2015 Fiscal Year Research-status Report
「漢語神学」のポリティックス――グローバル中国の新しい公共圏と文化戦略
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26503006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
緒形 康 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40194427)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 漢語神学 / グローバル中国 / 公共圏 / 対抗公共圏 / ポストコロニアル論争 / キリスト教団 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、漢語神学が切り開く新しい公共圏や対抗公共圏に関する資料調査研究を行った。漢語神学運動の中で生まれたキリスト教団につき、その公共圏・対抗公共圏の具体的状況につき、資料調査を進めた。具体的には次の2点である。 a)中国政府が発行する各年度の『中国宗教報告』(社会科学文献出版社)や『中国宗教』等の雑誌につき、そこで取り上げられたキリスト教団(カトリック・プロテスタント)と邪教教団につき、教主名・信徒数・教義内容などの情報を整理した。(b)国家宗教事務局、中国統一戦線部、公安部が発行する民族宗教関連の法令・規則集・布告等を入手し、宗教を巡る国家政策について研究を進めた。 第二に、漢語神学と新しい公共圏や対抗公共圏に関する学術報告を国立台湾大学人文社会高等研究院にて行い、関連する諸問題について討論を進めた。 以上の研究項目を推進することにより、漢語神学運動における人文学の歴史文献研究領域と新たな公共圏形成・文化戦略の問題領域を総合する上で重要な意義を持つ研究を推進することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢語神学運動の諸論争は、西欧「知」を受容する過程において、香港語(広東語)と北京語の差異などポストコロニアルな解釈の闘争を明るみに出し、キリスト教系「邪教」による対抗公共圏の形成の場面でも、従来の市民社会論からは予測できないような人・モノ・情報の関係性の構築へと向かっている。そうした漢語神学論争の諸側面を、文献資料の整理と分析を通じて明らかにできたことで、研究の順調な展開が可能になった。 また、漢語神学という他者の文化史は、「アジア神学」というカテゴリーを大きく逸脱し、従来の文化学・文化研究を揺さぶり、その新たな可能性を切り開く手掛かりとなるが、そうした文化学の可能性を追求する手掛かりを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
漢語神学」に基づくグローバル中国の文化史の構築を目指す。
そのために、これまでの海外の研究機関での学術報告と討論で得た新たな知見を基に、漢語神学運動における人文学の歴史文献研究領域と新たな公共圏形成・文化戦略の問題領域を総合した、グローバル中国文化史を初歩的に構築し、国際コロキウムを挙行する。
さらに、これまでの3年間の研究成果をまとめた学術報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
物品費の一部を次年度使用として繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の物品費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)