2014 Fiscal Year Research-status Report
「漢語神学」のポリティックス――グローバル中国の新しい公共圏と文化戦略
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26503006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
緒形 康 神戸大学, 大学院人文学研究科, 教授 (40194427)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 漢語神学 / 宗教社会学 / グローバル中国 / 公共圏 / 翻訳解釈学 / 思想史 / 国際情報交換 / 中国:香港:台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
「漢語神学」とは、漢語によるキリスト教解釈と宣教を通じた、グローバル中国における政治・文化・社会に関する改革運動の総称である。16 世紀以来の欧米ミッションと中国民間宗教との文 化接触や抗争の結果生まれた漢語神学は、毛沢東主義の大陸、三民主義の台湾、ポストコロニア リズムの香港で相異なる発展を遂げたが、そのテクスト翻訳の場面で、ポストコロニアルな解釈 の闘争を経験すると同時に、公認の国家イデオロギーの影響力が失われるにつれ、新しい公共圏 や対抗公共圏を生み出している。本研究は、「漢語神学」の 30 年来の運動を、翻訳解釈学・公共 圏形成等の観点から整理し、宗教を手掛かりに、グローバル中国における文化史を構築することを目的とする。 研究初年度に当たる本年度は、翻訳解釈学の実態に迫るために、漢語神学研究所編『漢語基督教文化研究叢刊』、香港、1994 ~.劉小楓主編『西方伝統:経典与解釈』叢書、上海、2004~.甘陽・劉小楓主編『西学源流』 叢書、北京、2006~.などの諸文献に即して、次の2つの作業を行った。(a)英米言語圏のテクスト群と独仏露言語圏のテクスト群を分類し、補遺・注釈内の引用文献に関する作者・作品・記事内容を検討した。 (b)宣教テクスト群に見られる香港語(広東語)と北京語のテクスト群を整理し、神学の基本概念や術語に関する訳語、聖書や福音書の翻訳文の相違に関する検討を進めた。 これらの作業を通じて、漢語神学の基本概念や訳語、漢語神学の諸流派などに関する基礎的な情報収集と初歩的な整理を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢語神学の基本概念や訳語、漢語神学の諸流派などに関する基礎的な情報収集と初歩的な整理を行うという研究目的は達成することができ、研究はおおむね順調に進展していると言える。 ただし、漢語神学運動を代表する思想家との対話を香港で実施するという課題については、2014年度の雨傘革命を中心とする香港の学生民主化運動などの影響で十分に進めることができなかった。以後の研究においては、香港を始めとする中国各地域でのインタビューや情報収集を、研究の重点課題と位置づけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、漢語神学の概念と流派に関する情報収集と整理に努めるとともに、漢語神学運動の中で生まれたキリスト教団につき、その公共圏・対抗公共圏の具体的状況について、資料調査と社会調査の両面から研究を行う。 具体的には、中国政府が発行する各年度の『中国宗教報告』(社会科学文献出版社)につき、そこで取り上げられた教団について、教主名、信徒数、 教義内容などの情報を整理・分析する。また、国家宗教事務局、中国統一戦線部、公安部が発行する民族宗教関連の法令・規則集・布告などを可能な限り入手・分析する。北京の「家庭教会」や民工(出稼ぎ労働者)教会、南京のカトリック系地下教会、台北のペ ンテコステ派教会などについては、その幾つかについて社会調査を試みる。
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Research Products
(5 results)