2014 Fiscal Year Research-status Report
感情表現における非言語チャンネルの利用に関する比較文化論的研究
Project/Area Number |
26503016
|
Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
曹 美庚 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30351985)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 非言語行動 / 非言語チャネル / 身体接触 / タッチング / 感情表示 / チャネル優先性 / 文化的普遍性 / 異文化コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年の研究目標は,既存データの再解釈による研究成果の執筆であり,その要旨は下記のとおりである。 本研究は,身体接触に関する古典的研究であるJourard(1966)の研究と,それを応用したBarnlund(1973)の研究,米国における身体接触度合いの経時的変化を考察したRosenfeld, Kartus, & Ray (1976)とHutchinson & Davidson (1990) の研究を踏まえた上で,同じアジア文化圏である日本と韓国における身体接触の度合いの異同を分析し,異文化コミュニケーションとの関連で新たな知見を見出すことを目的としている。そこで,両国の大学生を対象とした質問紙調査を行い,その結果をもとに身体接触の範囲ならびに強度について日韓比較研究の観点から分析した。分析結果からは,身体接触の範囲や強度が,日本男子<日本女子<韓国男子<韓国女子の順に高まり,韓国の大学生の身体接触度合いは日本の大学生よりも格段に高いことが明らかとなった。また,身体接触の対象でみると,父親<母親≒同性親友<異性親友の順に身体接触の度合いが高まっており,両親は息子より娘とより多くのタッチを授受するという結果が示された。 このような調査結果の異文化コミュニケーションへのインプリケーションは明白である。身体接触が非常に制限された非接触文化を持つ日本人には,身体接触は不快や嫌悪をもたらすものと認識されやすい反面,身体接触が親密感の表れと見なされる接触文化を持つ韓国人には,逆に不十分な身体接触が不信感や距離感を生じさせる要因となりうる。このような相違に対する理解が不十分なままに異文化コミュニケーションが図れると,誤解が生じ互いが傷つく結果を招きかねないため,文化による身体接触行動の相違を理解することは異文化理解の促進,ならびに有効な異文化コミュニケーションのために必要不可欠といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タッチに関する既存の手持ちの定量的データを再解釈し,関連学会2か所で報告を行った。さらに,現在,身体接触に関する文化の影響の側面で投稿論文を執筆中である。実験については,関連する海外資料の調査や予備実験などに進展があまりないが,感情表現に関する文献研究を続けており,本来の計画がおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在執筆している「身体接触における文化の影響:日本と韓国の大学生を中心に」に引き続き,「パーソナリティ特性とタッチ性向」と題する論文の執筆に取り掛かる。なお,実験調査の準備の一環として,「感情表現における非言語チャネル」の予備実験など実験準備に取り掛かる。 感情コミュニケーションに関する研究は主として顔の表情や声を中心に行われ,怒り・軽蔑・嫌悪・恐れ・喜び・悲しみ・驚き・当惑などのさまざまな感情がそれらによって識別されてきた(Ekman & Friesen, 1971; Ekman, 1993)。しかしながら,日常生活においては,人々は顔の表情や声以外にも他の多くの非言語チャネルを併用しながら感情をコミュニケートしている。例えば,ジェスチャーやタッチによって感情がコミュニケートされることも少なくない。ただ,一つの感情をコミュニケートするためにすべてのチャネルを同時に,かつ同等な重みで使用しているわけではなく,各感情によってより重点的に使われるチャネルが存在する(App et al., 2011)。App らは,米国の大学生を対象とした実験で,異なる感情は特定のチャネルでもっとも効果的に伝わると報告している。本研究は,日本や韓国においても,異なる感情が特定チャネルによってもっとも効果的に伝わることを明らかにすることによって,文化の違いを越えた感情表現の普遍性を検証することを目的としている。
|
Causes of Carryover |
体調不良により,海外資料調査に出かけることができなかった。予備実験が実施されなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析用のSPSSソフトの購入や海外資料調査を計画している。
|