2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における栄養代謝障害への腸管透過性亢進の関与
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26500011
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
熊谷 裕通 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40183313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸管透過性 / エンドトキシン / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病患者では、腸内細菌叢の変化や、腸上皮細胞を結合しているタイトジャンクション蛋白質の減少などにより細胞同士の接着が緩み、腸管の透過性が上昇する可能性があり、それにより腸内細菌が腸管から体内に侵入している可能性がある。そこで、本年度は、慢性腎臓病患者において、ヒトの腸内細菌叢を構成するグラム陰性細菌の血中ゲノムを測定し、血中に腸内細菌の侵入が認められるか否かを検討した。74名の血液透析患者より、無菌条件で採血を行い、DNAの抽出はQIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAGEN)を用いて行った。抽出したDNAは、腸管から血中に移行しやすいEscherichia coliと、腸内細菌叢に特に多く存在するBacteroides fragilisの種特異的なプライマーを用い、PCR法により増幅した。その後2%アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドでDNAを染色してバンドの有無を確認した。E.coliのDNAは、いずれの検体からも検出されなかったが、B.fragilisのDNAは、74名のうち21名の血液において検出された。患者をB.fragilisが検出された群と検出されなかった群とに分け、エンドトキシン濃度、IL-6、MCP-1、EN-RAGE、BMI、GNRI、CRP、Alb、透析歴との関連を検討したが、いずれも二群間での有意差はみられなかった。以上の結果から、血液透析患者では、腸管から血中へB.fragilisの移行が生じている可能性があったが、炎症や栄養状態との関連はなく、その臨床的意義は不明であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、血液透析患者を対象として、臨床的に腸管透過性が体内の炎症や栄養状態に及ぼす影響を検討しようとした。しかし、透析患者の血中から、B.fragilisのゲノムは検出されたものの、炎症指標や栄養指標とは関連が見られず、腸管透過性が臨床的に問題となるか否かを明らかにすることはできなかった。この臨床面での研究の進展は見られなかったものの、腸管透過性の評価法に関わる研究手法の問題点を明らかにすることができ、今後の研究に有用と考えられたため、総合的に考えて研究度の達成度をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床的には研究の手法が限られることから、今後の研究は、慢性腎不全モデルラットを用いて行うこととする。具体的には、5/6腎臓摘出術を行った慢性腎不全ラットにおいて、腸内細菌叢の変化、エンドトキシンの産生とその体内移行、腸内細菌の体内移行およびそれに伴う炎症状態や栄養状態の変化について調べる。腸内細菌の体内移行の有無は、血中における細菌ゲノムの検出ならびに蛍光発光大腸菌を用いて腸管から体内への細菌の移行の有無を用いて調べる。また、probioticsであるビフィズス菌やprebioticsであるオリゴ糖を投与して、腸内細菌叢、腸管透過性の改善が見られるかどうか、また炎症状態や栄養状態の改善が見られるか否かについて検討する。
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