2014 Fiscal Year Research-status Report
台湾先住民の「民族」自治:中国と周辺地域における脱植民化
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26503018
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
中村 平 神戸女子大学, 文学部, 助教 (80632116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 自 大学共同利用法人 人間文化研究機構, 本部, 特任助教 (10390717)
山本 達也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特定研究員 (70598656)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 台湾先住民 / 中国少数民族 / 回(民族) / チベット(民族) / 民族自治 / 資本主義 / 脱植民化 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月と7月に研究会を2回開催した。まず8月のチベット調査に備えて日程などを調整し、汪暉氏のチベットに関する文献を検討する研究会を開いた。8月から9月にかけての13日間、代表者と分担者全員で西寧、ラサ、蘭州に赴き、西北民族大学(蘭州)の研究者との意見交換を含め、チベット人・回民・ウィグル人の宗教活動と中国政府のもとでの意識などを調査した。 9月、代表者は台湾の中央研究院民族学研究所主催の「2014年原住民族国際シンポジウム」に招かれて中国語で研究発表を行い、台湾先住民を含めた各国研究者と意見を交換した。苗栗県泰安郷の野桐工房での伝統的織物復興と、民族教育を取り入れた幼稚園教育を見学し、文化工作者の民族自治と教育文化の思想について調査し議論した。また自治を進めるタイヤル民族議会前議長に会い、近年の活動についてインタビューを行った。 10月、シンポジウム「グローバリゼーションと現代歴史学」を科研費事業「帝国日本の移動と動員」(代表者:今西一、大阪大学)と共催し、北京大学歴史学部の研究者3名らを招き、「中国現代史の最検討」などのテーマについての討論を行った。12月、台湾の新北市「原住民族行政局」局長と会談し、市の進める「頭目会議」と民族自治状況について調査した。分担者を含め、台湾先住民と中国・中国周辺地域の「少数民族」の民族自治状況の調査はおおむね順調に進み、研究の発表も行うことができた。台湾先住民研究については、日本の植民地統治期における「理蕃」の経験を、資本主義国家の発展過程における民族分類の植民的差異(colonial difference)の観点から記述することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会と共同調査において密度の濃いディスカッションを繰り返せたことは収穫である。中国西北部調査においては「民族」との関連における暴力やいじめの温度を感じたとともに、チベット、回ともに伝統的な宗教団体の力が政府との駆け引きに強く働いていることがわかり、伝統的文化を謳う台湾先住民の状況と対照的で示唆的である。人脈を活用して、新北市「原住民族行政局」局長らと会談できたことも収穫である。平成26年度の研究実施計画に記した内容はほぼ網羅されていると考える。期間後半から、身分・所属の移動により分担者が関西圏から離れることとなったが、今後は研究成果の共有を目指す議論を図ることも重要だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者は台湾先住民の自治運動と行政の動きを調査研究し、中国「高山族」の予備的調査を行う。分担者の木村、山本はそれぞれ、中国雲南省における少数民族自治運動と行政の動きの調査研究、チベット難民社会と中国の関係の調査研究を行う。2年目に入り当初申請した予算額からは減額されるという制限の中であるが、有意義な調査研究を行うよう努力する。
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Research Products
(13 results)