2015 Fiscal Year Research-status Report
原子力災害被災者への住情報提供と生活再建に向けた社会関係の再構築に関する研究
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26504006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 昌弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50714391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 光雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30127097)
浦部 智義 日本大学, 工学部, 准教授 (10409039)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 建築計画・都市計画 / 原子力災害 / 住情報支援 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災に伴う原子力災害被災者への住情報提供の実態と生活再建における役割を明らかにし、今後の被災者支援の課題と方策を探るものである。目的を達成する上で設定した3つの課題について下記の通り研究を進めた。 A. 原子力災害被災者のための住宅等の整備状況および住情報提供の仕組みの把握:前年度までに把握した復興住宅整備や被災者支援の状況を踏まえ、被災者への総合的な住情報支援を積極的・継続的に行う組織である福島県居住支援協議会へのヒアリングや主催する「復興住宅フェア」の調査を行い、被災者への住情報提供や相談窓口の実態を把握するとともに、上記の取り組みを通じた支援ネットワークの形成を明らかにした。 B. 原子力災害被災者への住情報提供を巡る主体間の関係とその再構築過程の解明:前年度までにオブザーバー参加した富岡町災害復興計画(第二次)策定のための住民ワークショップの結果を踏まえ、作成された計画の意図、計画に対する国、県、市民の反応、今後の課題と見通しなどについてヒアリングを行った。復興を推進する自治体間の連携不足、被災地への関心の希薄化、被災者に対する国の配慮の欠如など、被災地復興をめぐる様々な困難が明らかになった。 C. 原子力災害被災者への住情報提供策の体系化および平常時の住宅政策への提言:都市住宅学会と連携して、東日本大震災における復興住政策に関する研究会を引き続き開催し、被災地復興の現場で活動する行政担当者や民間事業者と意見交換を行い、政策提言に向けた論点の整理を行った。 なお、上記研究課題Aをさらに展開し、宮城県中央・南部において建設された先進的な災害公営住宅の計画事例の調査を行い、今後進展するであろう福島県における住宅復興に対しても示唆を与える基礎的な知見を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進展しているが、福島における被災自治体の復興の取り組みは、原子力災害という課題の特殊さ・複雑さ、被災者への配慮に欠いた国の政策、広域に分散避難する住民の意見を取りまとめる困難さなどの影響を受けてきわめて不確実な状況であり、復興に向けてまだまだ多くの課題が山積している。研究を進めるにあたり、調査公害の問題等にも十分に配慮して、今後も研究方法を復興の現場の状況に応じて臨機応変に工夫しながら選択し、進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに収集した基礎的な情報や知見をもとに、今年度も引き続き福島県内で被災した自治体や被災者の方を対象とした調査を行う予定である。特に、着工する災害公営住宅への入居をめぐる被災者の生活上の課題や住情報支援の現状と課題について調査・分析を行う予定である。また、被災自治体の復興にむけた取り組みについて引き続き調査を行い、「個々の被災者の生活再建」と「被災したまちの再生」の両立という今回の原子力災害において最も困難と思われる課題について検討を進める。さらに、これらの調査と併行して引き続き、学会と連携して行政や民間事業者も交えた復興住政策研究会を開催し、より復興の現場の視点に即した政策提言に向けた検討を進める。
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Causes of Carryover |
原発事故からの復興には当初想定していたよりも多くの障壁があり、住宅再建などの復興の進捗は遅れている。また、被災者への調査にあたっては、調査対象者になるべく心理的・体力的負担をかけないような配慮がより一層求められ、慎重に計画を練る必要があることが明らかになった。そのため、2年目の実施内容として当初予定していた住宅再建の実態調査や被災者を対象とした調査を翌年度に延期することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目に当初予定していた住宅再建の実態調査や被災者を対象とした調査を行うに際して、調査先への旅費や現地での打ち合わせ実施費用、調査協力者への謝金、調査票の印刷費用として助成金を使用する予定である。
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