2016 Fiscal Year Research-status Report
現代ロシアの都市住宅動向とその特殊性の研究:家計の住宅保有・住替動向を中心に
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26504005
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
道上 真有 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30527693)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロシア / 住宅 / 経済危機 / 住宅ローン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究課題細目として掲げた「ロシア国民の住宅ローン理解」、「ロシア政府と個人の住宅資産認識とその特殊性」について、明示化する研究に取り組んだ。特に2014年以降急速に深刻化した経済危機がロシア住宅市場にもたらした影響からアプローチし、外貨建住宅ローン債務問題を中心に研究することで研究細目の解明を試みた。この研究成果は、日本で初めてのもので、学会や研究集会での研究発表を行い有益なコメントを受けた。同時にこの研究成果発表が、マスコミや日ロ首脳会議で合意された日ロ経済協力関係企業の関心や問い合わせを喚起する効果ももたらした。現在それらのコメントを踏まえた成果の精緻化を継続中である。さらに、ロシア住宅市場の現状と課題について、日ロ比較から見た特殊性を明らかにした研究成果を図書所収論文2本にまとめあげた。さらに、日ロ関係史に関する翻訳論文を1本発表した。また、2016年9月半ばにソ連時代からの遺産をつかむための北海道大学図書館に出張して資料収集を実施した。2016年12月にはモスクワに出張し、関連資料を収集するとともに、次年度に向けた調査の打ち合わせを研究協力者と行った。2017年3月1日から、本課題を基礎課題とする国際共同加速基金を活用し、ロシア・ペテルブルグ、モスクワへの長期在外研究に着手した。このほか、ロシアの経済危機やその対応力の特殊性を対象にする研究の学会発表、2016年10月9日北東アジア学会第22回学術研究大会(慶応大学・三田キャンパス)、堀江典生氏報告(富山大学)「ロシア労働市場の経済危機対応力」に対する討論者を務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究論文の発表、学会等の研究集会での研究成果発表、研究資料収集を通じて、研究細目課題である「ロシア国民の住宅ローン理解」とそのローン理解の未熟さが経済危機下の外貨建住宅ローンの不良債権問題へと発展していることを明らかにした。また、「ロシア都市部の中古住宅ストック流通」と「ロシア政府と個人の住宅資産認識」そのものが、ロシアの賃貸住宅市場が日本とは異なる特殊な発展をもたらしていることに通じており、強い持ち家志向と併存していることを明らかにし、研究計画を進展させた。さらにその特殊性がソ連の遺産に基づくものであるかを確認するべく、ソ連時代の資料収集も継続している。現地調査は、次年度に集中させることとなったため、2017年3月から始まる長期在外研究のための研究協力者との綿密な打ち合わせや資料、文献調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を基礎課題とする国際共同研究加速基金の支援も研究に活用する方針で、現地ロシアに2017年3月~2018年5月末(予定)までの約1年3か月にわたる長期在外研究を予定しすでに着手している。本研究課題では2018年3月末までの間、これまでの課題として予定していた現地インタビュー調査やRLMS等のミクロデータを使った分析、資料収集、文献研究を行う。住宅政策、制度、市場の制度理解とその実態運用の関係の乖離度を調べることで特殊性を明らかにする予定である。また、研究成果発表を現地ロシアを中心に実施する。さらに独自のアンケート調査も可能であれば実施し、残りの研究課題に取り組み、本研究課題の総括的な研究成果の編纂に努める。
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Causes of Carryover |
本課題を基礎課題とする国際共同加速基金を活用し、2017年3月から次年度の全期間を使いロシア・ペテルブルグ、モスクワを拠点に長期在外研究を実施することになった。このことから、次年度にロシアにおける現地調査を集中して行うための経費として、次年度に使用額を繰り越すこととした。本研究課題の研究計画上に支障はなく、むしろ次年度に向けて研究をさらに発展させることができるとともに、国内外での発表を促進させることができる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、採択された国際共同研究加速基金の支援も活用し、2017年3月からすでに着手している現地ロシアでの約1年間の在外研究を継続する。当該年度で現地インタビュー調査、資料収集、文献調査を集中的に行い、ロシアでの研究成果発表も行う。日本への数回の一時帰国を予定し、研究成果発表や資料収集を補完する予定である。在外研究では、サンクトペテルブルグ、モスクワの2都市を拠点としながら、ハバロフスクやウラジオストクなどロシア各地への出張、調査も予定している。これらの出張旅費や研究費用に支出する予定である。
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