2017 Fiscal Year Research-status Report
在宅で暮らす認知症高齢者の生活能力活性化に向けた園芸療法の開発に関する研究
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26463529
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺岡 佐和 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60325165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 春美 福岡大学, 医学部, 教授 (70335652)
小野 ミツ 九州大学, 医学研究院, 教授 (60315182) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 生活能力 / 園芸活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度も前年度までと同一の小規模多機能型居宅介護施設において、研究協力が得られた認知症高齢者を対象に園芸活動を実施した。 園芸活動には17名の認知症高齢者が参加したが、複数回参加し、複数月の日常生活状況が評価できた14名を分析対象とした。 対象者の平均年齢は87.36±3.39歳で、全員女性であった。介護度は要介護2が5名で最も多く、次いで要介護1が4名、要介護4が3名であった。また、要介護3および5が各1名あった。認知症高齢者の日常生活自立度はⅡbが5名と最も多く、次いでⅣが3名、ⅡaおよびⅢaが各2名であった。また、ⅠおよびⅢbが各1名あった。障害高齢者の日常生活自立度はJ2が5名で最も多く、次いでB2が4名、A1が3名、A2が2名であった。 園芸活動は計12回実施した。活動内容は、これまでの研究結果に基づき、春から夏にかけては夏野菜の植え付けから収穫、そして試食までの一連の活動を行った。また、秋から冬にかけてはチューリップの植え付けと生育状況の観察を主軸に、その他、季節特有の植物を使用した飾りの制作なども行った。 各園芸活動前後に測定した唾液アミラーゼ値は、活動後に上昇傾向を示した場合もあったが、園芸活動中や園芸活動後に他者とのトラブルやBPSDが確認されることは、全活動を通じて一度もなかった。 また、最近一か月間の日常生活状況は月毎に変動を繰り返していた。カテゴリ別にFriedman検定を行った結果、『感情的反応』(p<0.05)と、『健忘的症状』、『生活意欲の低下』、『日常生活の困難性』、『よくある物忘れ症状』(いずれもp<0.01)において有意差が認められた。また、平成29年4月時点と平成30年3月時点の最近一か月間の日常生活状況をカテゴリ別に比較すると、『感情的反応』、『生活意欲の低下』、『よくある物忘れ症状』は有意(いずれもp<0.01)に増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究施設の協力を得ながら園芸活動を実施することができた。 また、園芸活動実施後には毎回、参加した職員と研究者とでカンファレンスを開催し、対象者の園芸活動時の参加状況をはじめ、対象者を取り巻く生活環境や生活状況について随時情報を共有し、対象者の変化の把握に努めることができた。 研究者の教育業務の都合により、今年度は概ね月に1回の園芸活動の実施となり、昨年度より実施回数は減少したが、研究者の訪問時以外には施設職員と対象者とで自主的に植物の管理を行ってくれた。 このように、研究施設側と連携を図りながら園芸活動を実施し、対象者に関するデータ収集は進められているが、平成29年度当初に予定していた施設職員への半構成的面接の実施と、論文としての公表については完了できなかったことから、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの結果を踏まえ、引き続き、対象者の心身を活性化し、生活能力の維持・向上への寄与が期待できる園芸活動の実施、評価を行いたいと考える。 また、平成29年度に実施できなかった施設職員への半構成的面接調査を実施し、園芸活動が対象者の日常生活にもたらす質的変化について把握するとともに、日常生活状況の評価項目についても検討し、これら研究結果を論文や学会発表により公表できるよう努めたいと考える。
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Causes of Carryover |
初年度の平成26年度、執行途中の財団助成金があったため、次年度使用額が生じ、現在も引き続き次年度使用額が生じている状況である。 また、平成29年度は研究者の教育業務の都合により、園芸活動の実施回数が減少したため、それに伴い、経費の執行が予定を下回ることとなった。 平成30年度は施設職員への半構成的面接調査を実施することから、逐語録作成に伴う謝金の支出を予定している。そのほか、論文投稿や学会発表による研究結果の公表を予定していることから、翻訳にかかる謝金や旅費、参加費等の支出も計画している。
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Research Products
(2 results)