2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における栄養代謝障害への腸管透過性亢進の関与
Project/Area Number |
26500011
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
熊谷 裕通 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40183313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸管透過性 / 慢性腎臓病 / 炎症 / synbiotics |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)では、慢性的な炎症を伴うが、その原因として、腸管透過性の上昇に伴うendotoxinの体内流入や、インドキシル硫酸(IS)やp-クレシル硫酸(PCS)など尿毒素の貯留が考えられる。しかし、これらの要因と、炎症および腎機能の低下との関連についての詳細は明らかになっていない。また、それらの対するsynbioticsの有効性についても十分検討されていない。そこで、5/6腎摘モデルラットを用いて検討を行った。 5/6腎摘モデルラットを作成し、半数にはビフィズス菌の経口投与および食餌へのレジスタントスターチの添加を行い(5/6Nx+syn群)、残りの半数には普通食を与えた(5/6Nx群)。コントロールラットには開腹のみを施し、普通食を与えた(C群)。観察開始後13週目に、腸管透過性をFITC-dextranの血中への移行量の測定により評価した。腎機能の測定、血中IS・PCS濃度の測定、炎症マーカーとして血中MCP-1濃度の測定を行った。 5/6Nx+syn群では、5/6Nx群と比較してBUNの上昇が有意に緩和され、Ccrにも改善傾向がみられた。さらに血中MCP-1濃度は、5/6Nx群で上昇したが、5/6Nx+syn群ではC群と同程度にまで低下した。腸管透過性の評価では、FITC-dextranは、腎機能がかなり低下し炎症が悪化してからでないと血中に移行せず、synbioticsの効果は不明確であった。血中IS・PCS濃度は、5/6Nxの2群において上昇傾向がみられ、MCP-1の上昇との相関を示したが、synbiotics投与による抑制はみられなかった。以上の結果から、CKDラットにおいてsynbioticsの投与は、体内での炎症を抑制し、腎機能低下を抑制したが、これらの効果が腸管透過性の改善によるのかは明らかとならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には、動物実験により、腸管透過性が腎機能や炎症に及ぼす影響を調べるとともに、synbioticsの効果についても検討することができた。その結果、synbioticsの投与が体内の炎症を抑え、腎機能の低下を抑制する可能性を明らかにすることができた。しかし、そのようなsynbioticsの投与効果が、腸管透過性を改善して、エンドトキシンの流入を抑えることによるのかまでは明らかにすることはできなかった。 以上を総合して、研究は概ね順調に進行しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、synbioticsの投与が、体内の炎症を抑制し腎機能の低下を抑制した理由について、腸管透過性の改善とそれによるエンドトキシンの流入を抑制することによるのか否かを明らかにできなかった。今後は、この点についてさらに検討していく予定である。 まず、腸管透過性の評価法に関し、現在の方法では十分でない可能性がある。この点について、腸管のタイトジャンクションの蛋白(クロージンなど)やその遺伝子発現について検討し、分子レベルで腸管透過性の変化を把握できるかを検討してみる予定である。また、エンドトキシンよりももっと小さな分子の物質が腸管から体内へ流入して、炎症を惹起している可能性もあるので、そのような物質の探索も行う予定である。 さらに、今年度は最終年度であるので、結果をまとめ、学会発表や論文作成を行っていく予定である。
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