な変化は見られなかった。さらにMMT群内で、FABの結果によりFAB低下群(FAB<16)とFAB正常群に分けて二重課題(運動と言語流暢性課題を同時に要求する)実施中の脳血流量とMMT実施中の脳血流量を介入前後で比較検討した結果、FAB低下群がFAB正常群に比べ右腹外側前頭前野部位と左背外側前頭前野部位に有意な向上が示唆された。 【結論】このことから、前頭葉機能活性が低下しているFAB低下群であってもマルチタスクトレーニングであるMMTによる介入が身体機能の向上のみならず、脳血流量の活性にも効果があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は、前頭葉機能の活性化を目指して、我々が開発したMovement Music Therapy(MMT)によるマルチタスクトレーニングを、認知機能が低下しつつある軽度認知障害者(MCI)を対象として実施し、その効果を検証することであった。前頭葉機能の活性については、前頭葉機能検査(FAB)または、近赤外線光脳機能イメージング装置(fNIRS)での前頭野領域の血流量測定を、認知機能面ではミニメンタル認知機能検査(MMSE)を介入前後で測定し介入効果を検証した。MMTによる介入と同様の方法と実施期間で、運動のみのシングルタスクトレーニングについても対象者を確保し、効果を検討することができた。今回MMT実施中の脳血流量を介入前後で比較検討した結果、特に、FAB低下群がFAB正常群に比べ右腹外側前頭前野部位と左背外側前頭前野部位に有意な脳血流賦活が示唆された。MMTによる介入により有意な介入効果が得られたことから、研究はおおむね順調にすすんでいると考える。(日本地域看護学会第18回学術集会、 the 1st Asia-Oceanian Congress for NeuroRehabilitation にて発表予定)。さらに、なぜ前頭葉の中でも特にワーキングメモリに関する部位に効果がみられたのか検証を進めていきたい。また、平成26年度はシングルタスクトレーニング群の人数確保が難しかったため、対象者確保の工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成27年度】と【平成28年度】 引き続き、自治体の実施する介護予防事業参加者に対し同じデザインで介入を行う(前年度非参加者を対象に)。平成26年度参加した対象者より、教室の内容と脳血流量測定結果の個別返却について好評であったため、引き続き同じ自治体で実施場所と対象者を変え、同じ内容で実施することの了解を取り付けでいる。現在、平成27年度対象者募集が開始されたところである。年3会場の実施を目標にしているが、平成26年度は、1会場だけ、参加者がなかなか集まらず年間の介入予定人数に達することができなかった。そのため対照群(STT群)人数が充分ではなかった。平成27年度はより地域に密接した会場で、地区公民館や役場支所2階を実施会場に設け、より参加しやすい環境に配慮した。また、地区の民生委員や地域サロンの主催者にも声をかけ、対象者集めに協力していただいた。さらに対象者が認知機能が低下しつつある軽度認知障害者(MCI)であるため、教室参加の日を忘れてしまったり、脳血流量測定日に参加できなかったりと身体的理由以外で研究対象から外れてしまった対象者もいたので、今年度は教室実施中も対象者に参加忘れのないよう支援強化対策を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今回の脳血流量測定機器の搬入場所が移動しやすい会場であったため(段差が少なく、階段の使用が少ない会場により運搬の手間がかからない)当初の見積額より運搬費用分の値引きがあった。次年度は運搬費用が今年度よりかかることが予想されるため、その差額分を次年度使用額として使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き平成27年度も同じ自治体より実施依頼が来ているため、前年度とは違う対象者で介入研究を実施する予定である。その際、脳血流量の測定会場を対象者が参加しやすいように、より地域に密着した会場(地区公民館や役場支所2階)での測定を計画している。そのため、前年度より脳血流量機器運搬費用がかさむことが想定され、次年度使用額をそこに充てんする予定である。
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Research Products
(2 results)