2014 Fiscal Year Research-status Report
文化芸術教育支援法と芸術家福祉法をめぐる現代韓国の音楽文化政策の動態
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26503007
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤井 浩基 島根大学, 教育学部, 教授 (50322219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化芸術教育支援法 / 韓国 / 文化芸術教育士 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国の「文化芸術教育支援法」に関する基本的な資料及び情報の収集を集中的に行った。特に,韓国文化体育観光部・韓国文化芸術教育振興院が発行している『関連資料集』(2012年9月),『文化芸術教育士教育課程案内』他(いずれも韓国語)を入手し,翻訳と並行して解題を進めた。その過程で,当初の計画段階以上に,日本の状況と比較する視点の必要性が生じた。そこで,日本の「文化芸術振興基本法」や「第3次文化芸術振興基本方針」等をあらためて把握し直す作業をともなった。一方で,根本的な日本とのフィールドの相違もみきわめる必要があり,韓国の研究協力者とともに,日韓両国の文化芸術に関わる各種公的な機関等でのフィールドワークを行った。 「文化芸術教育支援法」が学校教育等にどのように影響しているかについて,複数の学校関係者,音楽家への聞き取り調査を行った。「2級文化芸術教育士」の資格を取得し,演奏活動を行っているという伽耶琴奏者からは,資格取得に至る過程や準備等について情報を得た。また,同法に基づき大学レベルで文化芸術教育士の養成が進められているという情報を得て,大学の状況を把握するため複数の大学関係者への聞き取り調査を行った。 韓国では,2018年の平昌冬季五輪を控え,スポーツのみならず,芸術を通じた機運の高まりもみられる一方で,セウォル号沈没事件等のショッキングな出来事もあり,人々の心に響く音楽や芸術の必要性が各方面から指摘されていることもわかった。 以上について,まとまった研究成果としてアウトプットをする段階に至ってはいないが,断片的な内容については,地域における韓国の文化を学ぶ講演会等で積極的にトピックとして取り上げ,可能な限り社会に還元するよう努めた。27,28年度にかけては,学会等での発表につなげるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では,(1)文化芸術教育支援法の概要の把握・検討(2)文化芸術教育支援法の制定・施行に至る過程の整理と把握(3)文化芸術教育支援法による諸事業の調査・分析(4)成果公開 の4つの作業を掲げていた。実績の概要で述べたように,(1)~(3)については,基礎的な資料の解題や聞き取り調査を経て,所期の成果をおおむねあげることができた。(4)の成果公開については,初年度中に学会等で公開できる段階には至らなかったが,27~28年度中での発信をめざして準備中であることから,おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
学会等での成果公開を積極的に行っていきたい。 27年度は「芸術家福祉法」について集中的に取り組む予定である。また,これらの制度が学校教育においてどのように展開されているかは引き続きフィールドワークを通して,事例等の蓄積を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初人件費・謝金を計上していたが,現在の進捗状況下で,翻訳・資料整理等の作業については研究代表者本人による作業で対応することができた。また,専門的知識の提供については,聞き取り調査をお願いした関係者からは,研究への協力という趣旨で,いずれも謝金は不要とのことであった。以上の理由で,人件費・謝金の支出がなかった。 当初計画していた国際学会での発表について,本務との日程調整が難しく参加を断念したため,旅費の使用額が当初の予定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗状況に応じて,資料整理や翻訳等の作業が増え,研究代表者のみでは対応できない内容,量が予想される。専門的知識の提供についても,すでに27年度に依頼をしている案件もある。人件費・謝金はそれらに充当する予定である。 また,国際学会での発表を年度内に計画し,申込を行う予定であり,旅費を充当したい。
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