2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26504013
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
隅田 和人 東洋大学, 経済学部, 准教授 (10350745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬古 美喜 武蔵野大学, 経済学部, 教授 (60120490)
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70365477)
石野 卓也 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (10614034)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住宅需要 / 高齢者 / 住替え / 相続 / 高齢者単身世帯 / 親子の居住地決定 / 夫婦二人世帯 / 遺産動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、高齢者の住宅需要の多様な側面を検討するために、下記のような3つの研究を現在推進している。【研究課題1】高齢者の住替え行動、【研究課題2】遺産動機と高齢者の住宅需要、【研究課題3】親子の居住地と居住形態の決定である。以下では、これらの進捗について述べる。 まず研究課題1について述べる。分析の基礎となるデータ・セットについては、「慶應義塾家計パネル調査(KHPS) 2004-2014」および「日本家計パネル調査(JHPS) 2009-2014」を基にして作成した。予想通り、高齢者の転居世帯数は少ないので、分析対象となるサンプルを増やすために、これらのデータ・セットを統合した。両者の調査は別々に実施されてはいるが、調査時期も同じであり、共通の質問項目も多いので、統合したデータ・セットを作成することが可能である。また、先行研究のサーベイも、並行して進めたところ、我が国で近年増加している子供のいない単身世帯、夫婦二人のみの世帯の転居を分析した研究はないようなので、これらの世帯に特に焦点を当て分析を進めることにした。 研究課題2については、分担者の石野卓也(金沢星稜大学)が応用地域学会にて、「親の住宅の相続と子供の住宅需要」というタイトルで報告を行った。この研究では、親の住宅を相続する可能性が、子供の住宅の費用分担や同居、および居住形態の選択に与える影響を分析した。そして次の分析結果が報告された。まず親の住宅を相続する可能性は、子供が親の住宅で親と同居することを促進する。また相続する可能性が低い場合には、親と別居して自己負担で持ち家を購入するか、借家に住む可能性が高くなる。 研究課題3については、平成27年度の分析に向けて、準備を行った。先行研究のサーベイを行い、利用可能なデータを用いた予備的分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1の高齢者の住替え行動について、平成26年度中の既存研究のサーベイとデータ・セットの構築は、概ね予定通りに進展している。サーベイの結果、既存研究での研究が少なく、かつ我が国で増えつつある単身世帯や夫婦二人のみの世帯を分析対象とするなど問題意識も絞られてきている。 研究課題2の平成26年度活動においては、このテーマに関連する先行研究のサーベイに加えて、主に親の遺産として扱われる住宅が子供の住宅需要に与える影響という観点から実証分析を行った。これらの研究活動で得られた知見については、既に学会報告を行っており、有益なコメントも得ている。この観点に関する研究については順調に進行していると言える。さらに、親と子供の意思決定の同時性について考慮するための実証分析のモデルを精査し始めている。 研究課題3に関しては、平成27年から本格的に取り組むことになっているが、既存研究のサーベイはデータの利用可能性の検討などにも進んでいる。 以上のような進展状況より、本研究課題については、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1については、高齢者の転居は分析の際に、既存研究において重要となっている変数については作成出来ているので、我が国の独自の要因を考慮しながら高齢者の住替えを決定する要因を調べる分析に進む。また子供のいない単身者世帯や夫婦二人だけの世帯は、住宅を担保に老後の生活資金を借りるリバースモーゲージを利用しやすい世帯でもあるので、リバースモーゲージの利用可能性も視野に入れて分析を行う。これらの分析に必要な分析用のソフトウェアも整備出来ているので、研究は十分実行可能であると考えている。 研究課題2では、研究報告を行った学会(平成26年度日本経済学会、同年度応用地域学会)でのコメントを受けて、特に以下の3点について平成26年度に行った研究の改善を図る。(a)有配偶世帯の場合、配偶者の親からの住宅の相続の影響を捉える。(b)子供が現在選択している住宅をもとに子供の住宅需要を考えているが、将来の住宅購入計画や転居計画ついても、住宅需要として考察する。(c)相続する住宅の属性の影響を捉える。この研究を踏まえた上で、親子でどのように住宅サービスにかかる費用を分担するのかを考察し遺産動機が高齢者の住宅需要にどのような影響を与えるのかを解明する。 研究課題3については、前述の2つの研究課題に基づき、平成27年度からデータの収集・加工とモデルの推定・シミュレーションに取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
研究全体としては、1月から2月にかけて支出を予定していた調査及び研究打合せのための出張が、当初の予定になかった学内の会議・打合せへの参加が必要となったことにより、取りやめざるを得なくなったためである。 次に個別の研究課題の理由について述べる。研究課題1の高齢者の住替行動などに関して、実態調査を行い、データの分析やモデルの構築に生かす予定であったが、既存のデータベースを利用した単身世帯の厳密な定義に基づくデータの作成などに時間を要したため未使用額が生じた。また研究課題3の準備について、親子の居住地と居住形態の決定の分析のために購入予定であったデータ・セットは、予備的な分析作業に当たって代替的な情報が利用可能であったので、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究全体として、今年度は早めに研究打合せ等を行うことにより、研究計画の早めの実行に努めることにより、繰り越した金額も含めた研究費を計画的に執行する。 個別の研究課題については次のように予定している。研究課題1と2について、平成27年度では、国際比較の観点を交えたデータ構築や推計を行なう予定であるので、そのために必要となる物品費(分析用ソフト、書籍、PC周辺機器など)の購入に、未使用額を充てることにしたい。 研究課題3については、平成27年度以降に実施する分析作業において、予備的分析に用いた代替的なデータ・セットには含まれない、より詳細な情報が必要となるために適宜これらの購入に充てることを検討している。
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Research Products
(22 results)