2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来神経細胞移植による認知症回復期における遺伝子発現制御
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26501005
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
有光 なぎさ 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (40408688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 成芳 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (50365425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 移植 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症では海馬に投射するコリン作動性神経の欠落が原因の一つとされている。欠落を相補すれば、認知機能の改善が起きるかについて、ヒトinduced pluripotent stem(hiPS)細胞を神経分化誘導し、分化させた神経細胞移植により、認知症モデルマウスの認知症改善の傾向が見られるかを解析している。初年度は移植するための神経細胞を分化誘導し、hiPS細胞から分化させた細胞の神経分化を確認した。bFGFを除いた培地に懸濁し、4日間の浮遊培養によって胚様細胞塊 (embryoid body : EB)を作製した。次にEBをフィブロネクチンでコートした培養ディッシュに播種し、24時間後培地を分化培地に交換し、同時にレチノイン酸 (RA),ノジン(NOG), ソニックヘッジホック (SHH)を加える(1次刺激)。48時間培養後、再度RA、SHH、NOGを加え(2次刺激)、一日培養後に移植実験を行った。移植時及び,さらに10日分化誘導させた細胞の分化状態をRNA,タンパクレベルで解析した。Nestin、beta-III tubulin、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)、小胞 GABAトランスポーター(VGAT)など神経マーカーの発現を確認し、神経幹細胞や未熟神経など様々な分化段階から構成される細胞集団の中にコリン作動性神経が誘導できていることを示した。また、免疫染色により、移植時の細胞集団中のコリン作動性神経細胞がGABA性神経細胞より多く存在していた。現在、認知症モデルマウスPDAPPマウスの海馬両側に移植し、数ヶ月に渡り、モリスの水迷路テストを用いて移植の効果を判定し、誘導神経細胞の移植と認知症の改善効果の評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における移植実験は、動物のトレーニングから始まり移植した後に最短2ヶ月から6ヶ月間まで移植の効果を解析していることから、全行程を遂行するのに約8ヶ月という長期間の準備が必要となる。初年度にあたる今回は細胞レベルの解析を進めながら、移植実験を行うことができたため、当初の初年度の目的は達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、移植実験を継続させつつ、移植細胞の認知症改善に与える影響についてモリスの水迷路テストを用いて移植の効果を判定し、誘導神経細胞の移植と認知症の改善効果の評価を行っていく。移植部位に細胞が存在し、認知症を改善するには、適切な時間、空間内における細胞の局在のための遊走及び定着と、新規軸索の再伸長と神経回路網形成が必要である。これまでにマウスや、サルのES細胞から誘導した神経細胞が移植後中枢神経系に遊走し、定着し、神経ネットワークを再構築する際、SDF-1などのケモカイン、LCAM等の接着因子が関与している事実を明らかにしている。従って本研究でのhiPS細胞誘導神経細胞移植においても同様に重要な働きをしている可能性がある。以上を踏まえ、まず移植した細胞が宿主内でどのような分子を発現し移植環境と神経ネットワークを形成しているかについて抗体による組織染色を行い経時的に確認する。この時、マウスとヒトの特異的神経マーカーを使い分け、マウス脳においてヒト由来の移植細胞が神経回路に組み込まれているかを確認する。さらにin vivo 海馬領域での移植細胞由来コリン作動性神経、GABA性神経への分化誘導時の経時的変化を調べるため、蛍光蛋白GFP発現した移植細胞を用いて解析することも検討する。次に組織学的解析および経時的に抽出(マイクロダイセクション法)した移植片内、移植周辺部位における遺伝子発現の変化について解析する。その時、神経分化誘導因子、細胞局在化因子、細胞移動に係わる因子、細胞間接着など細胞間情報伝達に係わる因子について比較し、それぞれの因子がどのように神経回路回復に寄与しているのかについて検証する。 以上の解析はコントロールとの比較だけではなく、細胞レベルでも同様に解析し、比較検討することで、分化の構築状態の違いを相関性、相違性を示す因子を同定する。
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Causes of Carryover |
本研究における移植実験は、動物のトレーニングから始まり移植した後に2ヶ月から6ヶ月間まで移植の効果を解析していることから、全行程を遂行するのに約8ヶ月と長期間の準備が必要となる。今年度は有意差検定する匹数を確保するため、移植実験を優先的に行ったため、解析が次年度以降となった。そのため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、移植実験を継続させつつ、誘導神経細胞の移植と認知症の改善効果の評価を行っていく。初年度で得られた検体を使い、移植した細胞が宿主内でどのような分子を発現し移植環境と神経ネットワークを形成しているかについて抗体による組織染色を行い経時的に確認する。この時、マウスとヒトの特異的神経マーカーを使い分け、マウス脳においてヒト由来の移植細胞が神経回路に組み込まれているかを確認する。次に移植細胞による周辺域へ影響を調べるためのマイクロダイゼクションが安定的にできるように検討する。
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