2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞組織加工製品における「ウイルス安全性実現のための基本スキーム」に関する研究
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26501008
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
遊佐 敬介 国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 室長 (30200869)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞加工製品 / ウイルス安全性 / 生物由来原料 / ウシ胎児血清 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞加工製品は,製品の主成分が細胞となるため製造工程にウイルスの不活化や除去の工程を組み込むことが困難である.製品へのウイルスの混入が起きる場合,次の3つのケースが想定できる. ( i ) 原料となるヒト細胞・組織にウイルスが含まれている. ( ii )製造に使われる原材料が汚染されている. ( iii )製品の製造工程での手技や取り扱い時にウイルスが飛び込む. ( i )は主としてヒトウイルスであり,細胞ドナーの感染ウイルスが対象となり,ドナーの血液検査等で対応可能であり,対象となるウイルスの数は限定されている.( iii )は,製造施設や製品を取り扱う上での技術的管理体制の整備等の課題となる.従って注意を払うべきは( ii )製品製造に使われる生物由来の原材料であり,原材料の精査がウイルス安全性を確保する上で重要であることが想定される.そこで本研究では細胞加工製品製造に使われるフィーダー細胞や培地に含まれるウシ胎児血清など生物由来成分からのウイルスの持ち込みを想定して以下の実験を行った.昨年度は国内で一般的に使用されているウシ胎児血清についてウシウイルスが検出できるかどうかをRT-qPCR法を 用いて検討し,欧米,南米,オセアニア等を産地とするいずれのウシ胎児血清からもウシウイルス性下痢ウイルスBVDVが検出された.本年度はウシ胎児血清中のウイルスに関して次世代シークエンサーによる解析を行い,検出されたBVDVの系統樹解析を行った.その結果いずれのウシ胎児血清も複数のウイルス株が含まれており,ウシ胎児血清の広汎なBVDVによる汚染が確認された.ウシ胎児血清に関してもウイルス安全性の観点から,使用前のガンマ線照射の重要性が改めて示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は,「細胞加工製品のウイルス安全性をどう確保するか(どのようなウイルス評価法を組み合わせて高い安全性を実現するか)」という点にある.そのためには製造に使われる生物由来原料の管理が重要になってくることが本研究で明らかになった.従って製造につかわれるウシ胎児血清等多様な原料に関する検討をひとつひとつ明らかにしておく必要があり,ウシ胎児血清に関しては解析が順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本年度はBVDVに焦点を絞り,次世代シークエンサーのデータを使って系統樹解析を行ったが,ウシ胎児血清から検出できるウイルスはこれだけではない.複数の多様なウイルスが検出されており,それらに関しても検討する必要がある. (2) 今回の解析で国内で使われているウシ胎児血清が広範囲でウイルス核酸に汚染されてることが改めて明らかになった.細胞加工製品に使われる他の生物由来原料に関してもどんなウイルスが検出出来るのかを調べる必要がある.
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Causes of Carryover |
研究が進み,平成27年度末に次世代シークエンサーによる解析を計画しており研究費が不足する事態を避けるため,70万円を前倒し申請をしたが予定がずれ、その実験は平成28年度に予定されているため使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度では,論文投稿費用や次世代シークエンサー用試薬などに研究費残額を使用する予定となっており,研究費の有用な利用を予定している.
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