2016 Fiscal Year Research-status Report
ライフレビューとメモリーブックによる認知症高齢者の行動変容と多職種連携への検証
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26463472
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
山本 由子 武蔵野大学, 人間科学部, 准教授 (00550766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護学 / 認知症 / 高齢者 / ライフレビュー / 混合研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、特別養護老人ホーム4施設に入所する軽度から中等度認知症高齢者60名に対し、計4回のライフレビュー介入による抑うつの低減を、本人の主観と客観的な観察から示すランダム化比較試験を用いた混合研究法(Mixed Methods Research)である。多職種連携に向けては、客観的視点として介入前後における認知症高齢者の変化を、ケアスタッフ30名に自記式質問紙によって尋ねた。 量的データと質的データを同時に収集する収斂的デザインは概ね順調に進行し、それぞれの結果は国内外の学会(日本老年看護学会、14th International Conference on Communication in Healthcareなど)において成果発表を行った。中等度の認知症高齢者においても長期記憶への刺激は効果的であり、対照群に比して抑うつの低減が有意に示された。また、本人の語りを古い写真とともに書きとめた記録(メモリーブック)を家族や施設スタッフと共有していく有効性が示された。 国際学会である、Life review & Reminiscence 学会では効果が示された予備研究を発表した。英文での混合研究法による論文作成を進めるにあたり、量的データと質的データの分析、および双方の統合・収斂方法を具体的な課題として探求している。混合研究法分析ツールを用いて専門誌Journal of Mixed Methods Researchから209論文を選び、そのうち6文献からジョイントディスプレイの提示方法を参照した。英論文作成に当たっては、9月に国内で開催された混合研究法学会に参加し、デザインや論文作成のワークショップに参加し研鑽した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は介入研究による量的データ、および半構造化面接から得られた質的データの統合方法を国内外学会発表した。看護学、社会学、コミュニケーション領域の専門家から両データの統合方法について先進的な示唆が得られた。実際に英論文の執筆を進めているが、混合研究法のメタ統合は現在進行中の新たな分野であり、専門家の間でも意見が分かれており議論が進められている段階である。特に、看護学領域では質・量双方のデータを扱うスペシャリストが数少ない。そのため混合研究法専門誌の文献を参考とし、日本混合研究法学会の講義を受け、ワークショップに参加しながら書き進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダム化比較試験自体は終了し、量的データと質的データの収集は終了している。研究成果を論文認まとめる段階であり、これまで行った研究範囲を、量的研究であるランダム化比較試験の分析部分、インタビュー内容をテキストマイニングを用いて説明する質的研究部分、さらに両データを収斂していく混合研究法デザイン部分に分けてそれぞれに執筆し投稿を進める。その際、混合研究法においては量的・質的分析のジョイントディスプレイ(JD)を用いて明確に統合結果を示す方法が必須である。JDを示した先行文献は看護学領域ではまだ数少ないため、国際混合研究法学会誌に掲載される方法論や原著論文を確認しながら慎重に書き進めて完成させる計画である。
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Causes of Carryover |
研究成果を論文にまとめるに当たり、英文誌への投稿を考えた。そのための抄録作成、英文校正料として算出した。しかし、書き進めるにあたり、国内外での発表において混合研究法における論文作成の新たな統合方法を指摘され、英論文の完成と投稿に至らなかった。そのため次年後使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英論文投稿先として、まず"The International Journal of Reminiscence and Life Review"誌、"Journal of Mixed Methods Research"誌を考えている。このための英文校正費各10万、投稿費として15万円程度を使用予定である。現在、書き進めており、年内の混合研究法学会にてさらに精選し、残額全額を使用して投稿予定である。
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