2016 Fiscal Year Research-status Report
「ケイパビリティ」概念に基づく認知症高齢者ケアのアウトカム評価尺度の開発
Project/Area Number |
26502010
|
Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
長澤 紀美子 高知県立大学, 社会福祉学部, 教授 (50320875)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 認知症 / ケアの質 / アウトカム / 評価 / ケイパビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアウトカム評価の活用について、制度上の課題や支払(報酬)との関連について文献研究を行った。 施設ケアのアウトカム評価には、利用者レベルの個別アウトカムを評価する場合と、施設レベルの集合的アウトカムを評価する方法がある。 わが国で、前者のしくみを導入するにあたっては、施設入所者の介護保険個票データが必要であり、データにアクセスする上での困難がある。後者については、介護報酬上「在宅復帰や地域での自立生活の継続」に関するアウトカムを評価する仕組みはあるものの、個別の状態像を示す「アウトカムの指標の変化を介護報酬上直接評価することには課題も多い」(平成23年「介護サービスの質の評価のあり方に係わる検討委員会」第81回社保審介護給付費分科会)とされ、アウトカム指標の報酬への反映について議論が進んでいない。 一方、イギリスでは、医療提供体制(NHS)において、プライマリケアを担うGPに成果払い制(Quality Outcome and Framework, QOF)が導入されており、予防活動の推進やGPに対する経済的インセンティブの点で一定の効果が示されている。このような成果払いを高齢者ケア施設の評価に活用した例として、イギリス北部のNorthumberlandでは、NHS医療と社会的ケアが統合された基礎自治体で、QWPS (quality weighted payment scheme)という職員のマネジメントや入所者の安全・健康、ケアに関する指標等の達成度(プロセス、アウトカム)について評価し、報酬上反映する制度を構築している。認知症ケアに対する施設の集合的なケアレベルについて間接的に評価を行い、介護報酬上に反映するしくみとして、わが国にも参考にできると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
国内外の訪問調査のための時間の確保が困難であったため、文献研究によるアウトカム評価の活用に関する課題の整理に課題を修正して行った。 国内でのグループホームでの質的調査研究についても実施できていない。またイギリスでの介護施設での聞き取り調査を計画したが、施設訪問者に対するチェックが厳格化され、外部者のアクセスが困難となったために調査が困難となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度として、簡便化した施設のケア指標として実用可能な評価項目と手法を整理し、それに対する介護専門職の認識について質的調査を行い、わが国の高齢者グループホームにおける実用可能なアウトカム指標のあり方及び介護報酬への反映について検討を行う。 またイギリスでのケア施設に対する訪問調査が制度上困難になったため、介護施設を評価する自治体や第三者機関への聞き取りに変更したい。
|
Causes of Carryover |
国内及び海外でのフィールド調査が未実施であるため、調査に関わる旅費・謝金・データ整理のための賃金等の支払いが発生しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、英国の訪問調査、国内での質的調査、国内学会への参加等に関わる旅費、調査結果の分析・成果公表に関わる経費を支出予定である。
|